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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
少しだけマシな世界へ ー リモーネ王国

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本命は「空を飛ぶ」

 王家との婚約の報告は伝言の魔道具(メッセンジャー)で済ませたジャンフランコだったが、そのままスフォルツァ邸に滞在していた。


 首都の一角にあるスフォルツァ邸は、今現在領主(ジョヴァンナ)の名代としてリモーネ王国に駐在するジャンフランコの私邸として使われている。


 成人前の男子が住むにしては瀟洒で立派な造りなのは、この邸が元々隣国から亡命してきた貴族令嬢であったジョヴァンナのために建てられたものだから。

 スフォルツァ領の拡張や旧ソフィア教会を巡るゴタゴタの影響もあり、ジャンフランコは特に邸の造りに手を入れぬまま使っており、何となれば両親の寝室も荷物を運び出されたガランとした状態のままだし、せいぜいが執務室(オフィス)を自分が使うように改装したくらい。


 領主(ジョヴァンナ)の名代としての公務を行う場所は、メディギーニ商会であるため、それで十分ではあったのだが、かつての学友たちが出入りする機会も増えた今、それに適した模様替えをするべしという進言は侍従たちから何度も上がっている。


 今日のジャンフランコはそのスフォルツァ邸の一角、彼のために両親が整えてくれた魔道具工房にいた。


 魔道具に魅せられ、その後【魔法陣】の解析や魔道具の修繕を手掛けたりと、今のジャンフランコに繋がる様々な試行錯誤を行ってきた場所である。


 そのせいか、ジャンフランコは魔道具の構想を練ったり試作品を作る場所としてこの工房を好んで使っている。


 気の所為と言ってしまえばそれまでだが、この工房で作業するとよいアイディアが湧きやすいと思われるのだ。


「それは何をするための部品なのですか?」

 ジャンフランコの実験を興味深そうに覗き込むのはピエレッタ

 ジャンフランコの学友の中では一番魔道具に興味を持っている子だ


 剣の天恵持ち(騎士)ではあるが、武器への魔法付与(エンチャント)の戦技を得意としていたからなのか、【魔法陣】にも興味を持ち、学友たちの中でも一番研究熱心な一人である。


 ジャンフランコは右手に航空機の翼のような形のものをもち、左手の先には【そよ風の神】の権能(けんのう)を呼び出す【魔法陣】が置かれている。


 ジャンフランコが【魔法陣】に魔力を流して起こした風を翼のような形のものに当てているのだが、その途中には白い煙を発する香のようなものが置かれていて、白い煙が翼に当たって流れる向きや速さを変えている様が手に取るようにわかる。


 要はジャンフランコが前世で知識として知っていた「風洞実験」の簡易版のようなことをしているわけだが、よく見ると風の強さや翼のようなものの形も微妙に変化し続けている。


「これはね。空を飛ぶ魔道具の部品になるはずなんだ」

 そう言うと目線で右手に持つ翼のようなものを示す。

「ちょっと代わりに持ってみてくれるかい?」


 ピエレッタが翼のような部品を渡され、「見た目に反して非常に軽いものですね」と感想を述べていると、「じゃ、風を当てるね」と【魔法陣】に魔力を流し始める。


「これは!」

「どうだい?風が当たると上に持ち上がるような力を感じないかい?」

「ええ。でも不思議ですね。これ自体に魔力を流したわけではないのにこんな力が生まれるなんて」


「でも、これでどうやって空を飛ぶのです?」

「そうだね。それを持ったまま少し歩いてみて貰ってもいいかな?」

 一歩二歩歩いて「あ」と声をあげる。

「前に進むだけで正面から風を当てているのと同じになるだろう?その時に同じように上に持ち上げる力が生まれるのが分かるかな?」

「ええ、ではこの力を使って空に浮かぶ訳ですね?」

「うん。今の実験で最適な翼の形についてもデータが取れたから、それを元に実証機の作成に着手できるね」

「え?これだけでですか?」

「まあ、そこは僕の天恵(スキル)の本領発揮という訳でさ」


 先ほどの実験の様子は、風の強さ・翼の形・翼に当たった空気の流れ・右手で感じた「揚力」の大きさなど、すべて神測(デジタイズ)に記録され、放っておいても最適解を導いてくれる。


「ただ眺めているだけにしか見えなかったのに。何というか、本当にズルい天恵(スキル)ですね」

「まぁ、観察と記録それに分析が神測(デジタイズ)の本領だからね」

「そのお力があっても人の気持ちはお分かりにならないのですね」

 その声に少し非難めいた色が混じるのを感じて、婚約のことを言われていると察する。


「フレデリカのことだね?」

「ええ。あれだけの思慕と献身にジャンフランコ様が応えられないのはなぜなのでしょうか?」

 この世界の常識的には個人の恋愛感情よりも「家の事情」を優先するものと思っていた分、貴族の令嬢でもあるピエレッタの発言を意外に思った。それはむしろジャンフランコが前世から引きずっている考え方に近い。

「その...フレデリカに説教されてさ」

「説教...ですか?」

「僕の立場では個人の感情で婚姻を結ぶなど許されないってね」

 ままならぬ身さ、と自嘲する。

「ミルトンを始末してスフォルツァ領の復興がなるまでは、後背のリモーネが動かない保証が一枚でも二枚でも多く欲しい。母様の想いが痛いほど分かる以上、僕の婚姻というカードもまた、そのために使わざるを得ないのさ」


「申し訳ありません。要らぬ差し出口でした」

「いや、心配を掛けてこちらこそ申し訳ないよ」


「まぁ、そういう事もあって、今は一日でも早くミルトンを陥してスフォルツァの国力を上げることに腐心してるのさ。リモーネ王国の思惑を気にしなくてもよくなれば、自分の意に染まない婚姻から逃れられるかもしれないしね」


 ジャンフランコが実験に戻ろうとする時、伝言の魔道具(メッセンジャー)が音を立てる。見るとジルベルトからのメッセージである。


「少々厄介な来客でして。対応をお任せしたいです」

今回の新要素:

・ 特になし (まだ実験中)


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初めての作品投稿です。


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