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「ギギィ!」と灰色の皮膚に牙を剥く。甲高い叫び声をしながら人を襲う。これはハイグレー小人という魔物の存在。特性と言えば、知恵がなく、ひたすら破壊したいこと。特に鉱脈を主食にしていて、魔物だけのエネルギ源を補充する。鉱山ではよく見られる一種の魔物だ。
その存在はあまりにも無益で、放置していると勝手に増殖し、他のところに暴れ狂う。殲滅しなければならない。
そして、城主と側仕えベーダはこんな魔物を殲滅している。
「ハッ!」と闇の中に綺麗な細い弧線が描いて、プチっとナイフの先端がハイグレー小人の首に刺す。
生温い液体が噴発し、チギと鳴き声らしくない悲鳴を上げる同時、「石よ!お願い!」という声も響いた。
ベーダはナイフを引き抜き、下がる。刹那、石壁が突起し、パチャリと無慈悲にハイグレー小人の頭を潰す。
二人は一息を入れて、でも警戒をゆるんでいない。一匹を解決すれば、また一匹が現れる。
プチ、パチャリ、プチ、パチャリ……一匹、一匹、また一匹……二人が本当に手を止めた時、周りはすでに死体だらけだった。腐った草の匂いと油っこい液体の触感、また鉱山中だからこその蒸し暑い空気……あまりいい気分にならないものだった。
「ふう……」鼻が詰まりそうな空気に二人も口で呼吸する。
城主は身の周りにある光源を移動させ、隅々まで照らしている。ベーダも松明で照らして、城主と反対方向に確認していた。
「もういないだろうな。」
「はい。そうだと思います……が、やはり慎重に行動しましょう。城主様。」
「ええ。わかってるよ。奥まであと少しだし、もう少し頑張ろうね。」
「はい。頑張ります。」
プチ、パチャリ……二人は警戒しながら、時々攻めにくるハイグレー小人を排除する。
廃坑には自分の歴史がある。長い長ーいくねくねとした道は明らかに人工の作りに見える。途中で途切れたレール、またはゆらゆらとふらついている吊る式の燭台、洞自体の支柱になれるかどうかもわからない原木の架構、あと――
この長い道に歴史が感じられる。
城主は感慨深い気持ちで歩いている。
“マダンよ、よく覚えておけ……ここは――”城主の父――マダンの父の言葉が脳裏に蘇る。同時に目の前の壁と呼応するように、二人が通っている長い道は行き止まりにたどり着いた。
「城主様。行き止まりです。」
「わかってる……」
マダンは思い深い表情で目の前の壁を――ゆっくりと下に移す。そこにあったのは、骸骨化した死体だ。
「やっと、君を回収できるようになった……父上。」
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「待ってください!」とノールは大男を追いかけている。でも、なかなか追いつけなかった。
時には早くなり、時には遅くなる。まるで自分の歩幅と合わせて、わざと追い付けられるよう背中を見せてくる。
彼女は自分が大男に振り回され続けているのがわかっている。わかっているが、何もできない。
どうにか先回りをしないと――そう思うや否や、突然、大男の足が止まった。ノールも足を止めた。
(これくらいなら十分遠いだろう……)と、また大男の独り言だった。
「……おい!」とノールは少々荒い語気で大男を呼んだ。
だが大男はノールの呼びに気にせず、ゆっくりとラーリーの身体を下ろした。
「おい!返事して!あなたは誰?そして、その人の身体を返して!」とノールはもう一度呼んだ。
今回大男は聞き入れたようで、姿勢を立て直し、180度後ろに向いた。
そして、煽った。
「……私は誰なのか、自分の目で確かめてみたらどうでしょうか?」大男は片手を伸ばす。
あまりの言動に、ノールは「……は?」と不満な声を出した。
「試練と言うべきでしょうか……君は、モモちゃんと一緒にいる資格があるかどうか。」
大男の構えからして、明らかに戦いたいという意味だった。
だが、戦いより、ノールは無視してはいけない単語が聞こえた。彼女は眉をひそめて、
「あなたは……モモナーさんのことを知っているの?」と言った。




