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第二十一話

 今日はバイトもなくいつもより早く帰宅した俺は、文月さんに電話をかけることにした。


『はい、もしもし。何かありましたかオムライス先生?』


 数回のコールの後、文月さんがそう聞いてくれる。


「突然すみませ、今時間大丈夫ですか? 漫画の事で少し相談がありまして」


『はい、問題ありませんよ。何かありましたか?』


 その言葉に安心して、俺は背筋を伸ばして姿勢を正してから声を出す。


「実はその、ネームの質をあげたいと思ってまして……。何かいい練習方法とかありませんか?」


『なるほど……。質ですか……。私が聞いた話だと、やはり体験したりする方が一番多いですよ? 後は他の方の作品を読んだりして知識を高めて書くとかですね』


 なるほど……。


「お答えありがとうございます。インプットや体験ですね」


『ふふ、先生は学生なので体験しやすいんじゃないですか?』


「どうなんでしょう? 漫画に生かせそうな体験なんてなかなか……」


『そうなんですか? てっきりモテモテな生活と思ってましたよ』


「ないです、ないです。まったくそういう事はないですよ」


『え? 葉山ソラ先生には兄の周りには女性がたくさんいるって聞いてましたけど?』


 和音のやつ、そんなこと話してたのか。


「たしかに共通の知り合いは二人いますけど、そういう事はないですよ」


 少し早口でそう返す。


「フフフ、慌てちゃってますね? 気になってることかっていないんですか?』


「いませんよ。からかわないでくださいよ」


『フフ、失礼しました。オムライス先生はまだ書き始めたばかりですし、まずはたくさん書いていきましょう! そうすれば少しは悩みも消えると思いますよ?』


「アドバイスありがとうございます」


『いえいえ、いつでも気軽に電話してください。それでは、頑張ってくださいね』


 励ましの言葉を最後に電話が終わる。


 今はとにかく書いて、書いてだな。


 そう思ってパソコンの電源を入れようとしたところで、玄関のドアが開く音が聞こえてきた。


 和音、帰ってきたか……。


 ネームの向上も大事だが、和音の笑顔が何より優先だ。


 たちあがって、晩御飯の準備のために俺はリビングに向かうことにした。


 ・・・・・・・・・・


 今日の夕飯はハンバーグを作った。


 和音は静かに箸でハンバーグを切って、黙々と食べている。


「美味しいか?」


「はい、美味しいですよ」


「よかった。今日は和風にしてみたから口に合うか心配で」


「大葉の香りが爽やかでいいですね」


 少し笑ってそう言ってくれた。


 作ってよかったと思える瞬間だ。


 そう言えば和音は自分の漫画の事をどう思っているんだろうか?


「和音はさ、今の漫画どう思ってる? シナリオで気になっている部分とかないか?」


 いい機会だし聞いてみることにする。


「? 物語的にマンネリ化が怖いですが、兄さんならうまくやるって信じてます」


 不思議そうな顔で考えた後、静かにそう言ってくれた。


「そっか、ありがと。頑張るな!」


 俺は食べ終えた自分の食器を持って立ち上がる。


「あれ? もう部屋に戻るんですか?」


「ああ、ネームが書きたくってな。お風呂は沸かしてあるから温めて入ってくれ」


 俺はそう言って、リビングを出ていく。


 ネームの質を頑張ってあげていかないとな。











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