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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
井上星の場合
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8

 ハーラーリア世界では、魔法生物が主に三つの種類に分けられている。


 三つの種類はそれぞれ「精霊体」、「精神体」と「創造体」である。


 精霊体:魔力を持つ生き物である。一番有名なのはフェアリーやピクシーなど、ここにあたる。背中に羽が生えており、人型が多い。交流の意志があり、大半善良な生き物だが、自ら悪者に従い、悪事を働き、悪いのもいる。


 精神体:意志を持つ、形のない生き物である。一番有名なのはエレメント、スピリッツ、ゴースト等々、ここにあたる。このタイプの魔法生物は肉眼で認識できないが、感覚で感じられる。

 また、具体的な形態がないが、特殊な職業、あるいは特殊な道具を使って、もやの状態が見えるようになる。

 交流の意志があり、ほぼ中立の生き物である。侵略性と攻撃性もないが、感覚で認識した時、精神に未知な影響を及ぼす。必要な時以外、お互い干渉しないのが妥当だ。


 創造体:魔法の力によって生み出された生き物である。一番有名なのはゴーレムだが、他にドール、アンデッドなどもここにあたる。このタイプの魔法生物は材料を使わなければできない。また、精霊体と精神体と違って、魔力がなくなると機能できない。

 作り主と作り方によって性格が変わるため、善良なのか、凶悪なのか一概には言えない。同じように作り直しても、元に戻る保証がない。


 と、以上はフロンが魔法生物についての説明だった。


 フロンが説明し終わった時、井上星と井上凜もちょうど遺跡の周りを調べ終えた。


「なるほど。よくわかりました。教えてくれてありがとうございます。」


「ありがとう!フロンおじさん。」


「いえいえ。それで、調べた状況はどんな感じですか?」


「うーん……調べた感じ、有毒植物がないらしいし、害もなさそうです。」


「そうですか。それは良かったです。」


「で、僕は試しに蔓を登るつもりだったが、その丈夫さは僕でも耐えられなそうだ。ギリギリ吊り下がる状態が維持できるくらいかな。」


「それは一つの非常用の隠れ場所だね。星くんの。」井上凜は窓に延々と伸びている蔓を見てこう言った。


「ちょっといやだな……あの高さは三階くらいあると思うよ。」


「もちろん使わないに越したことはないが、覚えといたほうがいいよ。何か起こるかわからないから。」


「まあ、覚えるけど……」心の中にどうか使わないようにと祈っている井上星だった。


「わかりました。ちなみに、他のところに窓がありますか?」とフロンが質問した。


「ああ、一応あるにはあるが、どれも蔓との距離が遠いですね。」と井上凜は井上星と顔を合わせて、そうだよね?という確認する意味だ。


「そうだね。だから無理やり蔓を登るより、普通に入口から入ったほうがいいかな。」


「わかりました。」


「うーん。大体こんな感じだね。」


「そうだね。」


「他に忘れたことは……」


「あ、お二方は蔓や植物などに対して判定をしましたか?凜様の植物の判定がありますが、星様は……」


「あ、ごめん。忘れた。やってなかったわ。」


「じゃあ、私は蔓に、星くんはまず植物に判定するのはどうだ?」


「はーい。」


 二人は判定を申請し、ダイスを振った。そして、今回井上星は顔が青ざめた結果を出してしまった。


 『知識の判定』に難易度がある。判別の難易度:≧8。

 井上凜の結果:3 失敗


『知識の判定』に難易度がある。判別の難易度:≧9。

 井上星の結果:1 ファンブル


「兄ちゃん!」井上星は悲鳴みたいな声で兄のことを呼んでいた。


「どうした?」「星様……」


「ファンブった……」


「……本当に?」


「うん。どうしよう?」


「ぎゃ、逆に考えよう!『知識』のファンブルはどうなるのか、ここで知るのはいいかも。」井上凜は半分慰めての気持ちと半分本気にそう思っている。


「本当にいいの……」


「判定はこういうものだ。ダイスに頼る時点で、リスクを負わなければならない。これはリスクを無視した私のせいだ。」


「いいえ、凜様のせいではありません。判定をすすめたのは私ですから、むしろ私の方こそ申し訳ありません。」


「いや、フロンおじさん。ダイスの結果は誰も知らないから、謝らないで。」


「わかりました……」


「とりあえず、結果を見よう。」


「そうね……」


 蔓:ちょっと丈夫そうな蔓だ。


 植物:食べられそうな植物だ。


「……良かった!」と情報の結果を見た井上星はホッとして言った。


「どうだった?」


「食べられそうな植物だって。でもどう見てもそう思えないね。」と井上星は周りの植物を見ていて、こう言った。


 周りの植物は明らかに雑草や花の類のものだったから、井上星はこの情報を信じていない。


「なるほど。偽情報をくれるのか。」


「たぶんね。じゃあ、杞憂だったね。僕はアホではないし、知らない植物なんか食べない。」


「なら良かったです。大ごとにならなくて。」


「ええ。」


「うん……そうだね。」少し煮え切らない返事をした井上凜だった。


「兄ちゃん、どうした?」


「ただ考えているんだ。」


「何を?」


「もしかして、ロールプレイング状態に影響が出るじゃないかって……」


「あ……その可能性、とても高いと思います。」とフロンがまるで思い出したかのように言った。


「え……」少し硬直になった井上星。しかし、すぐ元の状態に戻った。


「まあ……ロールプレイング状態にしなければいいし。」


「そうね……」


「とにかく、遺跡の中を調べよう。」まだ蔓の判定をしていなかったが、井上星はあえて言わなかった。


 ファンブルの結果に引きずられて、今の彼は少し判定したくなかった。弟の気持ちを見抜いた井上凜も無理させたくなかった。


「そうだな。では、方針を決めよう。」


「方針?」


「ええ。効率良く二手に分かれて探索するとか、危険がある時、大声で叫ぶとか、すぐ逃げるとか、そういう大まかな行動方針だ。」


「なるほど。」


「では、このことに関しては、私に一言を言わせてもらいます。」


「はい。」「どうぞ!」


「その遺跡の大きさはあまり大きくありませんでしょう?」


「そうですね。」


「では、効率のことを考えなくていいと思います。命の安全と力の団結を優先に考えてほしい。存在が消えないとはいえ、やはり死なないほうがいいです。」


「わかりました。助言、ありがとうございます。」


「やはり死ぬのか?この身体。」


「はい。悪意と関われば、どんなに小さな悪意でも、死なないとは言い切れませんので。」


「まあ……悪意がなくても、人は事故や病などで死ぬから、あくまで相対的な話だと思う。」と井上凜が言った。


「それは……否定できませんね。しかし、他のシナリオより、今お二方がいる遺跡は比較的に安全です。元々安全な場所であなたたちの身体を作ったので。」


「それはありがとうございます。こちらのことを考えてくれるのは。でもね……」ここに連れてこらなければなぁと、やはり心のどこかに不満を感じる井上凜。


 その不満を察知した井上星は、「そうだね。でもまあ、僕たちは帰れるから、一つ不思議な体験をしたと考えよう。」と言った。井上凜はそれを聞いて、少し苦笑いをした。


「そうだね。」


「ね!」


「その広い心に誠に感謝します。」


「おう!」


「では、そろそろ行こうか。遺跡の中に。」


「はーい!まるで探検だね。」


「遊びじゃないよ。」


「わかっている。」


「では、気をつけてください。」


「はーい。」二人は返事して、遺跡の入口の前に止まった。


 二人も警戒の様子で、入口から頭をぐいと伸ばして、中を覗いた。


 少し薄暗くて、鼻に強烈なカビ臭いの匂いが伝わった。カビ自体特有の酸味と埃が混ざり合って、気分が悪くなりそうな匂いだった。


 そして、二人はよく中を観察するつもりだったが、目の前に一つのメッセージが出てきた。


「判定してください。『防衛』判定。

『精神の判定』に難易度がある。防衛の難易度:≧4

 1:ファンブル

 10:クリティカル」


 防衛、精神の判定。


 この二つの言葉で、二人が何となく推測できる。「精神体」がいることを。

挿絵(By みてみん)

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