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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
幕間:「ツリーセ」
54/109

(3)

「よいしょっと!」ドンという音がして、一人の女性が自分の呼ぶ声に気にしておらず、背負っている革の袋をカウンターに置いた。革の袋は決して大きくないが、ドンという音がするからに重みのあるものに誰でも簡単にわかる。つまり、見た目によらず、袋の中にかなりの物量が入っている。


 ここは冒険者協会、いわゆるギルドである。


 男女問わず、受付係の人員がカウンターに配属されており、冒険者たちのクエストや商売に対応している……普通ならそうだが。今、カウンターにいる人員は一人の女性しかない。


 昼ご飯の時間だから、他の受付係がいない。また、広間に一人の冒険者もおらず、とても閑散だった。


 この昼頃の時間帯はギルドの数少ない閑散期だ。


 それでも、カウンターの女性が「はぁ……面倒くさいな……」と、革の袋から一つの微かに水色に輝いている石を取り出して、呟いた。


「素材の仕入れ、清算、クエストの配布にランクの鑑定……他にも色々面倒な雑務があるし……」行政って……面倒くさいな。


 女性はずっと呟きながら、机に置いてある片眼鏡をかけて、石を観察し始めた。


 そして、五秒も足らず、女性は石をDの文字に書いてある紙のところに置き、続きのものを袋から取り出した。


 それぞれのものをA、B、C、D、Eに分けて、同じように繰り返している。当然、この動きをしている間、女性はずっとブツブツと文句を言っていた。


「……そもそも、あたしは受付嬢より――」


「あの――」


 すると、突然な声に受付嬢はビクッとした。さっきまでギルドは誰もいなかったから、また、この時間帯は誰も来ないと思い込んで、びっくりしてしまった。ある意味、受付嬢はかなり集中している。


「は、はい!すみません!もう文句なんて言いません!会長!」と受付嬢が慌てて返事した。


「……文句?会長?」だが、受付嬢はすぐこの声が他の誰よりも幼かったと気付いた。


「あれ?会長じゃなかったか……」受付嬢は声の主を見て、ほっとした。


 声の主は一人の男の子だった。


「会長って?冒険者様の会長様ですか?」男の子は少しおどおどとしている様子が少々愛嬌を感じる。


 そのため、「あ、はい、まあぁ……そうなんですけど、あまり気にしなくていいですよ!坊や。」と受付嬢はついお客様に相応しくない呼称を口にした。


 男の子は少し受付嬢の呼称に不満な顔をしていたが、何も言わなかった。


 そして、受付嬢は男の子の様子を見て、考えている。


 冒険者じゃないね……でも、この子、なんか見覚えが……いや、今そんなことより、確認する必要なことがある!


「そんなことより、坊や。君は……いつここにいました?」


「ついさっきなんですが……どうしました?」男の子は不可解な顔をしていた。


 つまり、あたしの文句を聞いてなかったね!受付嬢は心の中によし!とガッツポーズをした。


「いいえ、ちょっと確認しただけです。それで、坊やは何かご用はありますでしょうか?」


「……冒険者の受付は、ずっとこんな感じですか?」


「え?」と受付嬢はついさっきまで気づいてなかったことに気付いた。


 あたし、何かやってしまったのか……受付嬢は男の子のちょっと怒っている顔を見てこう思った。


 すると、男の子は頭を左右に振って、「ダメ、今は僕のことより……」両手で頬に叩き、表情を元に戻した。


「あの……お姉さん。この三日間、カリー様はここに来たことはありますか?」


「カリー様……たしかカリーって、『蓮華の剣』というパーティーに所属する一人の中堅冒険者だっけ。」


「はい。そうです。見かけませんでしたか?」


「うーん、この三日間ですか……あたしなら見かけておりませんね。他の人はどうかわかりませんが……カリーさんはどうしました?」


「実はこの三日……カリー様はずっと家に帰っていません。最初は材料の調達にどこかに行ってたと思いましたが――」


 受付嬢は男の子の話を聞きながら、男の子のことを思い出した。


 あ!この子、カリーさんちの子だ!財産登録の時、見たことがあるけど、家事の奴隷だから……あれ以来だったな。まさかあの子はここまで変わるとは……


 そして、男の子の話を聞き終わって、受付嬢は簡単に話をまとめた。


「つまり、失踪の事件ですね?」


「失踪……」男の子は一瞬ためらって、悲しみの顔を伏せ、俯いた後「はい」と答えた。


 受付嬢は一応ギルドの職員のため、事件の受理を考えて言っているつもりだったが、男の子の顔を見て、慌てていた。


「ああ!えっと、カリーさんは冒険者ですので、金とか取りませんよ!人材の損失はギルドの損失だから!」だが、受付嬢の話は全く効いていない。男の子は俯いたままだった。


 あたしのバカ!金とか利益の問題とかじゃないだろう!ええと、ええと……あ!


「し、心配しないで!必ず強い冒険者に頼みますから、きっとすぐ見つかります!」


 受付嬢の話を聞いて、男の子は反応して、頭を上げた。


「……本当ですか。」


「ええ。ここは冒険者協会ですから。人探しもお手の物です!だから安心して!」受付嬢は精いっぱいの慰めと親切な笑顔。


 男の子は心配の顔が変わらないが、「わかりました。」と返事した。


「では、もう一度確認しますが――」少し事件の詳細を聞いていたが、受付嬢はもう一度確認した。今度は記録するために聞いている。


 そして、男の子はそのまま全部を言った後、受付嬢は事件を受理した。


「任せて!坊や。強いおっさんと強い姉さんもいるから、絶対大丈夫です!」


「……うん。気遣ってくれてありがとうございます。お姉さん。」と男の子は受付嬢に感謝の言葉を述べた後、お辞儀をして、ギルドから離れた。


 男の子は離れた後、受付嬢は「ふう」とほっとした。


「失踪か……」中堅冒険者がこんな簡単に失踪することなんて……あり得るのかな?それに、あの子の話を聞くには、かなり突然の失踪だね……


 奴隷を見捨てた?人攫い?それとももっと大きな何かが……受付嬢は自分が記録していた事件を見て、考えこんでいた。


 そのため、時間が流れたことに気付いていなかった。


 いずれにせよ、もっと詳細を調査しなくては……


「――メリナー。」突然の声に、メリナーという受付嬢がまたビクッとした。


「はい!」


「はいじゃないよ……君の番だよ。休憩の時間。早く昼ご飯に行って。この後が忙しいから。」もう一人の受付係がカウンターに戻ったのだ。


「ああ、ごめんごめん!」メリナーがそう言って、すぐカウンターから離れた。


「まったく……あ!ちょっと!」


 メリナーは聞こえないふりをして、ギルドを離れた。


「メリナー!お前!ほとんど何もやってなかったじゃん!」

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