43 コウタの狂気
ミヅキ「カレン。演技にしてはやり過ぎじゃない?」
カレン「レイジくんの反応が可愛いからね。でも、好きとかじゃないから安心してね。」
ミヅキ「なら良いけど・・・。」
カレン「取らないから安心して。」
ミヅキ「・・・またそういうこと言う。」
イツキ(私の今後を考えたら、ミヅキとレイジがくっついた方が都合が良い。)
(両想いっぽいし、レイジはミヅキを幸せにしてくれるでしょうね。)
(私被害者なのに、レイジの恋路を応援するのが最適解。)
(何かムカつく。)
レイジは幸せだと良好な人間だが、不幸なほど手段を選ばなくなるタイプ。
イツキはレイジの全てを知ってはいないが、そういうのは解る。
暫くすると、所々でゲートが開き、参加者が集まってきた。
Aブロックはキムラとミワが司会進行をするようだ。
流石にこの試合の他者召喚を対策部でないホイトワに頼むわけにはいかないのだろう。
ミワが他者召喚で選手たちを召喚体にしていく。
召喚体に霧が溜まるまで、30分ほど待機してから試合開始となる。
テレビ局が選手たちに取材するのに丁度良い時間だ。
コウタは、ココで活躍すれば再び人気が出ると思っているのだろう。
必至に取材で何かアピールしている。
レイジ(初戦負けだから意味ないのにな。)
花鳥名月も取材で忙しい。
レイジは一人でマッタリして過ごす。
取材でも当たり障りのないことを言ってやり過ごした。
変にアピールせず、コウタに舐められるためだ。
そして、待ちに待った第一試合が始まった。
キムラ「では、ストー・レイジ選手とミネギシ・コウタ選手は試合場にお願いします。」
試合場は、かつてクイナと戦ったときのような閉鎖空間。
1辺0.5km程だろうか。1対1の試合の舞台としては広めだ。
遠距離系能力者のことも考えての配慮だろう。
二人は、試合場の所定の位置についた。
キムラ「準備は良いですね。では、試合開始!!」
レイジ「よろしくお願いします。」
レイジはスタート地点から少し進み、深々とお辞儀をした。
しかし、コウタは挨拶に応じず、後頭部目掛けてかかと落としを入れた。
そして、崩した体勢を戻させないようにコウタは背中に猛攻撃を浴びせる。
コウタは不意打ちが決まったと嬉しそうだが、これはレイジの想定通り。
コウタが殴っているのはレイジではない。
微量の魂を入れただけの木偶人形だ。
レイジはスタート位置から動いていない。
レイジは花鳥名月のみんなに笑顔で手を振る。
その状況を見て、他の選手数人が吹き出したことで、コウタに気付かれてしまった。
コウタは怒りの咆哮を上げて、木偶人形をレイジに投げつけた。
この戦法は、普通なら大悪手だ。
木偶人形にはそれなりの霧を消費する。
一発か二発殴られて気付かれたら大赤字なのだ。
コウタは馬鹿みたいに猛攻撃してくれたが、これでも少し得をした程度だ。
だが、コウタには極めて有効な一手なのだ。
格下に全力で暴力を振るったのに効果がなく笑われた。
これで短気な自尊心の塊のDV男のコウタは怒り狂い判断力が大幅に低下した。
速射を使えば今のコウタは造作もなく瞬殺できるが、レイジはあえて肉弾戦で攻めた。
肉弾戦ではレイジを100とするとコウタは80くらい。
そこそこ良い勝負になるハズなのだが、怒り狂ったコウタの攻撃はレイジに当たらない。
レイジは適度に挑発しながら、コウタを一方的に殴り続けた。
そんな中、レイジはコウタの心の声が聞こえてきた。
これは、ホイトワの能力・読心だ。
読心は軌跡読みの派生技。
比較的難しいスキルだが、キレて極めて読みやすいコウタは良い教材になった。
本来、読心は無能力者の心を読むスキル。
しかし、今のコウタは無能力者以上に読みやすかった。
レイジ(まさか、こんな凡庸な敵と戦って新スキルに目覚めるとはな。)
(劣勢過ぎて流石に冷静さが戻ってきたか。そろそろ読めなくなるだろう。)
(コウタの能力は、薄くて硬い物質?)
そこまで読んで、コウタの心が読めなくなった。
落ち着いたコウタは、フェイントを混ぜて攻撃し、レイジが対処した隙に距離を取った。
コウタ「はぁはぁ。」
「弱いフリしやがって、卑怯なヤツだ。」
レイジ「不意打ちで攻撃してきた人に言われたくないです。」
「不意打ちだけで勝ち抜いたのですか?」
「強者ぶってたくせに、ちょっとガッカリです。」
再び煽るレイジだが、コウタは反応しない。
正確には怒りはあるが、怒らせてペースを乱す作戦に気付いたのだ。
レイジ(ちっ、流石にもう取り乱さないか。)
(これ以上言っても、士気を高めるだけだな。)
ここからはコウタの本来のスタイルが来る。
コウタは両手の人差し指を立てて構えた。
その指先には透明な円盤が付いている。
コウタはその円盤を高速回転させ、レイジに向かって飛ばしてきた。
その円盤はレイジの右腕を一瞬で切断した。
コウタ「ヒャハハハハ!!!」
「オレが本気出せばこんなモンよ。」
コウタの高笑いが会場中に響き渡る。
観戦中のカレンの表情が曇った。




