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第1話~昇格~

地上から49もの階層を制覇し、50階目。〈天空〉と呼ばれるダンジョンの最上階である。雲を下に覗くその階層。壁や床には複雑な装飾が施され、窓からは青い空だけが見える。円形に広がる空間には障害物は一切ない。その空間に響き渡る金属音と爆発音。音の激しさがそのまま闘いの激しさを物語っている。戦っているのは5人の人間から成る1つのパーティと、人の3倍以上もの背丈がある1体の目の赤いミノタウロス。


 左腕がなく、右目が潰されて、全身傷だらけのミノタウロスに対し、5人の人間についている傷は多くない。重傷を負っているものは皆無、ましてや1番後ろで呪文を唱えている男は無傷である。

「結構しぶといな~。この牛野郎。」

 両手に剣を持つ金髪の青年が面倒そうに呟く。

「ここまで楽勝だったけど、流石はボスね。」

 赤髪のロング髪の女性が余裕そうに答える。クロスボウを持ち、腰にはナイフをさげている。

「アレン、大丈夫?つらそうだけど。」

 後方で、少女が隣にいる青年へ言葉をかける。背丈以上もの杖を持ち、頭には大きな帽子をかぶっている。

「ハァ...ハァ...。だ、大丈夫だよ...。ありがとうシャル。」

 両手に短い杖を持っている青年がしんどそうに答える。外傷は見当たらないが、疲労困憊のようだ。

「ん。でも、無理はしないで。」

「まだ終わってないぞ。気を抜くなよ。特にハカトとリア。」

 ガタイの良い男が注意を促す。体の正面に大剣を構えている。

「...ふぅ。ウィル、そろそろ大詰めだよ。注意を引いてくれ。」

「あぁ。すぅ――、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 ウィルと呼ばれた重装備の男性が、雄叫びを上げ、ミノタウロスを挑発する。ミノタウロスはこの大声を出した男の一挙手一投足に釘付けになっている。

「そっちばっかり気にしてちゃ、ダメよ!」

 リアと呼ばれた赤髪の女性が死角から近寄り、足の腱を切り裂く。片足をつくミノタウロス。不意の攻撃を受け、混乱しているように見える。

「そぉりゃぁあ!」

 瞬く間に、ハカトと呼ばれた金髪の男性がミノタウロス頭上より足先に向けて蓮撃を繰り出し、全身を切り刻む。ミノタウロスは両ひざをつき項垂れる。

水神槍アクワイデン!」

 シャルと呼ばれた少女が、大きな水の槍を放つ。その槍はミノタウロスの腹部を貫く。

 

 全ての攻撃を受け、うつ伏せに沈黙するミノタウロス。

「こんだけやりゃ、十分じゃない~?」

「油断するなと言っているだろう!瀕死のモンスターは何をするか――!?」

 ミノタウロスが上半身を起こし、最期の足掻きと言わんばかりに、大きな斧をぶん投げた。投げた先には、アレンと呼ばれた男性がいた。疲労のせいか、避けることはできそうもない。

「アレン!」

「やばっ!これは――」

 ゴォーン!!

 重厚な金属音が空間に響く。アレンの攻撃を庇うウィル。しかし、衝撃を吸収しきれず吹き飛ばされるウィルとアレン

「「「ウィル!!アレン!!」」」

壁に激突し、かなり大きなダメージを受けたように見える2人。しかし、ウィルはすぐさま体を起こし、仲間たちに声をかける。

「俺は大丈夫だ。シャル!ラストアタックだ!」

ミノタウロスが武器を手放したことが好機だと感じたウィルが指示を出す。

「アレンは!?」


「落ち着け!気を失っているだけだ!傷も深くはない!」

「っ!わかった。水神槍(アクワイデン)!...発動しない!?」

「っ!魔力切れか。リア!ハカト!」

「あいよ!」

「わかってる!」

 流れるようなコンビネーションで腕に攻撃を加えるエマとハカト。上半身の支えを失い、再度うつぶせに倒れるミノタウロス。

「「ウィル!」」

「むぅん!!」

 ウィルの放った一撃がミノタウロスの頭に直撃する。ミノタウロスに伏せたまま動く気配はない。たちまち光のエフェクトを放ち、消えていく。

「アレン!」

 アレンの元に駆けつけるシャル。

「――うん……!ごめん!気を失ってた。すぐに魔法をかけ直すよ。」

「もう終わったぜ〜」

「え!...ごめん。最後にしくじった。」

「気にするな。ミノタウロスは倒せたんだ。」

「ウィルの言う通り。アレンが気に病む必要はない。」

「そうよ。これで私たちも――」

 激闘を制したとは思えない程ゆったりとした空間に、5人のものではない音声が響き渡る。

 『赤眼のミノタウロスの撃破を確認。おめでとうございます。Aランク昇格試験、クリアです。』

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