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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
少しだけマシな世界へ ー リモーネ王国

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領主一家の家族水入らず? その一

 リモーネ王国での商会長たちとの会合は事前に想定していた以上の結果に終わった。

 政変から逃れてリモーネ王国に根を下ろしていた有力な商会すべてが、スフォルツァ領からの誘致に応えると回答したのである。


 まずは旧スフォルツァ辺境伯領に設けられた数カ所の「工房団地」を軌道に乗せる目処が立ったのだから上々の結果である。


 ジャンフランコはその成果をもってスフォルツァ城に戻っていた。


 無事にスフォルツァ領への誘致に成功し、各商会から領内での工房立ち上げの確約を得たことを、領の重臣達が居並ぶ中で領主である両親に報告する。


「さすが若様ですな。領地に仕事を作るために工房を呼び寄せるなど、我等頭の硬い年寄りには思いもよりませなんだ」

「スフォルツァの家だけで復興すべてに手を出すというのにも、そろそろ限界が見えてきました。これからは有力な商会の手も借りられるようになりませんとね」

「彼等のリモーネでの事業もそろそろ頭打ちだしな。いい加減新しい商売を始めないといけない時期ではあったぜ。上手いこと尻を叩いてくれた若様には感謝だな」

 ジャンフランコと老臣たちの会話に割り込んだメディギーニは、スフォルツァ家ゆかりの商会の立場からの視点で意見を差し挟む。

 確かにリモーネの市場は成熟しきってしまっており、新たな成長市場を求めるには、そろそろリモーネ以外に目を向けないと厳しい時期ではあった。


 スフォルツァ家の主だった家臣が出席しての会議は、その後も「工房団地」で生産した魔道具の流通のさせ方、それによる食糧生産の伸びの予測、「工房団地」に進出した商会への支援の仕方などを話題に長時間にわたった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 夕食の時間が近いことが告げられ、大方の議論に結論が見えたこともあって会議は解散となる。


 ジャンフランコは肩をグルグルと回しながら席を立つ。十代前半の少年の仕草にしては随分と年寄り臭いが、これは中年に差し掛かっていた前世の頃の癖に引きずられたものだろう。


「ジジ、この後はどうするのかしら?」

「自室で少し確認したい書類もありますので、厨房で軽食をもらってきます」

「何とも忙しないことね」ジョヴァンナが苦笑しながらも夕食の席に誘う。

「たまにはわたくしたちの部屋で夕食を共にしませんか?このところお互いに忙しくて会議以外で話をする時間も取れてないですし」

 ジャンフランコは、確かに急ぎの仕事は粗方片付いたなと思い直し、母親の申し出に応じることにする。


 ロドリーゴにエスコートされるジョヴァンナに続き、領主夫妻の私室に招き入れられる。

『そういえば、この部屋を整えるための手配はしたし確認のために入室することもあったけれど、両親と入ったのは初めてだね』

 今日はフレデリカをはじめとした護衛も同席しない、完全に領主一家だけの親子水入らずの会食である。


 ジョヴァンナがベルを鳴らすと給仕が夕食の支度を整えてくれる。

「秋から夏に掛けて、矢継ぎ早に色々なことが起こってゆっくりできなかったでしょう?折角このようなお部屋を整えてもらったのに、わたくしたちは顔を合わせると仕事のお話しかして来なかったのですもの」

「そうだね。働き過ぎも身体に毒だしね。今日は久しぶりに家族の時間を持つことにしようか」

 両親とは会議などで頻繁に顔を合わせているが、言われてみるとその通りで、家族で食卓を囲むようなプライベートな時間を持つのは何か月かぶりかとなるジャンフランコである。


 前菜として運ばれたのは夏野菜を使ったサラダ。リモーネ王国では当たり前のように食卓に出ていたメニューだが、ここスフォルツァではようやく最近になって初めて城の周辺で収穫されるようになった地場の味である。


「本当に、ここスフォルツァ領に戻れて、かつてと同じように領主としての生活ができているなんて本当に夢のよう」

「それもこれも、コルソ・マルケ砦で踏みとどまってくれた家臣団のおかげだね。共和国の連中ときたら『掻き回しておいて、手に負えなくなったら手を引く』遣り口でグチャグチャにした上で知らん顔で放置するんだからね。スフォルツァの領地までが全部そんな風にされてたらと思うとゾッとするよ」

「コルソ・マルケ砦という足掛かりがあればこそ、旧スフォルツァ領の回復までは目処が着きましたからね」

 ジャンフランコが相槌を打つと、ジョヴァンナが冗談めかして小言を言う。

「でも、領地の回復については貴方に苦言を呈さないといけませんね」

「母様、私はまた何かやらかしましたでしょうか」

 目線を天井の方に向けてこの頃の行動を思い返す。『確かに何度か暴走した記憶がないではないけど...』


「だって、目指したのはスフォルツァ辺境伯領の回復だったはずですよ?それが気づいたら旧スフォルツァ領どころか、ほとんど旧ミルトン王国の全土を支配地域に収めてしまっていたでしょう?本当にビックリですよ」

 おかげで、人は足りないし治安が悪くならないようにするのも大変なんだから、と付け加える。


「いや、僕もここまでのことは想像すらしてませんでしたよ。そうだ。悪いのは『共和国』を名乗る連中ですよ。国の形を大きく変えるようなことをしでかしたくせに、後のことは何一つまともに手を付けず放置してるんだから」

 ほとんどの軍閥や共和国の直轄地が一日と持たずにスフォルツァの軍門に降ったのだ。ジャンフランコに言わせれば、そんな状態を放置している方が悪いのだ。


「共和国」の統治の拙さは、スフォルツァ城の周辺のような最前線ならまだしも首都ミルトンに近い直轄地であっても農地は荒れたまま放置されていたことに表れている。何せ各地に点在する軍閥の支配地域の方が幾分かマシ、という状態であったのだから。

 政変を起こした連中があまりにも短絡的で、いかに近視眼的であったか、政変で荒れたまま放置された国土が雄弁に物語っている。


「スフォルツァ城に入って改めて思ったのだけれどね。確かに『共和国』の連中が無責任過ぎたのが政変後の内戦状態の最大の原因だよね」

「ですねぇ。支配下に収めた地域をまともに統治しないものだから、その隙に僭主が立っちゃって軍閥の支配地域ばっかり広がってましたし」

「その軍閥も軍閥で問題だらけだったけどね」

「『ミルトン共和国』は革命の名の下、統治ができる人間を軒並み殺すか攫って監禁するかしちゃったからね。生き残ったのは、誰も彼もまともに土地を治める技術も知識もない上に、ただただ支配地域を広げることしか頭にない様子の連中ばっかでさ」

 その結果、領地に暮らす人々の支持を失って叛乱に悩まされるか領民に逃げ出されるかで、スフォルツァ城防衛戦の頃にはどこの僭主も限界だったのだろう。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「わたくしに言わせれば、その歳で領地の統治や代々領主が続く意味を理解しているジジに改めて驚いているのだけれど」

「母様。今更ですよ」

「うん。僕もいつかはジジとこんな話ができればいいな、とは思ってたんだ。この頃ではそれが早いか遅いかの違いでしかないと思うことにしてるよ」

「各地の軍閥では、こんな会話はされてたんでしょうかね?」

「それはないでしょうね。土地に根ざして長い目で領地を統治しようとした僭主もいませんでしたから。その証拠にみんな少しのお金で領地を放り出してしまいましたでしょう?」

 もう少し骨のある僭主がいるかと思ったのだけれど、とジョヴァンナがため息をつく。


 食卓には肉料理が運ばれて来る。流石に牧畜にまでは手を出せていないスフォルツァ領で出てくるのは猟師が狩った野生動物の肉である。何の肉か分かるようにとの配慮か、テーブルの上には爪や牙も装飾の一部として並べられる。


「へぇ。これは熊でしょうか?筋張った硬い肉だと思って身構えたのだけど、随分と軟らかく煮込んであるのですね」ナイフがスッと沈み込むし、簡単に噛み切れる。

「ええ。この十年の間で野生の獣の肉を食べるための工夫は随分と進んだそうですよ。ただ、それはコルソ・マルケ砦の周辺だけだそうですけれど」

「ああ、各地の僭主は硬い獣の肉も我慢して口にせざるを得なかったってことですか。それならあれほど領地への執着が薄いのも納得ですね。あれっぽっちの魔石と領地を引き換えにしちゃったんだから」


「おいおい、『あれっぽっち』と言うけど、領地を手放した僭主達が暫く贅沢に暮らしていけるくらいには大金だぞ」

 それをいくつもポンと払ってしまえるのだから、本当にスフォルツァ家は大きくなったとロドリーゴは実感する。最初は一地方領主の資産からスタートしたのが、今や一国の資産を上回るくらいの資産を保有するに至っている。


「わたくしたちも、家臣団と合流できなかったら、出発点は同じだった訳ですね」

 ジャンフランコが産まれた時点では、ロドリーゴの実家が彼の出家のために寄進した財産が資産のすべてであった。ジョヴァンナが投資家としての活動を始めたのは、家臣団によって旧スフォルツァ領の資産がもたらされてからである。

「でも、出発点が領地の資産だったとしても、それを元手に基金(ファンド)を設立して、リモーネの市場に投資してどんどん増やしていったわけでしょう?それは母様の慧眼だったと思いますよ」

「そう言えば、『共和国』の連中の資産はどれくらい残ってるんだろうね?王室の資産や各領主の資産を根こそぎ強奪してしまった訳だから、それなりの規模になりそうだけど」

「唯一外国に繋がる国境をスフォルツァ家が押さえているから貿易も無理だし、各軍閥にも資産はほとんどありませんでしたから、少なくとも首都ミルトンの外には出てないでしょうね。ほぼ丸ママ残っているのではないかしら」

「父様。母様。その件は何年か先送りしたいです。一国の資産に相当する額の貴金属や宝石類に魔石でしょう?上手く扱わないとスフォルツァ領だけにとどまらず、リモーネ王国まで巻き込んで市場が荒れちゃいますから」


 久しぶりの親子の対話、と言って始まったものの、結局は領地経営の話題に終始していることに気付き、ロドリーゴが苦笑いを浮かべる。

ホームドラマを書きたかったんですが、ちょっとムリでした。


今回の新要素:

・ 特になし


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初めての作品投稿です。


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