第三十九話
「昨日はありがとな、七緒」
一緒に登校することにした七緒に歩きながらお礼を伝える。
「いえいえ、もう少しで犯罪者でしたもんね~」
クスクス笑って、ニヤニヤとそう言ってきた。
「兄妹だからセーフだ。まぁ、元に戻った和音が傷つくだろうから助かったけど」
「あの和音はもはや凶器的な可愛さでしたもんね」
「ああ、幼稚園くらいの和音にそっくりだった」
「昔は素直だったんですか?」
興味津々って感じで聞いてくる。
「? 素直ってか、俺を嫌う前だな……。久しぶりにお兄ちゃんって呼ばれて、びっくりした。まぁ、熱のせいみたいだけど」
「先輩って、そんなんだから……。まぁ、いいですけど」
「なんだよ?」
「何でもありませーん」
笑って走っていく背中を俺は追いかけるのだった。
・・・・・・・・・・
昼休み、自分のミスに気が付いた。
和音のお昼どうしよ。
何も作っていない。
とりあえずメッセ送るか……。
和音にメッセをおくるとすぐに返事が来た。
『勝手に食べるので気にしないでください』
うん、なんか寂しいな。
俺も弁当がないので、購買に向かうことにした。
「……。電話?」
校舎で堂々と携帯を使う度胸はないので、一度トイレに入る。
「はい、和樹ですけど」
『忙しい所すみません。文月です』
打ち合わせの日はもう決めているのに電話なんて珍しいな。
「いえ、大丈夫ですよ。どうかしましたか?」
『少し急ぎで話し合いがしたいのですが、本日こちらに来てもらえますでしょうか?』
「分かりました。十八時頃でもいいですか?」
『大丈夫です。それではお待ちしてます』
電話が切れてトイレを後にし、購買に急いだのだがもうアンパンしか残ってなかった。
・・・・・・・・・・
話し合いの内容は後で和音に言えばいいだろう。
俺はそう思って、一人でワンストップの会議室に来ていた。
「失礼します」
会議室の部屋をノックし中に入ると、文月さんがパソコンを見るのをやめて俺の方を見る。
「急な呼び出しなのにご足労ありがとうございます。いま、コーヒー入れますね」
文月さんはサッと立ち上がり、手早くインスタントコーヒーを入れて、置いてくれた。
俺はそのコーヒーの前に座って、お礼を伝えてから一口飲む。
「それで、急ぎの要件てどんなことですか?」
「話の前に悪いのですが、今日はソラ先生はどうしたんですか?」
文月さんはまずそう聞いてきた。
「あ、すみません。風邪でお休みです。いないとマズかったですか?」
「いえ、問題はありません。いつも二人で来られるので驚いただけなので――」
文月さんは笑って、マグカップに口をつける。
「今日呼んだのは、この先の連載の事です」
マグカップを置いて、文月さんがそう続ける。
「連載ですか?」
よくわからず、オウム返ししてしまう。
「オムライス先生的には、何話でこう、何話で終わりみたいな……。そうですね、区切りは意識されてますでしょうか?」
「すみません、ラストは考えてますけど区切りは意識してなかったです」
正直にそう答える。
「初連載なので、そこは気にしないでください。むしろ、今日呼んだ意味を持てますので」
「そう言ってもらえると助かります」
そこから文月さんに区切りや今後の話の延ばしかたなんかを教えてもらった。
今日は俺個人のスキルの話がメインだったので、和音を呼ばなくて正解だったかもしれない。
不甲斐ない姿はあまり見せたくないしな。




