41 悩めるイツキ
ミヅキ「てへ、ゴメンね。勢いで連続で演奏させちゃって。」
「疲れたでしょ?大丈夫?」
レイジ「大丈夫です。初めて一流の演奏をゼロ距離で見れて感動してます。」
「多分、この数分間は一生忘れないです。」
ミヅキ「えー。イツキの何度も見てるでしょー?」
レイジ「当時のイツキより今のミヅキさんの方が何倍も上手いですって。」
「それに一曲一緒に演奏とか経験なかったですし。」
ミヅキ「それはどうも。でも、それって逆に今のイツキよりは上手くないってコト?」
レイジ「いやー・・・。」
ミヅキ「冗談だって。イツキの方が上手いのは自分でも解ってるって。」
レイジ「でも、歌はミヅキさんの方がイイと思いますよ。」
ミヅキ「えー、ホントかなぁ。まーありがと。」
ホイトワ「ステキな演奏ありがとな。でも、飯が冷めちゃうぞ。」
ミヅキ「あっ、ゴメンね。」
「じゃあ、ご飯にしましょっか。」
こうして、何やかんやで良い感じで緊張がほぐれた面々で夕食を食べ始めた。
カレン「あ、そうそう。優勝候補と花鳥名月に繋がりがあるってコトで、ミストバトルの会場でウチらが歌うコトになりました。」
ミヅキ「コネとか言われないように精一杯頑張るからね。」
レイジ「俺が花鳥名月のコネ・・・。」
コトコ「レイジいつの間にか対等な感じなのね。」
カンナパパ「凄いですね。アメリカ主宰なのに日本のアーティスト起用ですか。」
イツキ「メインはアメリカのロックバンド、プラチナ・ダイヤモンド・ゴールドです。」
「私たちは二番手的な感じです。」
ミストバトルは、オリンピックに変わる世界の祭典になる予定らしい。
霧の能力が未知数の今、スポーツの祭典は大惨事の可能性があるので、当面は見送ることになった。
その代わりということで、かなり派手な演出を予定しているみたいだ。
それからミストバトルの話、宇宙人や能力についての話で盛り上がった。
ミヅキは今日の演奏でレイジへの好感度が更に上がったようだ。
ミヅキに積極的に話しかけられ、レイジは鼻の下を伸ばしていた。
結局、次の日も予定があるということで、レイナの希望は叶わず、花鳥名月は帰ることになった。
イツキ「私はレイジの部屋に泊まりたいけど、良いよね?」
ミヅキ「えっ!!それってどういう?」
ユウ「随分なリアクションだねーミヅキ。」
「ミヅキも泊まりたいの?」
ミヅキ「違っ、・・・。」
「いや、泊まったら明日大丈夫かなって。」
「お友達同士で積もる話もあるのでしょう?」
レイジ「ホイトワがゲート使えるから、大丈夫でしょう。」
「ま、イツキはコトリさんに迎えに来てもらうつもりだったんだろうけど。」
イツキ「おっけーってコトね?じゃあ、みんなまたね!」
そう言って、各々がゲートで帰っていった。
レイジ(ゲート使える人がいれば、遠くの場所で飲んでも代行要らずだな。)
(酒飲みには嬉しい能力だよな。)
レイジが下らないことを考えていると、イツキが本題に入った。
イツキ「私が今、どういう状態なのか、正直に教えて欲しい。」
レイジ(多分、色々気付いてるんだよな。)
(嘘を重ねても良いが、正直に言って受け入れて貰うのがベストだ。)
(無理そうなら、記憶を消してやり直せば良い。)
こう考え、レイジはイツキにあのときの記憶を「戻した」。
するとイツキは暫く無言で頭を抱え、大きなため息をついた。
イツキ「最悪よりはマシ、か。」
「で、結局私は今、どういう状態なの?」
レイジ「今のイツキは、俺の我召喚みたいな感じ。」
「俺に出来ることは、記憶の確認と書換。」
「イツキの記憶を得て、食べ歩き旅行とあの日の記憶を書き換えた。」
イツキ「はぁ。ムカつくけど、文句言っても抵抗してもメリットは無し。」
「仲良くやっていけば、プライバシーゼロ以外は普通に暮らせるって訳ね。」
レイジ「流石、理解が早くて助かるよ。」
イツキ「ちょっと首絞めて良い?」
「そのあとスーパーキノホテルまでゲートお願い。」
「一人でちょっと散歩してから帰る。」
ホイトワ「了解だぞ。」
レイジ「ああ良いよ。」
イツキはレイジにヘッドロックをかけた。
最初は優しく、そして型に入った瞬間思いっきり締めた。
そして、レイジとイツキは同じことを考えていた。
ここでレイジが落ちて、イツキがレイジを殺そうとしたら、殺せるのか。
気絶したレイジを前にしたイツキは、何か状況を変える方法があるのか。
レイジは、殺されるならそれでも良いと考えていた。
もう既に十分に良い思いが出来たし、それでイツキに死んでも殺したいと思われたなら死んでも良いと。
そう思ってレイジは目を閉じ、力を抜いた。
すると、それを感じたイツキも力を抜き、ヘッドロックを解除した。
イツキ(解ったことは二つ。)
(彼にとって今の私は身体の一部みたいなもの。)
(融合したことで、性的な対象ではなくなったんでしょうね。)
(そして、本心で私に対して罪悪感がある。)
(だから、さっき死ぬほど絞めても抵抗しないつもりだった。)
イツキ「おっけ。受け入れました。」
「じゃあホイトワちゃんよろしくね。」
そう言って、イツキは笑った。
融合以来、初めて正面からイツキの笑顔を見た気がした。




