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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
祈り姫
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60

 サンタリアーの町、町としての機能は不十分だが、その人口は村より遥かに超えている。かといって、発達している産業は農業と狩りを主にする狩猟業。冒険者の駐在も雀の涙程度、資本がなく、発展したくてもできない。


 すなわち、典型的な放任されている町である。


 特に、町の城主はあまり政治の野望がなく、村から土地まで、少しずつ周囲の存在に蝕まれていく。


 今に至って、城主が所持しているところはもう三箇所しか残らない。辺鄙な村二つと、サンタリアーの町……


 野望がないから、少しずつ喰われていただろう……もし、情報屋さんの情報が正しいなら、ここの城主に……ある大男はこんな感想を思って、サンタリアーの町に入った。


 ****


「はぁ。一ヶ月にかけて、やっとここに辿り着いた。」この話を終えて、静まりに返った。ある女は目の前の町に見つめている。


「もし……ここでもいなかったら――」私は、どうすればいいだろう……と、しばらく沈黙の時が流れて、女は不意に笑った。


「はは……そうだね。わかっている。心配してもしょうがない。いなくても探し続けるしかない。」


「君がいなかったら、私はきっとここまでできないだろう……ありがとう。メリナーさん。」


 静寂。


「……うん。行こう。」どうか、ここにありますように。と女は少しの不安と淡い期待を抱いて、サンタリアーの町に入った。


 ****


「……オイ。アイツ、神官の服を着ておるな。」こそ話――あるいは、わざと聞かされている話だった。ガラの悪い、ヒャッハーみたいな男が片手で頬杖をして、ノールが冒険者協会に入ってくるのを見つめている。


「本当だな……」隣に同じような姿をしている人は相槌を打った後、男と一回見合わせて、一緒に立ち上がった。


 二人は冒険者協会の人だ。つまり、冒険者そのもの。


 そして、二人がノールの前に阻む。ノールに語りかける。


「偉大なる神官様は、一体冒険者協会に何の用があるんだい?」


「代わりに聞くよ。神・官・様。」


 ガラの悪い二人にノールは怯まなく、二人に直視して口を開いた。


「……用事があるんです。」


「ようじ?」一人の男は片方の眉を上げて、目の色が疑いに変わっていく。


「神官様のごようじなら、まず俺たちに話してもらうじゃないか。」もう一人の方は両手を組んで、不機嫌な様子になった。


「……話したくありません。」二人の態度に、ノールはゆっくりと拒否した。


「ああ?」


「話しても信じてもらえませんでしょうし、クエストに頼むつもりも――」ノールの話が途中でドンという台パンの音に中断された。


ノールは突然のことでビクッとした。耳と尻尾も一瞬ぴょこっと跳ねていた。


「……クエストじゃないなら帰れ!」すぐにでも自分を襲い掛かりそうな男に、ノールは小刻みに震えている。


「え、え、何?何?」カウンター裏にちょっぴりと居眠りをしている若い男性職員はこの騒がせに起こされた。


 しかし、誰もその男性職員に目をくれず、ただ殺伐の空気が続いていた。


 少しこの空間から逃げたいと思って、男性職員はこっそりとカウンター裏に隠れていた。


 そして、体の震えが治まると、ノールの目にもはや失望と無関心の色しか浮かばなかった。


「……やはり、来るべきじゃなかった。」と、ノールは振り返った。


 え?もう終わったの?とすぐ状況が終わったことに、男性職員はひょこりとカウンターから頭を出して確認した。


 帰るつもりの神官様と、うちの冒険者……うん。何も起きていないということは、これはつまり、異常ナシってことでしょう!とこんな抜けている考え方をしている男性職員は、次の瞬間に自分が間違っていたとわかった。


 ポン!とまるでこの勢いでもあるかのように、ノールは冒険者協会の入口に近づいた瞬間、入口は勝手に開かれた。


 一人の女性だ。


 フードを被っている女性がこう叫びつつ入り込んできた。


「たのもうー!」


 ノールはこの女と一瞬視線が交差し合ったことがわかっている。正確には、フード女は一通り全員を見回していた。


 大げさな動き、自信の笑み。フード女の自信はどこからきたのかわからない。だが、その自信溢れていたオーラはとても真似できそうもない態度だった。


 この現場にいる人たちは当然フード女の正体がわからない。わかるはずもない……一人を除いて。


 うそだろう……単発のモモナー!男性職員は怯えている様子でフード女の正体を見破った。


 そして、モモナーは一通りを見回したあと、彼女が自分の方に見つめていることに気付いた。


 そ、そういえば、単発のモモナーはたしか――


 モモナーは直線の距離でカウンターに迫っていく。


「おい!おまえ――」とガラの悪い男はモモナーを掴もうとしたが、モモナーは直接無視して、素通りで迫ってくる。少なくとも、男性職員の目に映ったのはそうである。


 こいつ……一瞬手を伸ばして掴もうとした瞬間、避けやがった!ガラの悪い男は驚きの目でモモナーを見つめていた。


 やがてモモナーはカウンターの前に立っていた。その佇まいはもはや大物のオーラしか感じなかった。


「……ねえ。君、管理人を呼び出してくれない?」その綺麗な顔に浮かべていた笑顔は、男性職員にとって悪魔の微笑みでしかなかった。


 単発のモモナー――気に食わない冒険者協会を潰すことに励んている存在……彼女は今、この町のギルドまで手を出そうとしている!


 男性職員はずっと動かないので、モモナーはもう一度言おうとしたところ。


「ねえ――」と、ここでガラの悪い男はやっとモモナーの肩に掴まった。


「待てや。嬢ちゃん……随分と気が大きいだな。」


 モモナーは男の方に向いた。


「そーうだよ。うちらのウサちゃんはな、気が小さいんだよ。」ともう一人の方が言う。


「へえ。君、ウサちゃんというの?」と視線だけ男性職員に向いたモモナー。


「え、あ、あ、ええと……」モモナーにビビっている男性職員。


「ほーら。もうビビりやがった。お前な――」


「ふーん。優しいじゃん。」


「……はあ?」とモモナーの言葉に不意に突かれた二人の冒険者。


「え?聞こえなかった?優しいじゃんって――え?ああ!これは敬語を使った方がいいですね……優しいですね。君たち!」と笑顔を出したモモナー。


 プツンと。誰にもわかるような二人の冒険者は青筋が立った。


「……おい。よそ者だからって、俺らをなめるんじゃねぇーぞ!」


「え、本気で褒めているつもりなんですが?」


「だから、それが舐めているんだっつってんだろうが!」


「ちょっ!(話が違うんじゃないですか!)」


「何をぶつぶつと言いやがるんだ!こらぁ!」


 モモナーと二人の冒険者に一触即発の空気になった。


 ノールはただそれを見ているだけで、誰も気付かないように嘆いた。


 やはり、この町を出よう……ノールはもう一度冒険者協会を離れようとした。


 だが、男性職員はノールより先に出て行った。口は「会長さん!」と叫びつつ、走っていた。


 それでも、ノールは足を止まらず、冒険者協会から出ようとした。


 人を俗に言う、仏の顔も三度だが、事件はそうと限らない。


 ノールは三回目で冒険者協会から出ようした時、今度こそ足が止まった。


 一人の男が冒険者協会の入り口に阻んでいる。その人の顔はノールがちゃんと知っている。


「吸血鬼の匂い……見つけた。」


 ラーリーの姿をしている存在だ。

次章、大混戦!

……

ちなみに、すれ違いコントを参考にしています。

すれ違いコント、面白いですよね。

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