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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
井上星の場合
7/109

6

「『シナリオ』に関わる遺跡……」と井上星は繰り返して言った。


「はい。そうです。」


「なら、その遺跡にどんなものがいるの?悪意とかに関係があるのか?」


「ええと、情報によると、――がいます。どうやら、――に――れて、それで――に――れていたらしい。悪意を減らせる善行に繋がりますが、二人だけだと少々危険かもしれません。――がいますから。」


 フロンの話は所々に雑音が入り、二人は聞こえなかった


「なんて?」


「すみません。フロンさん。さっきの話が聞こえなかった。もう一度お願いします。」


「聞こえないの?わかりました。情報によると――」フロンは言われた通りにもう一度言ったが、全部同じところに雑音が入って、二人が聞こえられなかった。


「兄ちゃん、君もそうかな?なんか大事なところが全然聞こえないというか……」


「ああ、肝心な部分が聞こえない。」


「え、私はちゃんと伝えていたはずですが……」


「いや、フロンさんのことを疑っていません。ただし、フロンさんの声が……」


「フロンおじさんの話は雑音に邪魔されたというか、塗りつぶされたというか。変な感じだったよ。どんな話を言ったのかまったくわからなかった。」


「そうですか……よくわかりませんが、とりあえず、情報の伝達は問題がありますね?」


「はい。」


「なるほど。ちょっと原因を探してみますね。」


 井上凜は少し考えた後、自分の推測を言った。


「もしかしたらですが……声が聞こえなかったのは、『シナリオ』だからでしょうか?」


「どういう意味?」


「確かに可能性はありますね。この下に『GM情報』って書いてあります。」とフロンが原因を探しながら言った。


「兄ちゃん。」井上星は「説明して」という眼差しで井上凜を見ていた。


「星くんもかなりやってきただろう?色んなシステムのシナリオ。」


「はい。でも、その関連性は?」


「そっか。星くんはGMになったことがなかったっけ。」


「うん。そうだけど……」


「実は、どんな『シナリオ』でも、GMしかわからない情報があるんだ。それは隠し情報って言うんだ。

 そういう情報の開示はゲームの進行によって違うし、ずっと出さないままシナリオを終えたこともよくあることだ。」


「なるほど。つまり、さっきフロンおじさんが言った情報は隠し情報ってこと?」


「ええ。そして、その隠し情報は恐らく、私たちがTRPGらしき方法で探すしかないと思う。」


「そうか……じゃあ、無理矢理言わせてごめんね。フロンおじさん。」


「いいや、こちらこそ気付いてなくて申し訳ありません。」


 気付いてないという言葉に、井上星は少し思ったことを話した。


「フロンおじさん。思ったんだけど、君はGMになったことがないの?」


「え!どうして星様がそれを知っています?」やはりかと感じた井上星だが、フロンのこの話を聞いた井上凜は驚いた。


 二人は同時にフロンに話しかけた。


「え、フロンさんはGMになった経験がないですか?」「だって兄ちゃんは君より詳しいじゃん。」


 フロンは二人のことをまとめて答えた。


「はい。経験がないです……だから星様が気付きましたね。面目ないです。」


「うん。で、兄ちゃんはなんて言った?」


「君と似たような問題だ。フロンさんはGMになった経験がないですかって。」


「じゃあ、何で驚いた?」


「ほら、フロンさんは私たちの現場のことをよく知っていたから、てっきり前もやったことがあったと思ったが……でも、よくよく考えていたら、確かに不自然なところがあるな。説明してくれませんか?」と井上凜が言った。


「ああ、はい。君たちの現場のことは前からよく手伝っていたからわかりました。」


「手伝う?」


「はい。君たちも見たことがあるでしょう?その、五人の方。」


 五人の方……井上凜と井上星は頭の中にルームウェアの男性とフロン以外、握手会みたいに並んでいる四人組の顔が浮かんだ。


 あの握手会みたいなところに立った奴らか……と井上星が思った。


「なるほど。あの方たちですか。」


「そうです。時々手伝ったり、代理したりしていました。いわゆる、見学と研修です。」


「なるほど。サブGM的な存在だな。」と井上凜は納得した。


「ふーん。じゃあ、フロンおじさんにとって、僕たちは初めての人たちだね?GMとして。」


「はい。君たちは初めて連れてきた人たちです。未熟者で申し訳ない。」


「いいや、正直、僕はフロンおじさんが良かったと思うよ。」


 本当の気持ちを伝えている井上星にフロンは心から暖かい感じがした。


「……星様は、いい子ですね。」


「ええ。いい子すぎて、時々心配します。」と井上凜は自分の弟を見てこう言った。


「何だよ。僕は人を判断する能力くらいあるよ。」


「まあ……とりあえず、今遺跡のことは後にしよう。危険な場所かもしれないから。」


「うん。そうだね。」


「それで、フロンさん。」


「はい。」


「伝言はよろしく頼みます。合流のこと、スキルを聞くこと……それと、遺跡のことも。今伝えておいてください。」


「わかりました。では、少し時間が空きますので、少々お待ちください。」とフロンが言い終えた後、少しの間、静かになった。


「兄ちゃん。今のうちに、スキルを共有しようか?」


「そうだね。君はどんなスキルを選んだ?私は『上達法』と『交渉法』を選んだ。」


「へえ、兄ちゃんは戦闘するつもりがないんだね。」


「そうね。でも、こんな状況になるとわかったら、一つ自己防衛のやつにしたかったな。」


「『上達法』何なんだろう?」


「たしか派生スキルを取る必要な熟練度がわずかに下がるっていう効果らしい。」


「わずかか……5回くらい?」


「どうだろう。30回の成功判定に5回免除って……少し多い気がする。2~3回は限界だと思う。」


「そうか。そうだとしたら、強いかな?」


「そこそこ強いじゃない?他の人たちは10個の派生スキルが取れる回数で、私は1個多いって感じ。長くやるならね……」と井上凜は言いながら、苦笑いした。


「ああ……そうか。」と井上星も苦笑いした。


 二人ともこの世界に長居するつもりはないから、スキルの個数なんてどうでも良かった。


「星くんは?どんなスキルを選んだ?」


「僕は『捜索』と『武技』を選んだ。」


「なるほど。効果は名前のまま?」


「うん。探索に役に立つとか、戦闘に役に立つとか、そういう感じ。」


「そうか……正直、スキルを見ている時、どのスキルの説明も結構曖昧だったな。」


「そうだね。具体的な効果とか書かなかったなぁって思った。」


「星くんも思ったんだ。」


「うん。思った。兄ちゃんこそ――」二人はしばらく会話して、フロンが帰ってくるのを待っていた。


 そして、「お待たせいたしました。」と二人の会話に挟んだフロンが言った。


「お。フロンおじさん。」


「ちゃんと星様と凜様のことを伝えました。三人は了解と言いました。そして、ちゃんと星様を守ってくださいとあなたたちの両親が言いました。」


「わかりました。」


「僕はもう子供じゃないよ……」


「父さん母さんにとって、まだ子どもだ。」


「わかったよ。じゃあ、ちゃんと守ってよ。兄・ちゃん。」


「はい、はい。」と井上凜は答えながら、井上星の頭に軽くポンポンとしていた。


「それで、3人のスキルについて、それぞれ違います。

 まず、桃花さんは『隠匿』と『瞬発力』です。

 続いて、佳月様は『修理』と『精神力』です。

 最後、智澄さんは『頑丈』と『認識力』です。」


「ありがとうございます。」


「え……聞いた感じ、捜査系の技能を持っているのは僕しかないのか?」


「そうかもね。」


「いいえ、智澄さんの『認識力』も一つ捜査系のスキルです。桃花さんの『隠匿』も捜査系の一種なので、正確に言えば、三人が持っていますよ。」


「そうか。」


「ちなみに、『状態表』のことが知っていますか?」


「『状態表』?」二人が同じ瞬間で言った。


「はい。『状態表』を呼んだら、キャラクターのステータスが出てくると思います。」


 井上凜と井上星はお互いに見た後、「状態表」と呼んだ。フロンの言う通り。二人の目の間にキャラクターシートの情報が出てきた。


 ―――――――――――――――――――――

 PL:井上凜       

 PC:グリン

 個性:慎重

 戦闘:2 (+1)

 知識:3 (+2)

 精神:3 (+2)


 スキル:「上達法」、「交渉法」

 背景:

 “どんな生き物でも、話し合える”――これはグリンのモットだ。

 どんなことが起きても、まず会話が最優先だ。

 その原因は、自分の顔がひどい火傷があって、すぐ怯えられていたから。

 怖い外見なんだが、実は純粋な優しい心の持ち主である。


 ……ツリーセと「命の森」で出会った。


 関係性:ツリーセ ―― 知り合い。


 ―――――――――――――――――――――

 ―――――――――――――――――――――

 PL:井上星     

 PC:ツリーセ

 個性:大人しい

 戦闘:4 (+3)

 知識:2 (+1)

 精神:2 (+1)


 スキル:「捜索」、「武技」

 背景:

 きれいな顔立ち。柔軟な身体で色んな動きができる。

 少しバカっぽいが、時々勘が鋭い時がある。

 聴力がすごい。


 ……モモナーと恋人関係。わけがあって、二人が分散されている。

 ……グリンと「命の森」で出会った。


 関係性:モモナー ―― 恋人。

 関係性:グリン ―― 知り合い。


 ―――――――――――――――――――――


「背景の部分が増えた。」


「関係性も増えた。」


「はい。状態表はあなたたちの行動によって少しずつ増やされます。ロールプレイング状態にしたら、それも関係しますので、ご注意ください。」


「悪い影響が出ますか?」


「関係が悪かったら、出ると思います。」


「わかりました。先に伝えてくれてありがとうございます。」二人は状態表を閉じた。


「最後、遺跡のことをちゃんと伝えました。」


「何て言いました?」


「行くなら、気をつけて行くと。行かないなら、私たちと合流してから行こうと言いました。どうします?」


「難しい話だな……」


「兄ちゃん。」


「ダメだ。」


「まだ何も言ってないのに!」


「君は行きたいだろう?」


「そうだけど……」


「これは遊びじゃない。危険かもしれないんだ。」


「わかっているよ。でも、フロンおじさんはいい人とは言え、僕は若実ちゃんのことが心配している。」


「私も心配だ。しかし、今はフロンさんに任せればいいと思う。まず全員と合流して、みんなで一緒に攻略すれば……」


「でも、兄ちゃん。僕は大事なことを思いついたんだ。」


「なに?」


「兄ちゃんは……ここに来る前に、道標とか作ったか?道、覚えている?」


「あ」と自分のミスに気付いた井上凜、ずっと無闇に道しるべと家族のことを探していたから、余裕がなかった。


「僕も作ってなかったんだ。だから……」少し気まずいと感じた井上星だった。


「だから先に帰りたい……か。」


「うん。」


「……少し考えさせてくれ。」


 井上凜はしばらく考え込んでいた。


 道標は今作ってもいいが、大事なのは家族を見つけるかどうかだ。また無闇に探したら、運頼みで探すのと同じだ。運頼みなら、判定に頼るのと同じ。だったら、最初から判定に頼ればいい……


「星くん。」


「はい。」


「判定しよう。」


「え?あ……まさか?!」


「失敗したら、二人でこの遺跡を何とかする。成功したら、合流しよう。」


「……わかった。」


「どの道、合流は運頼みしかないと思う。」


「そうか。」


「判定を申請する!仲間と合流の判定を!」


 一つの十面ダイスとメッセージが井上凜の前に現れた。井上星も同じように言って、十面ダイスとメッセージが現れた。


「合流したい……」井上凜はダイスを握った。井上星もダイスを握った。


 ただし、今回のメッセージの内容が変わった。


 井上凜のメッセージ:

「『仲間の合流』の判定に難易度がある。仲間の合流の難易度:≧8。

 1:ファンブル。

 10:クリティカル。」


 井上星のメッセージ:

「『仲間の合流』の判定に難易度がある。仲間の合流の難易度:≧8。

『捜索』スキルを使用しますか?出目の結果に+2の修正値がかかる。

 はい・いいえ。

 1:ファンブル。

 10:クリティカル。」


「今回は難易度か……」


「兄ちゃん。『捜索』スキルを使ったら、プラス補正があるよ。」


「うん。使おう。」


「わかった。」


 井上星がはいと答えた。


「頑張ってください!」と二人を応援しているフロンだった。


「はい。」「はい。頑張ります。」


 二人は同時にダイスを振った。


 そして――


 井上星:5(+2)=7 失敗。 しばらくの間、仲間と合流できない。


 井上凜:2 失敗。 しばらくの間、仲間と合流できない。


「1足りない!」「危なっ!危うくファンブルところだった。」


「兄ちゃん失敗?」「君も失敗?」同時に質問して、同時に頷いた。


 自分の運のなさに嘆いている二人だった。


「しばらく合流できないだけだから、不幸中の幸いかな。」


「そうだね。」


「で、どうする?どちらも失敗したけど。」


「はあ……わかった。遺跡を探索しようか。だが、まず伝言を。」


「そうだね。父さんと母さんに伝えなきゃ。」


「フロンさん。伝言をお願いします。遺跡を探索しに行くって言ってください。」


「わかりました。伝え終わりましたら、すぐあなたたちをサポートします。」


「はい。ありがとうございます。」二人は一緒に感謝した。


 二人はお互い一瞥して、心が通じているようにうんと頷いた。遺跡に向かって進もうという意味だ。

挿絵(By みてみん)

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