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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
戦い
35/109

34

 井上星は飛んでいるリンディを見て、フロンの話が思い出した。


 “飛んでいる生物に対して、普通の戦術は魔法の弾幕や遠距離の飛び道具ですが……”


 『ツリーセ、魔法が使えるの?』


「使えないよ、普通に。」井上星に返事する時、小声で言っている。


 『じゃ、じゃあ……どうすればいいんだ。』


「大丈夫だよ。僕に任せて。」


 ツリーセが余裕のある自信っぷりに、井上星はもう一つの方法が思い出した。同じくフロンの話だ。


 “吸血鬼なら――マントを奪いましょう!吸血鬼の飛行方法はマントに依存しています。マントがなければ飛べません!”


 『あ!もしかして、マントを奪って――』


「それも違うね。あれは人数がいたから奪えたんだ。それに、あの速度じゃ僕一人が奪えないだろう。」ツリーセはリンディのことを見てこう言った。


 『じゃ、じゃあ――』


「心配しないで。君も言っただろう?これは鬼ごっこだ。」


 自分の顔が見えなくても、井上星はわかっている。ツリーセが笑っていることを。


「ずっとブツブツ、ブツブツと……俺のことをなめているのか!」とリンディがこの話を言った後とともに、ツリーセに向かって行動した。


 当然だが、リンディの飛行の速度が凶暴化になった吸血鬼より早い。


 風を切ったように一瞬で近づいた。体当たりだ。


 速い!


 自分ならきっと反応できず、そのままリンディの攻撃を喰らったと井上星が思っていた。


 しかし、ずっと木の周りにいるツリーセは足で木を一歩踏みしめて、三角飛びの形で木の枝を掴んだ。


 そして、懸垂の感じで簡単に木の上に身体を引き上げた。


「な……!」予想外の行動に取られたことに驚いていたリンディ、その体当たりは虚しく空ぶって、そのまま行き過ぎている。


 空ぶった瞬間、リンディは悔しい顔でツリーセの方へ見ていた。


 リンディは身体をひねって、方向転換した。そのままツリーセに攻撃しにくると思った井上星は、予想が外れた。


「ずるいぞ!」とリンディが突然地面に着地し、指でツリーセに指しながら叫んでいる。


 『……なんで?攻めればいいじゃん?』と何となく疑問を思った井上星。


 そして、ツリーセが地面に降りたリンディを見て、小声で返事した。


「簡単な話だよ。僕もランディさんの助言を取り入れただけ――無理に相手の強みに挑まない。」


 相手の強み、飛行……あ!とここで井上星がわかった。


 ここは森だ。飛行の機動力は広い空間でこそ発揮できる。ツリーセが木に隠れれば、強引に攻められない。強引に攻めても、周りの葉と枝が味方になる。察知しにくい速度が阻害されると、必ず落ちていく。


 つまり、飛行の強みがなくなる。


 『なるほど。じゃあ、これは鬼ごっこというより、かくれんぼの方が適切だね。』


「はは。そうかも。」


「おい!降りてこい!」とリンディはまだ叫んでいる。


 今回ツリーセは返事した。


「嫌だね。それに、僕はおいという名前じゃない。ツリーセという名前があるの。」


「知るか!」


 恐らく心の余裕ができただろう。井上星は何となく今のリンディはとても幼稚な感じでかわいく見える。


「じゃあ、せめて僕たちは吸血鬼狩りじゃないということを認めてくれたら――」


「うるさい!お前が降りないなら……」とリンディは目を閉じて、数秒間何も喋らなかった。


 構えも両手を斜めに開いて、明らかに技を使う予備動作になっている。


 『それは……?』


「魔法だ。」ツリーセはこう言いながら、早速動いた。


 ツリーセは手を枝のところにつき、直接地面に降りた感じでジャンプし、枝を掴んで、遠心力を使って空中ブランコみたいに次の木に飛び、移動した。


 ツリーセは手を離したと同時に、リンディも魔法を使った。


 リンディは両手を振って、パリッと、さっきツリーセがいた枝のところに斬撃の痕が残っている。木の屑が飛んでいた。


 『何も見えない……』


「攻撃用の魔法だね。斬撃系のやつ。」ツリーセはリンディの動きとさっきいた枝のところを見てこう判断した。


 『ずっと気になってたけど、魔法は……見えないの?』


 井上星はファンタジーに関する知識が詳しくないが、見えない魔法がやばいことくらい知っている。


「前も言ったけど、種族によって魔法の概念が違うから。一概には言えない。」


 『そうか。』


「でも――」――この子が異例かもしれない。とツリーセは後の言葉を言わなかった。あまり確信できない推測だったから。


『でも?』


「後で話す。今は……」とツリーセはまた視線をリンディに移した。


 井上星もこの視線の意味がわかって、何も言わなかった。


 リンディが再び構えている。もう一度見えない斬撃がくる。


 ツリーセはさっきと同じ要領で次の木に飛んでいた。


 パリッ、パリッ……と、一回、二回、三回……二人は同じ状況何回か繰り返していた。


 そして、段々と皆と距離を離れていた。


 ずっと繰り返していることに焦って、リンディはツリーセを追いながら言った。


「お前!逃げてばかりで飽きないのか!」


 パリッ。


「君こそ、何で僕たちのことを認めてくれないんだ?こだわる理由は何なんだ?」


 二人が交戦しながら会話している。


「そりゃあ……お前たちは吸血鬼狩りだからに決まっているだろう!」


 パリッ。


「違うって言ったのに……」


「うるさい!」


 パリッ!


 リンディが頑なに認めない姿勢に、ツリーセは少し考えてから言った。


「……本当は違うってわかっているだろう?」


 じゃないと、うるさいとか言わない……


「わかってないんだよ!」


 こんな返事もしない……


 パリッ、パリッ。


 きっと、そういう認めたくない何かがあるだろう。そして、その原因は吸血鬼狩りにある。


 ツリーセは自分なりに推測していた。


「弱いほうが悪い……もしかして、君は弱い自分が許さなかった?」とツリーセがこう言ったら、リンディの攻撃が荒くなった。


 何回かも繰り返して放った魔法が初めてずれた。ずっと枝のところを狙っていた斬撃が太い樹木に切り刻んだ。


「……ふざけんなよ、お前に何か――」――お前に何かがわかるんだよ!とリンディが言いたい話は途中で遮られた。


「もし君が原因を言ってくれたら、僕は必ず降りて、他の手段を選ばずにちゃんと君と戦う。」ツリーセが言っていることは本心である。


 本心だからこそ、リンディが一瞬迷っていた。


「……そんなの信じるもんか!」


「本心です。」


 ツリーセの言葉に、リンディはしばらく止まった。


「それに、はっきり言うけど……君の魔法、あまり脅威じゃない。」


 『え?そうなの?』視認できない魔法は……普通に強いだろう。と井上星が思った。


「……は、はは!お前はそう言って、実は俺に使わせないように言っているだけだろう!見えないから、手ごわいだろう!」とリンディが井上星も感じられる強がりの態度で言った。


 ツリーセは頭を横に振った。


「確かに見えないけど、準備期間が長い。その間、僕は直接木を降りて、君を殴れば勝てるし。」とツリーセがリンディも聞こえる音量で言った。


 確かに!とツリーセが言った話に井上星はハッとなった。


 少しリスクがあるが、ツリーセの速度ならできなくはない。魔法が放たれる前に阻止できる。これが脅威じゃない原因だ。


「じゃ、じゃあ、なんでお前はずっと――」逃げ回って……とリンディは続きの言葉が言えなかった。


 だって、ツリーセがこう言った。


「君の信頼が欲しかったから。」


 この言葉を聞いた瞬間、リンディの手がだらんと垂れ下がった。


 リンディは信じられない表情で言った。


「俺の?知り合いでもない、初日で会った俺の信頼?」


「そうだよ。初日でも知り合いでも同じ。この信頼は、君たちに害をしないこと、つまり、吸血鬼狩りじゃないことだ。」


「……屁理屈だ!」


「弱いほうが悪いという理論も屁理屈だよ。君が言った『アイツら』は、たぶん君をいたぶって、あるいは君の親しみのある人に傷つけて、こう言ったんだろう。『弱い奴がいじめられて当然だ。なぜならこの世は強者だけ話す権利がある。全てが弱いほうが悪い』と……そうだろう?」


 リンディは何も言わなかった。図星だったから。


 『……ツリーセ。もしかして、君も……』君も、そういう経験があるのか?井上星はこれを言わなかった。相手が思い出したくい記憶を蘇らせたくないから。


「リンディさん。君も本当はわかっているでしょう?ああいうヤツらの話は、ただ心を傷つく言葉です。まったくためにならない、ただただ傷つけるために存在している歪んだ理屈です。」


 リンディは悔しい顔になっている。


「リンディさん。僕たちは友達になる必要がありません。ただお互い尊重し合って、お互いの存在を認め合えばいいです。」


 リンディはやはり何も言えなくなった。


 長い時間、沈黙の時間だった。


 まるでこのタイミングだと、さっき距離が離れていた四人が近づいた。


 詳細の会話内容が知らないが、ランディは二人の雰囲気から察知し、こう言った。


「二人とも。戦いを続けたいか?」


「僕は構いませんよ。」とツリーセが言った。


 そして、リンディの返事は――

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