42 予選開始
何だかスッキリしたレイジは、楽し気に就寝準備をして眠りについた。
レイジは「この件」を受け入れるかどうか冷や冷やしていたが、実はこれは必然だった。
レイジはイツキの心理と感情を完璧に理解している。
勿論、無意識下でだが。
そのため、無自覚で完璧な攻略をしたからイツキはレイジを受け入れたのだ。
珍しくテンション高めのレイジは、ホイトワを「カラスーランド」に連れて行った。
乗り物系は能力者にとって少し物足りなかったが、レイジはホイトワ以上にはしゃいでいた。
夕方になると、キムラから明日のミストバトルのお知らせが来て、現実に引き戻された。
明日、メロドームでAブロック予選が始まるらしい。
明日はA・B・C・Dブロックの代表を決め、明後日に東京ドームで日本代表決定戦を派手にやるようだ。
緒戦の相手はミネギシ・コウタ。
対策部のメンバーではない一般公募で選ばれた実力者。
この名前はレイジの記憶にはなかったが、イツキにとっては因縁の相手だった。
花鳥竜虎の虎。
カレンの元カレのクズ男だ。
酒乱で何度かカレンを振るった。
カレンの左肩には、コウタが付けた一生モノの傷がある。
罠にハメて芸能界から追放してある程度の溜飲が下がったが、まだ満足はしていない。
そして、DV男ということで、唯一中途半端な復讐で死なせたリュージを思い出す。
レイジ(これは運命か?)
(リュージの代わりにボコボコにしてやるぜ。)
レイジはイツキにコウタが日本代表予選に出ること。
そして緒戦の相手がレイジであることを伝えた。
イツキは「絶対行く」と返信してきたが、本当に来れるのだろうか?
花鳥名月が来てくれれば、よりコウタに恥をかかせることが出来るが。
レイジはワクワクしながらも逸る気持ちを落ち着かせて早めに就寝した。
翌朝、ホイトワ早めにメロドームに着いた。
会場にいるのは殆ど知らない人。
トーナメント表にはハルマの名前があるが、まだ来ていないようだ。
ハルマが来るまで軽く仮眠しようと思ったら、何者かが近付いてきた。
厳つい入れ墨だらけの大男、コウタだ。
コウタ「よお、お前がレイジか?」
レイジ「そうですよ。あなたはコウタさん?」
コウタ「はぁ!!オレは和風竜虎だぜ?」
「聞かなきゃ解んねーのかよ。」
レイジ(へぇ。コイツらも音楽続けてたのか。)
(和風竜虎?聞いたことないけど。)
レイジはスマホで「和風竜虎」を検索してみた。
一応、活動はしているみたいだが、明らかにアマチュア。
バーで働きながら細々と音楽をやっているようだ。
レイジ(下手したら、俺の方が知名度あるんじゃないのか?)
コウタ「おいテメエ!!オレ様が話しかけてやってんのにスマホ見てんじゃねーよ。」
コウタは襟首を掴んで凄んできた。
身体強化を使っているが、素のレイジでも振りほどけるお粗末な強化。
その気になれば簡単に振りほどけるが、試合前は調子に乗せておきたかった。
レイジ「す、すいません。花鳥竜虎は知ってます。」
「ソロで虎の歌を歌ったりもしたコウタさんですよね?」
コウタ「花鳥竜虎って、いつの話だよ。」
「クソが。舐めやがって!!!」
コウタはレイジを壁に押し付け、近くの椅子を蹴飛ばした。
レイジはビビったフリをしてその場にへたり込んだ。
コウタはその様子を見てニヤッとしてその場を去った。
キムラ【何やってんすか、レイジくん。】
【こんなヤツにビビるタマじゃないですよね。】
レイジ【どーも、キムラさんAブロック担当なんですねー。】
【試合前にビビらせたら楽しい戦いにならないじゃないですか。】
キムラ【君も悪い人だね。】
暫くすると、花鳥名月も現れた。
どうやら今日の戦いはテレビで放送されるようだ。
花鳥名月はその番組に呼ばれていたみたいだ。
レイジ(イツキのヤツ。教えてくれても良いのに。)
そして、来てすぐにカレンが手を振って近付いてきた。
レイジの手前にはコウタがいる。
手を振り返すコウタを無視して、レイジに思いっきりハグしてきた。
カレン「レイジー。今日は試合頑張ってね。」
「みんなで応援するからねー。」
レイジ【え!!カレンさん?】
カレン【ゴメンね。コウタに嫌がらせしたいから合わせてくれる?】
レイジ【良いですよ、全然。嬉しいだけだし。】
カレン【ふふふ。ありがと。】
コウタ「おい、カレン。コイツお前の何なんだ!!」
カレン「他人のあなたには関係ないでしょう?」
カレンは強がっているが、手は震えている。
レイジはその手を掴み、コウタを睨んだ。
レイジ「行こう、カレン。」
カレン「はい。」
カレンはレイジと腕組みをして、コウタの元を離れた。
コウタ「弱虫のクセに調子に乗りやがって!!」
「試合が始まったら逃げらんねーぞ。死んだ方が良いと思うくらい痛めつけてやる!!」
カレン【ああ言ってるけど、大丈夫?】
レイジ【全然大丈夫ですよ。俺は一応プロですから。】
【俺と彼は花鳥名月と和風竜虎くらい差がありますよ。】
カレンはそれを聞いて吹き出した。
カレン【それなら安心だね。頑張ってね。】




