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34 狂人薬の真相

結局、ミワが能力の使い過ぎでシンドくなったため、今日の訓練はここまで。

7時半から17時半まで約10時間のぶっ通しの訓練。

その影響は、召喚体に留まらなかった。


レイジの余剰魂は、今まで既存の道具Aから道具Bに変換する程度の操作しか出来なかった。

しかし、今は余剰魂の手足で物を取ったり移動したりできるようになった。

また、剣を伸ばして途中に盾を出す様な細かな操作も可能になった。


身体強化はやはりレイジの身体に馴染まないが、余剰魂の腕は強化できる。

最早、殆ど身体強化できる者と同じことができる。

その能力を活用して、薄暗い街で屋根の上を駆けてみた。


レイジ(この強化出来ない身体。一見デメリットだけな気がするが多分そんなことはない。)

(自分の強化を受け付けないということは、敵の弱体化も受け付けないだろう。)

(バフデバフ無効。でも、余剰魂で似たようなことが出来るなら、こっちの方がメリットが大きいかもしれない。)


レイジは調子に乗って家の周辺で飛び回って遊んでいたら、穴に落ちた。

いや、正確には回避できたが回避せずに穴の向こうに出向いた。


穴の先は廃工場。

そこには死んだはずのゴウタが立っていた。


ゴウタ「レイジ。すっかり変わったな。」

レイジ「ゴウタ。やっぱり生きてたのか。」


ゴウタ「死体を確認したのにやっぱり、か。」

「驚いてくれることを期待したんだがな。」


レイジ「今更お前の生き死にくらいでリアクションしねーよ。」


ゴウタ「冷たいな。オレのゲートだと思ったから、見え見えの落とし穴に入ってくれたんじゃないのかよ。」


レイジ「別にお前と談笑しに来た訳じゃない。さっさと要件言えよ。」


ゴウタ「そうだな、そうだよな。」

「上がお前と協力関係を結びたいらしい。」

「で、殺されても良いオレが出向いたって訳さ。」


レイジ「そういうのはクイナの役目じゃないのか?」

「別に良いけど。とりあえず話は聞いてやるよ。」


そう言うと、ゴウタは一度倒れ、起き上がると雰囲気が変わった。

どうやら違うヤツが乗り移ったようだ。


ゴウタ「初めまして。ホイトワと申します。」

「狂人薬の黒幕と言えば解り易いですかね。」

「私は優秀な能力者ですが、生まれつき足が悪いんですよ。」

「自由に歩ける足を得る。それが私の目標です。」


レイジ「はぁ。その為に狂人薬をつくり、人体実験を繰り返したと。」

「で、俺が協力すれば、アンタの足が治ると。」


ゴウタ「いえ。少し長くなりますが、私の身の上話をした方が早いですかね。」



ホイトワは大貴族の長女として生まれた。

生まれつき病弱で足が悪く、寝たきりの生活を送っていた。

本来は健康な他の子に家督を継がせたかったが、ホイトワ以降子供を授からなかった。


そのため、ホイトワの両親はホイトワを健康体にすべく研究を始めた。

通常のミストの能力や道具ではすぐに行き詰まり、彼らは次第に人体実験を繰り返すようになった。


元々優しい両親だったがそんな日々の中、人の心を失っていった。

元々死刑囚を利用していたが数が足りず、一般人を誘拐して利用するようになった。


そして、それはすぐに国にバレ、両親は爵位剝奪の後、死罪となった。

ホイトワも一緒に裁きを受ける予定だったが、両親は娘は死ぬと実験の副作用でどんな厄災が起きるか解らないと主張。

それは全くの出鱈目だったが、それを確認する術はない。

実際にホイトワが誰かを殺した訳でもない。

ホイトワ自身に罪がある訳ではない。

そのため、ホイトワは異世界追放という判決になった。


こうして異世界に放り込まれたホイトワは、密かに習得していた我召喚で命を繋いだ。

クイナはこの世界ではかなり優秀な方で、動けないホイトワを抱えてもあまり苦労しなかった。

平和で小さな農村で、仕事を得てそれなりの生活を手に入れた。


しかしそんなある日、ホイトワは自身の身体に込められた大量の死刑囚の魂の存在を知る。

それはホイトワの身体と魂と結合しており、ホイトワの意思で結晶化出来た。

ホイトワはそれに触れた瞬間、両親の実験を引き継がないといけない使命感を感じた。

上手に結晶化し、それを飲むことで健康体になれると感じた。


その後、我を忘れて実験を繰り返し、ホイトワはその農村を滅ぼし、更なる異世界へと向かう。

そして行った先が地球。

地球でも人体実験を繰り返す中で、最近目が覚めたのだ。


両親によって殺され、結晶化された残酷な犯罪者たちの魂。

彼らの魂に籠っていた悪意と憎悪によって、両親やホイトワは人の心を失っていたのだ。

しかし、その魂は何度も結晶化して排出するうちに減っていき、つい先日ホイトワは目を覚ました。


目を覚ましたホイトワは、もうどうして良いか解らない。

ただ、人生を狂わした研究を嫌悪する気持ちと今更諦められないという気持ちがある。

でも、もう人体実験はしたくない。


最後の希望は、ミスティ・ホールが出現して間もない世界にいた、魂が多い人間・レイジ。

レイジが魂を増やした方法を聞けば、何か新しい道が開けるのではないかという希望。


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