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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
少しだけマシな世界へ ー リモーネ王国

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内政ターン再開

「しかしまあ、よくこんな仕掛けを考えつきましたなあ」

「この仕掛け自体は、(いにしえ)の天才の作品を模したものですから、考えたのは僕ではありませんけれどね」

「ほぉ、どこで発見されたのですかな?」

「事情が複雑なため、秘させていただきます」


 元々大人数が入れる部屋ではないところに数人が詰めかけているせいか、興奮気味で壁に配置された魔道具を触ったり魔導線を指でなぞったりするたびに身体のアチコチがトントンとぶつかっている。


 魔道具はツルリとした外装に覆われていて外側からは仕組みや動作原理は窺えないはずだが、狭い部屋の中に潜り込んだ男たちは気にせずアチコチを触り続ける。出口を振り返ると、部屋の外にもワクワクを隠せない顔の男たちが待っているのが見える。

「あとでご説明はいたしますね」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 旧ソフィア教会崩壊に起因するリモーネ王国内の混乱を鎮めるべく精力的に活動したジャンフランコであったが、本命はあくまでスフォルツァ領である。


『王宮にまで出張ったんだからリモーネへの手当てはもう十分なはずだぜ』


 情報開示も最低限。リモーネは安定した有望な市場であり続けて資金と食料を提供してくれればそれ以上を求めるつもりはないのだ。優先すべきはスフォルツァ領の復興〜成長である。


『ここからはスフォルツァの内政にガンガンとテコ入れしてくよ』


 ひとまず食糧生産の回復については一定の目処が立っている。が、ジャンフランコはじめスフォルツァ家にとって、それは通過点に過ぎない。


『農業以外に雇用を創出する産業がないとね。それもなるべくなら裾野の広い産業が。工房誘致しときゃ原材料に始まって従業員の福利厚生まで多様な工房や店舗が自然と集まるような産業がね』


 その意味で、魔道具工房の誘致というのは悪くない選択肢である。


 原材料となる樹脂や魔導線、インクは元より、魔石など、最終消費財である魔道具を生産するために必要なものは多岐に渡る。


『一度工房が軌道に乗ってしまえば、近場に原材料を生産する工房が欲しくなるのは必定。放っておいても"魔道具城下町"が出来上がるまでに大した時間は必要ないだろうさ』


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「あの仕掛けがこの工房を動かしているんですな」

「ええ。屋根から入ってくる魔力を先ほどの『配魔盤室』で分割して整流してます。その上で工房内の各生産設備に魔力を配ってます」

「うちの工房だと一個一個の魔道具に魔力を流す人間を張り付けないといけませんから、それと比べると固定費が段違いですね。これでは最初から勝負ができませんな」


 シュナウツァー工房の敷地内に作られた地下工房を使った見学会は盛況であった。一番人気は、先ほど大の大人がギュウギュウ詰めになって見学していた「配魔盤室」である。

 工房内の設備の見学が終わり会議室に戻る途中の会話も弾み、期待感に満ちたものとなる。集められたのはロンギをはじめ、スフォルツァ家ゆかりの魔道具商達である。当然参加者の感想も事業を見据えたものとなる。


「これはリモーネ国内ではここだけですか」

「工房の生産設備を動かすため、という意味ではそうですね。あとは…自宅(スフォルツァ邸)に入れて、生活用の魔道具を動かすのに使ってますね」

「また、それは贅沢な使い方ですな」

「ええ。それでも一々魔石を交換したりする手間がない生活は一度体験すると癖になっちゃいますよ」


 元々は「幻の書庫」を維持する魔道具の回路を元にして、ジャンフランコが魔道具工房のための魔力供給回路に落とし込んだものである。

 ここシュナウツァー工房に設置されたものが最初期のプロトタイプであり、家庭用にデチューンされたものをスフォルツァ邸に導入したことに始まり、城壁で魔力を集めて幾重にも重ねられた魔法陣を動かす城・城塞用まで用途に合わせたバリエーションまで作り出してきている。

 そういえば、伝言の魔道具(メッセンジャー)の中継局に魔力供給するためにも作ったのだったか。


 今回、ジャンフランコが新たに企画しているのはメディギーニ商会以外の商会をスフォルツァ領に誘致するための「汎用版」である。

 魔道具商のコメントにもあったように、魔道具生産に必要な魔力をどこでも入手できる太陽光から得るため、固定費が大幅に低減されることは大きなメリットになる。


 何より魔道具生産のための希少な「魔力持ち」の雇用は魔道具生産を生業にする者にとっては頭痛の種となっている。特に新規の工房を思いとどまらせるくらいには大きな制約条件となるので、その解消は大変魅力的であるはずだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「さて、先ほどお見せした魔力供給の魔道具ですが、皆様ならこれをどう使われますか?」

「ふむ。敢えて既存の工房に導入するのがよいかと言われれば疑問が残りますな」

「そうすると、新規に魔道具工房を立ち上げる際に導入するのが最適、ということですな」

「ですが、今のリモーネの魔道具市場も若干飽和気味ですしなぁ。よほど魅力的な新商品がない限りは今の魔道具工房を動かしているので十分ですし」

 口々に話す魔道具商達を見てジャンフランコは「我が意を得たり」ほくそ笑む。


「魔力供給の魔道具に高い評価をいただき、ありがとうございます」

 一息、間を取る。

「実は、魔力供給の魔道具を使った『工房団地』を企画しています。あるご提案に乗っていただけるならば、格安での魔力の安定供給をお約束します」

 おお、という声が上がる一方で、疑問の声も上がる。

「『ご提案』というのは何でしょう?魔力供給は確かに魅力的ですが、抱き合わせの条件次第では...」


 その場にいる皆がジャンフランコの次の一言を待っている。

「私からご提案したいのは、皆様の生まれ育った土地での事業です。我がスフォルツァ家が旧ミルトンのほぼ全域を勢力下に収めたこと、皆様お聞き及びのことと存じます」

 一口水を飲む。

「政変での混乱もようやく終わりが見えてきました。皆様が父祖の地で事業を再開する機もようやく熟して来たものと考えます」

 見渡すと、興味を示しているのが半数、俯いて考え込んでしまったのが半数、といったところか。

「スフォルツァ領内に新たな魔道具工房を興していただく場合には、魔力供給の魔道具による魔力の安定供給のほかにも、スフォルツァ家から様々なご支援を約束します」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 今日この場に招かれている商会はいずれも、元々は旧ミルトン王国を本拠地としていたものの政変でリモーネ王国に逃れ、事業の再建を通じてスフォルツァ家ゆかりとなった商会ばかりである。ジャンフランコには多少の勝算はあったのだが...。


「スフォルツァ領内は復興が始まったばかりで、まだまだ魔道具への需要なんてほとんどないでしょう?ご提案は確かに魅力的ですが、商品を売る相手もいないのに事業は始められませんよ」


 流石は商人である。父祖の地への郷愁(ノスタルジー)よりは事業の利益を優先する。一筋縄ではいかない。


「そうですね。一つにはスフォルツァ家からの生産委託を考えています。魔力を与えて土壌を改善する魔道具をはじめ、復興に不可欠な魔道具がいくつかあるのです。当面の間は、ですが、新しい工房の生産品はスフォルツァ家で買い取らせていただきます。皆様の故郷の復興にお力をお借りできませんか?」


 商品の売り先に困ることはない、という提案に、何人かの顔色が変わる。


「もう一つ。皆様の商会員の中でこれを機に帰郷を考える方も出るでしょう。その方たちの住居をはじめ、生活環境を整える支援も当家は考えていますよ」


『もう一押し必要か?』


「これは極秘なのですが、当家には情報の伝達と物資の運搬を効率化する画期的な魔道具があります。現在は機密ですが、いずれ民生品として市場に出そうと思っています。その折には皆様の工房に生産委託することも視野に入っていますよ」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「大恩あるスフォルツァ家の御曹司からの折角のお誘いです。それに投資が無駄になることもなさそうだ。当商会は乗らせていただきますよ」


 最初に手を挙げてくれたのはロンギ商会の商会長だった。

 彼の商会には魔力供給の魔道具のための原材料の生産を委託したこともあった。原材料の生産から魔道具まで手広く商っている彼の商会が乗ってくれたなら非常に心強い。


 一人が声を上げると二番手・三番手も続いて手を挙げる。

 気づくと招待した全商会が何らかの形でスフォルツァ領内での魔導具生産に参入してくれる見込みとなった。


「詳しい条件については個別にお時間をいただいて詰めるとさせて下さい」

今回の新要素:

・ 「工房城下町」構想


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初めての作品投稿です。


誤字・脱字など見つけられた場合は、ご指摘をいただければ幸いです。


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