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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
三人のシナリオ
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 「いろんなものが増えてた……」と井上凜が状態表を見て、驚いている様子で言った。


「兄さん先生!私も!」と井上桃花はまるで先生に発言を求めるように手を挙げてから言った。


「桃ちゃんもか……」井上凜はこう呟いたと同時に視線をツリーセの方に送った。井上桃花もそうであるなら、ツリーセ――星もそうなった可能性が高いと思っている。


 そして、井上凜は間違っていなかった。


『うん。僕も色々増えてたよ。』「……星もそうだって言いました。」とツリーセが返事した。


「そうですか……」


 TRPGでは、経歴や関係性など、何かが変わってもそこまでおかしくないことだ。ここら辺はまだ井上凜に驚かせた要素ではない。精々「なるほど、こうなるのか」ということくらいだった。


 井上凜に驚かせたのはあの情報だ。


 この成功の数、私が判定した回数はそんなに多くないはずだが……と井上凜が思っている。


 井上凜が気になっているのは判定の回数だ。成功の数は明らかに判定の回数より上回っている。


 そこまで判定していないのに、なんで成功の数が多い?もしかして、自分自身の「行為」も含めているのか?今までやってきた行動で総合的に考えると、その方が数字と合致できる気がする。もし本当にそうだとしたら、この成功の定義、あるいは行動の定義も――と井上凜がここまで考えていると、井上桃花の声が中断させた。


「ちなみに、ツリーセちゃんは状態表が見えないの?」と井上桃花は思っている疑問を口に出した。


 井上桃花は井上凜と気になるところが違う。それは――


「えっ、うん!わかっているけど、見えません……」


「そうーか。実は、私の経歴の部分……かわいい話が書いているよ。ねぇ、聞きたい?聞きたい?」


 ――井上桃花は経歴のことが気になっている。


 明らかに説明文じゃない書き方がおかしかった……が、井上桃花はあくまで「ついでに」疑問を解決しようとしただけだ。


 むしろ、井上桃花は今一番やりたかったことは――井上星は口調で簡単にわかる。自分の姉が何をやるつもりなのかを――『ツリーセ。覚えてね。これはからかいたいだけの口調だ。気にしなくていいよ。』


 ツリーセは無声の「はい」と井上星に返事した後、井上桃花の質問に素直に返事した。


「い、いいえ……大丈夫です。」


「もーう……」と少しつまらない声を出した井上桃花が続いて「まあ、いっか」と言った。


 同時に井上桃花はまた何かを思い出したかのように、「そういえば、私に……いいえ。私たちに敬語を使わなくていいよ。ツリーセ・ちゃん!」と言った。


 ギュッ。と感じた井上星はこれについては何も言わなくなった。きっとこれからもどうしようもないと諦めかけている。


「う、うん……でも、リンさんは……」半ばに紅潮な顔になったツリーセに井上桃花は少し満足な顔になった。


「もちろん大丈夫だよね。ね!兄さん。」


 ボールが自分のところに投げられると、井上凜はしっかりキャッチして投げ返した。


「そうだね。ツリーセさん……ツリーセくんはもう星くんの友達みたいなものだからな。あまり拘らなくていい。」と井上凜は真面目に言っていた。


 ふざけていないため、井上星は特に何も言わない。この場合、ツリーセは自分の意志で決めていい。


「わかりま――」ツリーセは敬語を言い出そうとしているところに、井上桃花に指で鼻先を突かれて、「うっ!」となった後、すぐ「わ、わかった。モモナー。」言い換えた。


 井上桃花のこの仕草にツリーセはやはりキュンとした。


 『……ツリーセさぁ。姉ちゃんのことはいいけど……悪い女に騙されないでね。』いちいちの動きにドキメキになるなんて、なんかちょろい……


「騙されないって……こういうのは恋人だからこそドキドキしちゃうの!」


 『バカ!こういう突っ込みにいちいち――』――返事しなくていいと井上星が言いかけた途中、井上桃花はいいおもちゃを見つけたかのように、すごい勢いで「どういうこと?どういうこと?」と井上星の後の話がわからなくなるくらいに言いつつ、ツリーセに近寄った。


「恋人?私が?もしかして、私のことが、好きー?」


 うざっ……と井上星が思っているが、近寄られたツリーセの反応は全く違うである。


 ドキッ、ドキッ……とツリーセはドキメキしながら、素直に頷いた。


 『あーあ……』これはおもちゃにされるわ。かわいそうに。とツリーセに同情の感情が湧いてきた井上星だった。


 だが、井上星には一つの誤算があった。


「ツリーセちゃんは素直でいい子だねー!よしよし。それで、もう一度確認したいけど、モモナーと恋人なんだね?ツリーセちゃんは。」


 ツリーセは意味がわからないが、もう一度頷いた。


「ふふーん。」と意味ありげに笑っている井上桃花である。


 あれ……意外と何も言わない。


 井上星の誤算は、実は井上桃花が見つけたおもちゃはツリーセではなく、井上星であることだった。


「そっかそっか。モモナーと恋人なんだ。」


 いや、これはアレか……悪いところが出てるな。井上星は姉の悪いところに気を引き取られて、自分の勘違いことに意識できていなかった。


「えっと……?なんでずっと言うの?」とツリーセが言った。


 こういううざいところが姉ちゃんの悪いところだよと井上星は軽くツリーセに言った。


「――キャラクターを作った時、私のことを断ったのにね。親愛なる弟君が。」


「あら、それはひどいな。」と井上凜はここで話を乗った。


「だろう?悲しい妹ちゃんに慰めて、兄さん。うえぇーん、シクシクー」


「よしよし。泣かなーい、泣かなーい。」


 明らかに嘘泣きの姉と悪ノリにしている兄、井上星は普通に内心でため息をついた。


 この時、井上星はまだ意識できていなかった。自分に変わった後の未来はどれだけからかわれているのかを。


「あの……そろそろ、話を戻したほうがいいでしょう?」とフロンはこれ以上あまり意味のない会話が続いているだろうと予想したため、話を止めた。


 それに、今星様の声が聞こえないが、なんかちょっといじられている気がする……とフロンが少し思っている。


 実際、フロンが止めないと、井上星は二人の会話がもう少し続くだとわかっている。助かった気分だった。


「そうですね。申し訳ありません。フロンさん。」「すみません。フロンさん。」


「いいえ、いいえ。それで、状態表を見てどうでしょうか?何か見当つきましたか?」


「うーん……特にありませんね。かなりの変化はありましたが――」と井上凜は少し状態表の変化に説明し、「――変化はこういう感じで、探索に役に立つかどうかわかりませんね。」と言った。


「ちょっと書き方が違うんですが、私も同じですね。」


「書き方が?」と井上凜は少し気になって聞いてみた。


「うん。」


「あ。状態表の書き方はキャラクターの『個性』と関係しています。経験が多ければ多いほど、書き方は最初と全く違う感じになります。もしどんな影響を受けるかというと、主に『ロールプレイング状態』に関わります。


 ちなみに、普通の場合、どんな性格でも『ロールプレイング状態』に影響されないですが、価値観や常識の接触によって、軽微な影響を受けるかもしれません。でも、それは人との交流によっての影響で考えれば大丈夫です。」


 世界観の設定に合わせて、作ったキャラクターに演じきること、全ての価値観や常識は必ず世界観に合わせてすり替える。これはTRPGにおいてのロールプレイだ。


 つまり、しばらく「世界の住人になる」ということだ。


 恐らく、「ロールプレイング状態」はそういうことだろう。星くんにとって、今はただこの世界の住人と会話しているだけだろう……ともう一つロールプレイング状態についてわかった井上凜が思っていた。


「情報共有はいいけど、結局誰を選んだ方がいい?」と井上桃花が言った。


「そうだな……」「少し難しい話ですね。」


「あ、でも、私的には一つ確定できるよ!」と井上桃花が言った。


「それは?」


「消去法だよ。この三人で一人が確定で残ったほうがいい。」と井上桃花が言った言葉に、一人を除いて、すぐ誰のことを指しているのかわかった。


「リンさんだね。」「凜様ですね。」


「ちょっと待って――」


「ダ・メ・ですよ。兄・さん!君もわかるだろう?」


「……もしただのステータスとスキルで考えれば、確かに私は向いてないけど――」井上凜の話は途中で井上桃花に遮った。


「ダメ!兄さんだからとか、そういう義務というものとかは関係ない。私も兄さんが痛い目にあうとか嫌だし、心配するの。」真剣な眼差しと真面目な口調、井上桃花が言っているのは本気である。


 真面目なところで真面目に、余裕がある時なるべく気楽に……これは姉ちゃんがすごいところだ。


「兄さん。私と弟君もいたから、もっと頼って?」


 井上凜は何も言い返せなかった。


「それに、ランディさんも言ったじゃない?助けを求めるのは弱さではない。強さは色々ある。君は私たちの兄さん。頼りになる兄さん。私は、兄さんを失いたくない。」


 最後の一句に、井上凜ははぁとため息をついた。兄の意地は妹の決意に折れた。


「それを言うなら、私も君たちを失いたくないけどね。でも……」井上凜は言いながら、井上桃花とツリーセを抱いた。二人の暖かい体温がしっかりと伝わっている。


「父さんと母さんなら手放すよね。精々やれって。」


 二人も井上凜の懐に静かに嬉しい笑顔を零した。


「わかったよ。私はもう阻止しないさ。でも、必ず気を付けてね。」井上凜は言い終えた後、少し離れた。


「うん。わかっている。」「うん、必ず。」


「……では、あと一人はどうしましょうか?」とフロンは何となく雰囲気を察知して言った。


「そうですね……」


「私からすると、星様のキャラクターのほうが捜索に向いています……」


「いいや、私がやる!ツリーセちゃんが残って。」と井上桃花が提案した。


 『ちょっと、姉ちゃん!』と井上星は自分の声が聞こえないとわかっていても思わず言ってしまった。


「そうやって決めるのはちょっと……」とツリーセが反論したかったが、すぐ井上桃花に前に挙げた手で止めた。


「ダメ。ツリーセちゃんは確かに戦いに向いてるけど、こっそりと隠れるとか、動物に察知されないようにするのは私の方がいいと思うよ?」


「それは……」


「確かにこの方面で考えると間違いないですね。危険の対応手段なら、桃花さんが一番多いです。」


 ツリーセは少し納得いかなかったが、理に適っている。だから、反論できなかった。


「それに、情においても、弟君に行かせるのは姉として失格だよ。」と井上桃花が言った。


「はは……なら私は妹に行かせるので、兄として失格だね。」


「もーう、兄さん。悪ノリ!」と井上桃花は少し怒っている風にシュッと、指で井上凜に指した。


 悪ノリ。井上星がよく井上凜に言ったこの言葉、実は井上桃花の出処だった。


「ははは。」と、井上凜は失笑した。伝染されたように、井上桃花も笑い出した。その次に、ツリーセも。


 フロンも何となく、微笑みをしている。


 本当に、良い家族だな――と、こう思った途端。


 この幸せな雰囲気を壊したのは、予想外の大きな事故だった。

ちなみに、最近別の新作が書きたくなりました。

タイトルは一応決めましたので、短編になると思います。

その時、またよろしくお願いいたします~

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