04 仲直りの誘惑
カンナは距離が近い。
素面のときはそうでもなかったが、酒が進むにつれ近付いてきて、気付いたら少し動けば触れる距離だ。
カンナはケバいし、嫌な思い出で一杯だが、顔のパーツなどは整っており、かなり可愛い部類だ。
殆ど女性と関わりが無かったレイジには刺激が強かった。
ゴウタの話は面白いし、カンナの身体の柔らかい部分に触れる度に復讐心が揺らぐ。
レイジ(落ち着け、レイジ。)
(これは単なる接待モードだ。コイツらの本性は誰よりも知ってるだろ?)
(コイツらは自分の利益を考えているだけだ。)
(・・・いやでも、世の中の人間関係って大半がそういうものなんじゃないか?)
(俺の能力が便利なのは間違いないし、もうこれ、安泰なんじゃないのか?)
レイジの復讐心が少しずつ、でも確実に小さくなっていく。
ゴウタの作戦通りに。
近いうちに、国内最大のテーマパーク「カラスーランド」と、大人気音楽ユニット「花鳥名月」のライブに行く約束をした。
もうレイジは、これが楽しみで仕方なかった。
彼らに迫害される前から孤立気味だったレイジには、こういう「遊び」の誘いは異次元だった。
その後、二人は家を出ても特にレイジの悪口を言う訳でもなく、普通に雑談をして帰っていった。
レイジ(ゴウタは、俺に「聞かれる」と思っているだろう。)
(でも、酔ったカンナも演技してるのかな?)
(本当にもう、何もかも大丈夫なんじゃないか・・・?)
レイジは、久々に良い気分で眠りについた。
そして朝、目が覚めると昨日の猫がいたので、また明日の朝来るように命令した。
外に出ると、空や草木が綺麗だと感じた。
今まで、そんなことを考える余裕もなかった。
これが世界が違って見えるってヤツなんだろうと思った。
早めに教室に着いて座っていると、リュージが後ろから近づいてくる。
昨日の話が本当なら、もうリュージを恐れる心配は無い。
そう思いながらも冷や汗が出る。
ドキドキしながら、レイジは振り返った。
リュージ「おお、やっぱ見なくても解るんだな。」
「昨日は行けなくて悪かったな。」
「次は一緒に飲もうぜ。」
レイジ「あ、あぁ。そうだな。」
レイジは小さくガッツポーズをした。
すぐ暴力を振るうリュージはやはり怖いし、一緒に飲んで楽しめるかは解らない。
でも、「敵」じゃなくなった。
それだけで十分だった。
それから講義が終わり、昼休みに向かう途中で、同級生のコトコがキーホルダーを落とした。
そのキーホルダーは「花鳥名月」のキーホルダーだ。
レイジ(コトコもライブ行くのかな?)
(これで、大学で初のお友達になれたりして。)
レイジ「コトコさん、これ落としましたよ。」
コトコ「ありがとう。あれ、今日は何か明るい?」
「あっゴメンね。別にいつも暗いとか言いたい訳じゃないの。」
レイジ「来週、花鳥名月のライブだからさ、今からワクワクしてるんだ。」
コトコ「レイジくんも行くんだー。席何処?ウチは最前列なの。」
「ウチは花鳥竜虎時代からのファンだからさ、色々とファンクラブ特典があるんだー。」
レイジ「花鳥竜虎?」
コトコ「あら、レイジくんは新規さんなのね。」
「良かったら、お昼一緒に食べよ。色々教えてあげる。」
コトコはやや地味目な娘だが、そんなの関係ない。
同級生と学食というだけでテンションが上がる。
コトコ「元々、男女二人組の花鳥竜虎と和風名月っていうグループがあったの。」
「どっちもデビュー曲は売れたけど、他はあんまり売れなくてね。」
「もーオワコンとか言われてさ、氷河期だったの。」
「そんなとき、男4人が不祥事で沈んだの。」
「で、何やかんやあって男4人は一般人になって、女4人の花鳥名月になったの。」
「花鳥名月になってからはヒット曲連発で、今年はもう売上一位確定でしょ。」
「ウチは花鳥の花・カレンのファンだから、不祥事のお陰って思うこともあってさ。」
「カレンは辛かったんだろうし、そういう風に思っちゃダメなんだろうけどさ。」
レイジ(めっちゃ喋るな。)
(こういう娘なのか、俺もゲームの話でこうなることあるし、気が合いそうかも。)
レイジ「俺は名月のミヅキが好きなんだよね。」
「死神の階段って映画で、役者デビューなのに凄く演技が良くて、挿入歌も凄く映画にマッチしててさ。」
「あれ以来出演ドラマとか新曲とか、大体チェックしてる。」
コトコ「死神の階段はウチも好きー。」
「あの曲はね。カレンとイツキが初めて一緒に作詞作曲したの。」
「それまでは、花鳥の曲か名月の曲だったんだけどね。」
それから、コトコは昼休みが終わるまで花鳥名月について語っていた。
その後、連絡先を交換して午後の講義に向かった。
午後の講義は、コトコもリュージたちもいない。
今まではそれが当たり前だった、久々に感じる一人の時間。
探知能力の練習や、虫の操作をして過ごす。
いや勉強しろよって感じだが、能力に目覚めてからレイジは頭が良くなったようだ。
「ながら」でも講義の内容が十二分に理解できる。
リュージの筋力アップのように、レイジは知能がアップしたのかもしれない。




