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銭と神具は使いよう 〜 元WEB屋は魔法陣を解析して異世界を知る 〜  作者: 冬寂
教会を巡る騒乱 ー リモーネ王国

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【閑話】新しい教義の起草

「さーて。今日のところはこれくらいでいいかな?」

 ジャンフランコは凝り固まった身体を解すためにぐっと伸びをする。


 現在、彼は「新しいソフィア教会」のための教義の草案(ドラフト)の執筆のため会議室に籠もっている。一緒に執筆を手伝っているのは、晴れて公の場でも父親と呼べるようになったロドリーゴだ。


「ソフィア教会について裏も表もご存じの父様に手伝っていただいて心強いですよ」

「そう言われても、私は布教や教会運営とは距離を置いていたからなぁ。まぁ、出来る範囲で手伝うよ」


 教義の骨子は次の三つに絞り込まれた。

 ◯ 自分たちは多くの神々の中で(「唯一」ではなく)最も女神ソフィアを支持する

  者、と自認すること。

 ◯ 信仰を異にするだけで他人を排除することを禁止すること。

 ◯ 「神の権能(けんのう)の地上での代行者」に必要以上に権力が集まらないよう

  にすること。


 新しい教義が単純明快(シンプル)なのには訳がある。

 旧ソフィア教会が細かい教義の解釈を言い立てて互いに「異端」呼ばわりしていたのは、ある意味末期症状と言えた。その反省からか、骨子以外の細かい決め事についても、それ程多くはならないはずだ。


 骨子からの逸脱がない限りは、多少の解釈違いは許容する。そんなおおらかさを新しい教義に求める。これが女神ソフィアとジャンフランコの一致した見解である。


 信徒に多くを求めず、「神の権能(けんのう)の地上での代行者」には神を身近に感じるために多くを識り自らを高めることを求める。


 それが、いいじゃないか。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 教義に目処が立てば、次は教会組織についての細則だ。


「俗世間を捨て「教会」という組織に入り支える、そんな浮世離れした集団を作り出してしまえば、すぐに組織の維持発展が自己目的化し、旧ソフィア教会の二の舞となってしまう」

 この点ではロドリーゴとジャンフランコは一致している。


「だがなぁ、旧ソフィア教会への反省はわかるが、在野の『神の権能(けんのう)の地上での代行者』を認めることとしたのはやりすぎじゃないか?」

「そうですか?僕は半農や半商の『教会』も認めていいと思いますが。他に稼ぐ手段がないからお布施だなんだと言って信徒からボッタくろうとするわけですよ。それに神事なんて生業の片手間でやるくらいがちょうどいいですよ」

 今は気づいている人が少ないが、神々は本当に生活の場に、野山に、あちこちにいらっしゃるのだ。

「思いついた時にご神体や御守に祝詞や魔力を奉納する、それを神事と捉えるくらいが気楽でいいじゃないですか」


「聖職者も世俗と縁を切らせるのを止めて、むしろ地域密着感を出すとかか?」

「そうそう。地元の少し物知りな小父さん・小母さんくらいがいいんじゃないかな」


 唯一求める条件は、【魔法陣】に魔力を流し女神ソフィアを勧請(かんじょう)して約定を結ぶこと。

 ある意味、古来からあった本来の形に戻すだけだが、神事や魔力に関係なくただただピラミッド型の権力構造を作り上げた旧ソフィア教会の対極の考え方だ。


「ただ、女神ソフィアの勧請(かんじょう)にはそれなりの魔力量に加えて光と闇の属性が必要になるだろう?今の時点では約定を結べる者はそう多くはいないと思うぞ」

「では、激変緩和措置として、約定までは求めずに、当面の間は希望者が教会からの事務委託のような形で【聖具】を預かり、女神ソフィアの権能(けんのう)について広め、時々はそれを代行することを請け負う。これで行きましょう」

『でも、杖や剣以外の【神具】を授かった在野の魔力持ちは意外に多くいると思うけどね』


「【聖具】の扱いと天恵(スキル)を授ける神事はどうする?」

「女神ソフィアの権能(けんのう)を代行する分かりやすい象徴ですからね。扱いを間違えると権威付けに使われちゃいますし。【聖具】は、有償レンタル制とし、天恵(スキル)を授ける神事の対価も『お布施(時価)』から『手数料(定額)』に変える。とかでどうでしょうか?」


「まるで商会が店子を抱えて各地に支店を広げるようなやり方だね」

「そう!それです。でもそれくらい透明性が高い方が腐って倒れるまでの期間が長くなるんじゃないかな」


「あとは、女神ソフィアご自身が申し出た『罪滅ぼし』をどうするか、だね」

「『八百万(やおよろず)の神』を神学校で教える、ってやつですね。あとは高等教育で「神々への道標」の現代語訳と【魔法陣】の研究をやることかな。後者は物凄く大変だと思うけど」

「『学友』達からは率先して【魔法陣】を研究して、その先にいる神々と約定を結びたい!って希望が出るんじゃないか?」

「これまで大人だけで知識を独占していたものね。『何で誰も彼もが全属性になっているのかと思ったら、こっそりそんなことをしてたなんて!』そんな恨み言も聞かされましたけど」

「異端審問から『学友』達を守るための措置だったからね。それももう不要になったから」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 こうして二人のブレインストーミングを歴て出来上がった草稿(ドラフト)は、女神ソフィアの意向で一部は手直しされるものの、ほぼそのままの内容で文章化され、メディギーニ商会に匿われたオグルディの元へ送り込まれた。


 草稿(ドラフト)のあまりにぶっ飛んだ内容に、オグルディが卒倒したとかしなかったとか。

今回の新要素:

・ 特になし


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初めての作品投稿です。


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