処刑と目覚め
ご覧になっていただきありがとうございます。
ダンジョンの出てくる現代風の話です。
よろしくお願いしますm(_ _)m
「家に帰りたかったな…。」
断頭台で、石をぶつけられながらつぶやくのは、召喚によって、この世界に連れてこられ、魔王と戦った勇者の称号を持つ少年だ。
王様が、何か言っている。
すでに殴られたことで鼓膜が破れている勇者には、何を、言っているか聞こえないが、多分、俺の悪行を並べていることだろうと何となく思った。
涙は出ない。
悲しみより、諦めの方が強いから。
断頭台の刃が落ちるまで、俺はぼーっと待っていることしか出来なかった。
首筋に痛みを感じて起きる。
「おい、建宮。授業中に寝るな。」
教科書の背が、俺の首にトントンとあてられていた。
「あれ、俺は…。」
あたりを見渡すと、そこは見慣れていないはずの見慣れた教室だった。
「建宮…。お前、寝ぼけ過ぎだ。」
先生…か。
「すみません。」
「続き、お前が読め。」
「はい…。」
鐘の音が鳴り、授業が終わる。
「次の授業は、ダンジョン演習だから着替えて、ダンジョン前集合な。」
俺は、ぼーっとしているわけにもいかず、状況を整理する。
俺は、建宮恭也。
ここは、日本だけど、日本じゃない。
ダンジョンがあって、モンスターがいて…。
そして、俺は向こうで処刑もされた記憶も持っていて…。
でも、俺は本当に魔王を倒したのか?
ステータス。
建宮恭也
16才
職業:戦士
LV10
HP50/50
MP34/34
攻撃22
防御23
速さ18
運22
スキル
白狼の一撃3/3
魔法
無属性LV10
火属性LV10
光属性LV10
あっちで作った自己ステータス閲覧の魔法が使える。
それに今朝まで俺の使える魔法は、火属性LV7だけだったのに、今は、色々出来るようになっているってことは、やはりあの勇者の記憶は、現実かなにかなのだろう…。
ダンジョン演習の準備をして、他の生徒と同じように適当な感じで、集まる。
ダンジョン演習は、出会いの場でもあるので、男子は、女子と組みたがるようだ。
俺は、ソロ。
逆に女子を意識しすぎて組めていない。
好都合かもしれない。
これで、スキルの調子とか試せる。
…結果。
スキルも魔法も打てる数に限りがある。
体も上手く動けない。
まるで、水の中で戦っているようだ。
身体強化で、何とかやりくりしていこう。
白狼の一撃は、LV15の風魔法くらいの威力だった。
MPも消費しないので、モンスターの群れ相手に、初撃としては、良さそうだ。
魔法については、無属性、火属性、光属性どれも、レベル10くらいだとあまり変わらない。
ただし、火属性と光属性の合成属性の破壊属性は結構使えた。
普通のモンスターには、過剰なくらいの威力だった。
学校を終えて、家に帰る。
道路にも見たことのない機械が、張り巡らされている。
電柱は、見当たらない。
ずいぶん近代的だ。
自分の家。
家族は、いない。
父も母もダンジョンの精製に巻き込まれて、帰らぬ人となった。
こっちでも寂しい想いをするのかよ…。
とも、思う。
センチな感傷に浸っていた俺は、食事を作るのも面倒に感じてしまい、外で、食べることにした。
ファミリーレストラン。
パスタを流し込み、ドリンクバーで贅沢をする。
不思議と体も頭も冴えている。
まだ、18時だ。
確か、近くにもダンジョンがあったか
…。
ちょっとだけ、寄ってみるか。