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男の話には気になるところが多いが、戦いが始まって、ツリーセは考える余裕がない。
特に男は武器を持っていたため、軽快な攻撃に殺意が高い。
スッ、シュッ、シュッ……男は迷いなく右手に持ったナイフでツリーセの喉を狙っていた。刺す、振る、また反対方向に勢いをつけて振った。
ツリーセは適当に手で防げない。
だから後ろ、後ろ、また後ろに下がって、避けるしかない。
切られる……それに、ずっと構えている!ツリーセは考えながら、視線は男のもう片手に持っている皮革のベルトを見ていた。
男のナイフは全部空ぶったが……まるでこのタイミングを狙っていたかのように、直接構えていたベルトを振って、ツリーセの左手に絡めた。
「うっ!」ベルトに絡まれたツリーセは一瞬焦ったが、ツリーセの中にもう一人――井上星がここで言った。
『引っ張って!相手のバランスを崩すんだ!』
ツリーセはすぐ実行した!
戦闘の判定
ツリーセ(井上星):(省略)
判定の結果:7(+2)=9 成功
男はベルトで絡めた瞬間、相手の隙を見ていた。
そのため、男は強引な手段――すぐ自分の方向に引っ張って、勢いのままナイフでツリーセの手に刺すつもりだった。
しかし、男はツリーセが見せた隙が罠だとは思わなかった。
ツリーセは一瞬焦ったが、すぐ左足を後ろに一歩下がって、身体をひねりし、全身の力で絡めた左手を自分の方向に引っ張ってきた。
「う……」
まだベルトを手放さない男性は突然の引く力によって、身体の中心はすでに右半身に置いたバランスが崩した。
危うくツリーセの手に刺すナイフもずらされた。
当然、ツリーセは相手のバランスを崩した後、反撃しないわけがない。
「はっ!」と叫び、ツリーセはそのままの態勢でベルトを引っ張ってきた同時、身体の回転に勢いをつけ、左足も流れるように華麗な回転蹴りを放った。
だが、男はここでベルトを手放し、無理やり腕の方で蹴りを受け止めた。
表情は微動だにしないが、強い蹴りをまともに喰らった男は衝撃によって何歩に下がった。
少し距離を取られたツリーセはこれを機に正面に向いて、話しかけた。
「どうして攻撃してくるんですか!」
男は答えないまま、ツリーセを見定める。
武器を持っていない……死んだような目はツリーセの左手に絡めているベルトを見つめた。
ツリーセは男が答える気はないと簡単にわかった。
また、男の視線に気付いたツリーセは、すぐ左手に絡めているベルトを解くつもりだった。
しかし、ツリーセが手を動いた瞬間、男も動いた。
男はツリーセに近づくついでに、地面に刺さった三本のナイフに一本抜いた。
スッ、スッ、スッ!
目、心臓、喉……
男はずっとツリーセの要害を狙って攻撃した。
「……う!」ツリーセは避けるしかない。
後ろ、右、半回転……ツリーセは避けながら、左手に絡めていたベルトを解いた。
『相手のベルトを使おう!ナイフを防ごう!』
戦闘の判定
ツリーセ(井上星):(省略)
判定の結果:4(+2)=6 成功
ツリーセはベルトを解いたら、すぐベルトを二重の線のように重ねて応用し、スッ、パチ、ギ……と何回も男の攻撃を防いだ。
二人は一回、二回、三回……皮革と二本のナイフの交じりが何度も発生し、時々ナイフがツリーセの皮膚にかすって、何本の血の線を残した。けれど、そういう時、ツリーセも負けじとベルトで男の顔、胴体、腕にパチという音を立て反撃する。
何回目のやり合いがすると、ツリーセは男の一つの隙を見つけた。
ツリーセは正拳を突いた後、「やあぁ!」と叫び、男の隙に攻めることができた。男を後ろに押して、距離を取った。
だが、「……ふ。」ツリーセは男が冷笑か、息を吐いたかもわからず、こんな声が聞こえた気がした。
すると、男は左手のナイフ――さっき抜いたナイフをツリーセに投げつけた。
「ド!」という音がして、ナイフがツリーセの後ろにある木に刺さった。
ツリーセは身体を半回しし、投げつけたナイフを避けていた。
男はこの隙にもう二本のナイフにたどり着き、一本目のナイフを足で蹴り上げ、手に残りのナイフを投げつけた。
「ツィン」と今回ツリーセはベルトで打ち付けた。同時に、男は蹴り上げたナイフを手に取り、もう一度投げつけた。遠心力で一周回った後、事前に狙い定めた方向へ。
ナイフは猛スピードでツリーセに向かって飛んでいた。
今度ツリーセは避けられなかった。
プツァ、「グっ!」ナイフは慈悲なく、直接ツリーセの肩と脇の連結部分に刺さった。激痛が走り、井上星が『痛い!』と叫んだ。
だが、男は攻撃を止めない。ナイフを投げつけた後すぐ、地面に残った最後の一本のナイフを抜いた。男はナイフを逆ハンに握って、明らかに刺さる態勢である。視線もツリーセに刺さったナイフに狙っていた。
もっと深くに押される――と男の目にツリーセは感じた。
そして、男の次の行動はツリーセに自分の感じが正しいとわかった。
男はナイフと空手の組み合わせ技が連続で攻めてきた。
時にはナイフで喉を狙う。時にはもう片手でナイフを押す行動……
しかし、ツリーセは簡単につぶされていない。ベルトを使って、時に牽制し、柔軟な身体で何度もギリギリのタイミングで危機を乗り越えた。
戦闘の判定
ツリーセ(井上星):(省略)
判定の結果:4(+2)=6 成功
判定の結果:10(+2)=12 クリティカル
判定の結果:5(+2)=7 成功
「ハッ!」反撃もできたのだ。
普通なら、これは互角な戦いに見えるんだが……井上星はなぜかずっと嫌な予感がする。
そもそも、井上星はツリーセと感覚が共有しているから、さっきの黒い物体は誰なのか知っている。
あの強い衝撃とあの状況、そして、戦いがほぼ互角なのに、戦っている男性は全然焦っていない。
すべての状況を合わせて見ると、嫌な予感の正体は嫌でもわかってしまう。
この男は、まだ全力を出していない――
「ポン!」「ドン!」「ギ!」
そして、お互いもう何度目の攻防が続いている中、ツリーセはもう一度男の隙を見つけた!
男が大きな動き、ナイフを振って、一つの隙が出てしまった……
ここだ!とツリーセが思った。
しかし――『ダメだ!ツリーセ!これが罠だ!』
まるで井上星の声に呼応するように、男の表情は初めて変わった。不敵な笑み、また、殺意を含めている。
「……遊びは終わりだ。」男の声は、淡々とツリーセの死期を宣言した。
男はわざと隙を見せて、ツリーセに攻めさせた。ナイフでツリーセに持ったベルトを引っ掛けて、自分の方向に引っ張ってきた。
引っ張ってきたと同時に、ツリーセの肩に刺さったナイフをプチと引き抜き、勢いをつけて、喉に白い閃光の線を描いた。
「グハ……」プシャ――血の花が咲いた。
五分に続いたこの戦いは、間もなく終点を迎えるそうだ。
男は何の同情もなく、手を止めず、ただナイフでツリーセの目に刺すつもり――のこの瞬間。
「はああああああぁ!」と一人の女性の声が叫ぶとともに、空中から現れた。
一つのドロップキックはツリーセに目を刺す寸前、男性に綺麗に放った。
「弟君に……手を出すな!」と井上桃花がとんでもない気迫を放って、男性に睨み付けた。
痛い……痛い痛い痛い……!
「ツリーセ!待ってください……俺は今すぐ君を……治す……」




