(3)
「よいしょっと!」ドンという音がして、一人の女性が自分の呼ぶ声に気にしておらず、背負っている革の袋をカウンターに置いた。革の袋は決して大きくないが、ドンという音がするからに重みのあるものに誰でも簡単にわかる。つまり、見た目によらず、袋の中にかなりの物量が入っている。
ここは冒険者協会、いわゆるギルドである。
男女問わず、受付係の人員がカウンターに配属されており、冒険者たちのクエストや商売に対応している……普通ならそうだが。今、カウンターにいる人員は一人の女性しかない。
昼ご飯の時間だから、他の受付係がいない。また、広間に一人の冒険者もおらず、とても閑散だった。
この昼頃の時間帯はギルドの数少ない閑散期だ。
それでも、カウンターの女性が「はぁ……面倒くさいな……」と、革の袋から一つの微かに水色に輝いている石を取り出して、呟いた。
「素材の仕入れ、清算、クエストの配布にランクの鑑定……他にも色々面倒な雑務があるし……」行政って……面倒くさいな。
女性はずっと呟きながら、机に置いてある片眼鏡をかけて、石を観察し始めた。
そして、五秒も足らず、女性は石をDの文字に書いてある紙のところに置き、続きのものを袋から取り出した。
それぞれのものをA、B、C、D、Eに分けて、同じように繰り返している。当然、この動きをしている間、女性はずっとブツブツと文句を言っていた。
「……そもそも、あたしは受付嬢より――」
「あの――」
すると、突然な声に受付嬢はビクッとした。さっきまでギルドは誰もいなかったから、また、この時間帯は誰も来ないと思い込んで、びっくりしてしまった。ある意味、受付嬢はかなり集中している。
「は、はい!すみません!もう文句なんて言いません!会長!」と受付嬢が慌てて返事した。
「……文句?会長?」だが、受付嬢はすぐこの声が他の誰よりも幼かったと気付いた。
「あれ?会長じゃなかったか……」受付嬢は声の主を見て、ほっとした。
声の主は一人の男の子だった。
「会長って?冒険者様の会長様ですか?」男の子は少しおどおどとしている様子が少々愛嬌を感じる。
そのため、「あ、はい、まあぁ……そうなんですけど、あまり気にしなくていいですよ!坊や。」と受付嬢はついお客様に相応しくない呼称を口にした。
男の子は少し受付嬢の呼称に不満な顔をしていたが、何も言わなかった。
そして、受付嬢は男の子の様子を見て、考えている。
冒険者じゃないね……でも、この子、なんか見覚えが……いや、今そんなことより、確認する必要なことがある!
「そんなことより、坊や。君は……いつここにいました?」
「ついさっきなんですが……どうしました?」男の子は不可解な顔をしていた。
つまり、あたしの文句を聞いてなかったね!受付嬢は心の中によし!とガッツポーズをした。
「いいえ、ちょっと確認しただけです。それで、坊やは何かご用はありますでしょうか?」
「……冒険者の受付は、ずっとこんな感じですか?」
「え?」と受付嬢はついさっきまで気づいてなかったことに気付いた。
あたし、何かやってしまったのか……受付嬢は男の子のちょっと怒っている顔を見てこう思った。
すると、男の子は頭を左右に振って、「ダメ、今は僕のことより……」両手で頬に叩き、表情を元に戻した。
「あの……お姉さん。この三日間、カリー様はここに来たことはありますか?」
「カリー様……たしかカリーって、『蓮華の剣』というパーティーに所属する一人の中堅冒険者だっけ。」
「はい。そうです。見かけませんでしたか?」
「うーん、この三日間ですか……あたしなら見かけておりませんね。他の人はどうかわかりませんが……カリーさんはどうしました?」
「実はこの三日……カリー様はずっと家に帰っていません。最初は材料の調達にどこかに行ってたと思いましたが――」
受付嬢は男の子の話を聞きながら、男の子のことを思い出した。
あ!この子、カリーさんちの子だ!財産登録の時、見たことがあるけど、家事の奴隷だから……あれ以来だったな。まさかあの子はここまで変わるとは……
そして、男の子の話を聞き終わって、受付嬢は簡単に話をまとめた。
「つまり、失踪の事件ですね?」
「失踪……」男の子は一瞬ためらって、悲しみの顔を伏せ、俯いた後「はい」と答えた。
受付嬢は一応ギルドの職員のため、事件の受理を考えて言っているつもりだったが、男の子の顔を見て、慌てていた。
「ああ!えっと、カリーさんは冒険者ですので、金とか取りませんよ!人材の損失はギルドの損失だから!」だが、受付嬢の話は全く効いていない。男の子は俯いたままだった。
あたしのバカ!金とか利益の問題とかじゃないだろう!ええと、ええと……あ!
「し、心配しないで!必ず強い冒険者に頼みますから、きっとすぐ見つかります!」
受付嬢の話を聞いて、男の子は反応して、頭を上げた。
「……本当ですか。」
「ええ。ここは冒険者協会ですから。人探しもお手の物です!だから安心して!」受付嬢は精いっぱいの慰めと親切な笑顔。
男の子は心配の顔が変わらないが、「わかりました。」と返事した。
「では、もう一度確認しますが――」少し事件の詳細を聞いていたが、受付嬢はもう一度確認した。今度は記録するために聞いている。
そして、男の子はそのまま全部を言った後、受付嬢は事件を受理した。
「任せて!坊や。強いおっさんと強い姉さんもいるから、絶対大丈夫です!」
「……うん。気遣ってくれてありがとうございます。お姉さん。」と男の子は受付嬢に感謝の言葉を述べた後、お辞儀をして、ギルドから離れた。
男の子は離れた後、受付嬢は「ふう」とほっとした。
「失踪か……」中堅冒険者がこんな簡単に失踪することなんて……あり得るのかな?それに、あの子の話を聞くには、かなり突然の失踪だね……
奴隷を見捨てた?人攫い?それとももっと大きな何かが……受付嬢は自分が記録していた事件を見て、考えこんでいた。
そのため、時間が流れたことに気付いていなかった。
いずれにせよ、もっと詳細を調査しなくては……
「――メリナー。」突然の声に、メリナーという受付嬢がまたビクッとした。
「はい!」
「はいじゃないよ……君の番だよ。休憩の時間。早く昼ご飯に行って。この後が忙しいから。」もう一人の受付係がカウンターに戻ったのだ。
「ああ、ごめんごめん!」メリナーがそう言って、すぐカウンターから離れた。
「まったく……あ!ちょっと!」
メリナーは聞こえないふりをして、ギルドを離れた。
「メリナー!お前!ほとんど何もやってなかったじゃん!」




