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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
井上凜の場合
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4

 『スキル?そういえば、キャラクターを作った時、スキルを選んだね。』と井上桃花は返事した。


「ええ。それに、みんなはちょっと前に、私とフロンさんの会話を聞いていたんだろう。」


 『ああ、あの会話ね。キャラクターのこととか、悪意のこととか。』


「うん。そして、たぶん今私たちの身体はキャラクターの身体だ。つまり、キャラクターの能力とスキルもきっと再現していると思う。そうでしょう?フロンさん。」


「はい、その通りです。君たちが作ったキャラクターの外見、能力は完全に再現しています。だが、背景の部分は“ハーラーリア”世界に馴染むために、それなりの修正が入ります。そのための『ロールプレイング状態』です。」


 『なるほど。』


「だからね。私は今のうちに、キャラクターの情報を共有した方がいいと思う。もしかして私たちの中に、誰かのスキルがこの状況を解決できるかもしれないし。情報を共有することによって、他の方法が思いつけるかもしれない。どう思う?」


 『いいと思う!兄さんの提案に一票入れまーす!』


『いや、別に反対する人はいないだろう……何で姉ちゃんが勝手に投票するん?』


 『だって今の話、デスゲーム系のやつと結構似ているじゃん。』


「ああ、アレね。すぐ誰か反対する状況ね。確かにちょっと似ているね。」


 『ははは。じゃあ、父さん反対しようか?』


 『反対する必要なくない?』『あなた、冗談やりすぎないようにね。』


 『ごめん、ごめん。なんか面白いからつい……』


 ははは!と家族の笑い声に安心感を得た井上凜も一緒に笑った。


「じゃあ、まず私から言おうか――あ!」と井上凜は率先して話すつもりだったが、途中で一つのことを思い出した。


 『どうした?』


「……ちなみになんだが、君たちはあの会話をどこからどこまで聞いていた?」と井上凜は少し恥ずかしそうに言っている。


『ええと、私は「この状況はフロンさんの仕業ですか?」から聞いていたよ。』


『姉ちゃんと同じく。』『母さんも桃ちゃんと同じよ。』『父さんも同じ。』


 ほぼ最初からじゃん!


「フロンさん!」


「はい!」


「原因が知りたいんですが……なぜ私に黙って、二人の会話をみんなに聞かせたんでしょうか?」と井上凜はそう言いながら、実は予想がついた。


「あ、それはね……みんなに一緒に質問されたから。一人ずつ説明するより、全員に聞かせた方が一番手早いかなーと思いました。」


「だろうな……GMみたいな役割ですし。」


 『あ!そういえば、フロンさんはGMでしょう?』と井上桃花は何かが思いついて話した。


「そうですが、どうしました?」


 『GMなら、私たちの居場所がわからないですか?』


「居場所はわかるんですが、具体的なところがわかりません。」


 『何で居場所がわかるのに、何で具体的なところがわからないの?どういう仕組み?』


「ええと、原理を説明すると、難しい話になりますが……」


 『違います。原理の話じゃなくて、その……この身体はフロンさんが作ったのなら、何で具体的なところがわからないのと聞いています。』


「それも原理と関わりますが……」


 『いや、だから原理とかどうでもいいです!もっとこう――』


「ああ……桃ちゃん。君はこれが聞きたいだろう。『フロンさんは私たちの居場所をどう確認したの』って。」


 『そう!それ!』


「つまり、フロンさんはどういう手段で私たちの居場所を確認しているでしょうか?例えば、地図とか画像とか、そういう目視で確認できるものがありますか?」


「なるほど。そういうことですか。目視と言えば目視なんですが、その確認する手段は文字です。例えば、『君たちがいる森は命の森、今近くにいる』という感じですね。具体的なところが特定できません。」


「なるほど。」


 『そうですか……残念だな。』


「すみません。」


「いいえ、おかげで情報が確認できるので、謝らなくてもいいですよ。それに、桃ちゃんのおかげで、一つ思いついたんだ。」


 『お?なになに?』


「フロンさん、あなたも私たちと情報を共有してみませんか?TRPGと言ったら、GMもプレイヤーと同じです。お互い助け合う、協力するための存在です。」


「いいんですか?皆様は私のことを完全に信用していないと思うんですが……」


「はい。むしろ信用の面で言ったら、そうしてください。今一番信用できない人はフロンさんですよ。」


 『そうだね。私たちをここに連れてきた人だし。』


 『お!これはみんなの兄さんに一票だな。』


 『母さんも入れようか。一・票ー』


『だから何で投票……まあ、僕も入れるけど。』


 全員ノリノリである。


「まあ……こんな感じの家族ですが、私にとって大事な家族ですから。フロンさんにできるだけ協力してほしいです。」


「わかりました。元々協力するつもりで皆様を“ハーラーリア”世界に連れてきましたから、できるだけ協力します。とにかく、情報を惜しみなく出せばいいでしょうか?」


 フロンの話を聞いて、井上凜はフロンの説明に心配していた。情報を理解するには消化の時間も必要だ。


「いや……一気に言ってくれても、すぐに理解できないと思います。とりあえず、私たちはまた何か質問があれば、フロンさんは誠実に答えてくれればそれでいいです。」


「わかりました。」


「ではまず一つ目、『空の声』に関してですが……私たちはこうやって会話ができるのは、若実ちゃんの『応援スキル』のおかげですか?」


「はい、そうです。普通なら、私を通して全員に伝言をする形ですが、このスキルのおかげで、色んな手間が省けます。」


「なるほど……」もう一つ聞きたかった井上凜だが、その質問は先に井上星に聞いた。


 『では、一つ気になることがあるんだが、フロンおじさん。』


「はい、何でしょうか。星様。」


 『この会話の状態、いつまで続けるの?』


「本人の意志があれば、ずっと続けられますが……強引に切断することもできます。」


「じゃあ、強引に切断したら、身体に悪影響とか出ますか?」


「いいえ、何の害もありません。ただ会話ができなくなります。」


 『電話みたいなものかな。』と井上桃花が言った。


「そうですね。ただし、電話とどこが違うと言ったら、これは『応援スキル』ということです。当然スキル効果もあります。」


「その効果は?」


「若実ちゃんが君たちに応援の言葉を送ったら、君たちの行動にいいことが起きます。」


「じゃあ、若実ちゃん!」返事がなかった。


 『あの……実はさっきから思ったんだが、若実ちゃん何も喋ってなかったじゃない?』と井上星が言った。


「え?」そういえば……井上凜は嫌な予感がした。そして、井上凜だけではなく、井上家族全員、何となく同じ想像をした。


 『フロンおじさん!若実ちゃんの様子を見てください!』


「はい!あ……若実様!起きてく――」声が途切れた。


 若実様!起きてください――!と、なぜか井上一家全員は、フロンが慌てて井上若実のことを起こしている様子と、みんなの声を聞きながら安心して隣に眠った井上若実の様子が簡単に目に浮かんだのだった。


 しばらく待つか?でも、若実ちゃんは一度寝たら、なかなか起こせないよな……


 そう思いつつ、井上凜はしばらく待っていた。だが、何分が経っても、連絡が来なかった。


 当然、待っている間、井上凜は試しに皆を呼んだが、返事がなかった。


「では、フロンさん?」やはり返事がなかった。


 これは完全に眠ったな。もしフロンさんは悪いやつならどうしようよ、若実ちゃん。でも、フロンさんが隣にいても安心して眠れるということは、それなりに信頼しているだろう……と自分の妹に少し心配している井上凜だった。


「どうしようかな。ずっと待っているのも怖いし……」目の前のメッセージとダイスを見て、井上凜は考え始めた。


 若実ちゃんが寝る時間は大体1~2時間だ……この間に何もしないのはさすがに怖い。


 そして、井上凜は考え始めると、メッセージのサイズが少し変わった。


「あ!」


 メッセージのサイズが変わったということは、星くんが動いただろうと井上凜は会話のことを思い出した。


 大声で叫ぶか?だが、ファンタジー世界の森にどんな生き物がいるかわからない。危険な生き物を引き寄せたら、星くんまで……


 やはり、ダイスに頼るしかないのか?


 色んなことを悩んでいる井上凜だが、メッセージのサイズが固定のサイズに戻ったと気付いた。


 次の瞬間、「行動の判定を申請しますか?」の言葉が「判定をしてください。ダイスを持ってください。」と丸々変わった。


「あ?」と驚愕した井上凜。


「フロンさん?」返事がなかった。


 フロンさんじゃないなら……星くんだな。怖くないのか?弟よ。


「まあ、ずっと悩んでもしょうがないか。私もちょっと判定の結果はどうなるか気になるし、今のうちにわかった方がいいかもしれない。」


「ダイスを持ってください。」というメッセージの一文から考えて、井上凜は手を伸ばして、そのダイスを握った。


 ダイスが立体映像の実体化した感じで、井上凜の手元に出現した。


 普通の十面ダイスだな……そう考えて、井上凜はまたメッセージを見始めた。


 なぜなら、メッセージの内容が変わった。


「『仲間の合流』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

 1:ファンブル。

 2~5:失敗。

 6~9:成功。

 10:クリティカル。

 その他:その他。」


「……なんか見たことあるな。だが、『その他』は何だろう。」


 その他の項目に気になっている井上凜だが、答えがわからなかった。


「仕方ないか。とりあえず、結果が見たいなら、振るしかないな。」


 井上凜はダイスを振った。


 その出目は――


 3だった。


「うえ……失敗の出目だ。」井上凜は再びメッセージの内容を見た。


 まるで示すかのように、大きな「失敗」という結果のメッセージが出てきた。また、その結果の下にもう一つのメッセージが重ねてあったが、「失敗」のメッセージを消さないと見えなかった。


 右上に×のボタンが増やされた……さっきなかったのに。井上凜はこう考えながら、「失敗」のメッセージを消した。


 TRPGのシステムによるが、普通失敗したら、大体不利な結果が起こるが……何も起きない可能性もある。どうか、その方向で――


 そして、次に出てきたメッセージの内容は失敗した結果を書いてある。


 失敗:しばらくの間、仲間との合流ができない。

 その他:判定の出目が同じのため、不思議なことが起こる。仲間と合流できる。


「どういうこと?選択できるの?なら……」


 井上凜は「その他」を選択した。


 そして、井上凜の周りの木が風に吹かれていたように、モソモソとした声はずっとある方向に示した。


 はは。この異様な状況に、SAN値チェック!と自分があまり驚いていなかったことに自嘲する井上凜だった。


 一方、フロンは井上若実を起こすために、慌てている。


 「若実様!起きてください!私の信用の問題に関わっていますから、早く起きてください!」


 「うっ……」まるでうるさいかと言っているように、パチっと井上若実は小さな手でフロンの顔面に直撃した。


 「若実様……」ずっと起こせないから、フロンはしょうがなく、せめて風邪をひかないように、枕と布団を用意して、井上若実を布団の中に寝かせておいた。


 「仕方ない……早くしっかりしなきゃ!」とフロンは呟きつつ、舞台みたいなところに近づいた。


 その舞台の上に、一個の机が建っていて、散々な資料と文字情報が散らかしている。


 そして、最新の情報が目を通したら、フロンは驚いて目を見開いた。


 「え!嘘……全員、判定したの?!」


 結果を見た感じ、悪いことが起こらなかったらしいが……少し不安を感じたフロンだった。

挿絵(By みてみん)


10は誰だろうな。


フロンの部分を書き忘れました。今書き添えました。

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