第二十三話
「いらっしゃいませ~って、先輩?」
「ああ、晩御飯食べに来た」
俺は夕飯を作る気になれなくて、綾瀬へとやって来た。
「お水どうぞ。今日はどうします?」
「……。ああ、悪い何がだ?」
「注文ですよ~。今なら笑顔の七緒ちゃんついてきますよ?」
「ああ、それはいいな」
「先輩、熱でもあるんですか?」
「いや……」
あれ、やばいな。ぼーっとしてしまっていた。
注文しようと七緒の方を見ると姿がない。
「はい、七緒特製ロコモコ丼です」
「え? こんなのメニューにないだろ?」
「ふ、ふ、ふ。先輩限定メニューです。ぼ~としてても食べれるようにどんぶりにしましたよ」
七緒は自信ありげな顔で俺を見ている。
「ありがと――」
お礼を言って、手を合わせてスプーンでどんぶりを食べてみた。
「うま、これめっちゃうまいぞ!」
ガツガツとスプーンを動かして食べていく。
目玉焼き、ハンバーグ、キャベツ、米そして、バーベキューソースがバランスよく調和している。
「良かった~。先輩ようやく目に生気が戻りましたね!」
「え? どいう事だ?」
「だって、先輩ずっとゾンビみたいだったので」
そんなに俺の顔色悪かったのか……。
「すみません、先輩。話を聞きたいっすけど、今混んでますので、また後で聞いてもいいですか?」
未央は申し訳なさそうな顔で、そう言ってきた。
周りを見るとかなり混雑している。
「悪い、手伝う」
立ち上がって、そう伝えた。
「いえいえ、今日は大丈夫です。では、先輩また後で~」
そう言って、七緒は仕事に戻っていってしまう。
心配かけて何やってるんだろうな……。
どんぶりを食べ終えたところで結さんに家の方で待っていてあげと言われたので、自宅側に入る。
七緒の部屋でいいんだよな? 俺は二階にある七緒の部屋にいく。
久しぶりに来たけど、女の子らしい部屋だよな
七緒の部屋には白色のドレッサー、横長の洋服タンスの上にはぬいぐるみがたくさん飾ってある。
和音の部屋と違い家具もカラフルなものが多い。
ドアの前突っ立っているのも変だし座って待つか。
小さなテーブルの前に置かれたカメの形のクッションの上に座る。
「お待たせしました~」
少しすると七緒がそう言って部屋に入ってきた。
「いや、心配かけてごめん」
「いえいえ。それで先輩、何でお悩みで?」
七緒は手に持っていたマグカップを俺の前に置いて前に座る。
「和音と喧嘩してしまったんだ」
「えぇ!? あんなに和音ラブな先輩がどうしてまた?」
その言い方はどうなんだと思ったが、ツッコむ気力がわかない。
「フィギュアをみてキモいとか言われて、少し言い返してしまったんだ。漫画を書いてるから嫌悪感はもうないかと思ったんだけどな」
「あぁ~、それはですね~」
何だかい言いずらそうな顔で、言うか悩んでいる様子になる。
「やっぱりフィギュアとか並べてるのはキモいものなのか?」
「う~ん、私は別に何とも思いませんけど……。それを熱烈に語られたら、少し引くかもですね~」
その言葉に少し胸が痛む。
「あぁぁぁ、和音にさらに気われてしまった。せっかく少しは仲良くなれたと思ったんだけどな」
「前から気になっていたんですが、先輩にとって和音って恋愛対象ですか?」
その言葉に俺はテーブルに頭を叩きつけてしまう。
「な、そんなわけあるか!」
「普通の兄妹って、喧嘩になってもそこまで気にしないと思いますよ?」
そういうものなのか?
「いや、ここまで会話のない兄妹も珍しくないか?」
「それは先輩が悪いんじゃないですか? たとえば、もう少し日常的に会話してみるとか?」
「この間も、好きなやついるのかとか? 学校はどうだって聞いたぞ」
少し勇気を出して聞いたが、あの時もそういえば怒っていたな。
「お父さんか! 普通そこまでぶっこんで聞きますかね~」
七緒はマグカップのお茶を飲みながら、呆れたように言う。
「七緒は知っているだろ? 俺達は一年前までは会話すらしてないんだ、それが漫画を書くようになって際が少しは増えてたのにな……」
全て元どうりになってしまったかのようだ。
「その時もですが、ほんとに先輩はニブチンですね」
七緒は笑顔でそう言ってくる。
「ニブチン……」
言い返したいが、どうして怒っているのか見当もつかない俺には何も言えない。
「そこで、今回は私が助け船を出してあげます。ただし、私からアドバイスをもらったことは和音に秘密ですよ?」
自分の口に指を立てて、シーっと片目を閉じてジェスチャーをしてくる。
「分かった、頼む教えてくれ」
俺は頭を下げて、七緒に仲直りの方法を教えてもらうのだった。




