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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
戦い
34/109

33

 ツリーセは早速応用したかったが、リンディが一気に距離を縮めてきて、すぐに行動に移せなかった。


 リンディは右爪、左爪の連続攻撃の後、すぐ右手で刺す;ツリーセは二回受け流した後、横身になって刺してきた右手を避けた。


 そして、リンディが右手を刺した後、一瞬の隙が生んでしまったが、ツリーセは逆に後ろに下がった。


 その原因はリンディが右手を刺すと、すぐ身体を反転し、左手で綺麗な半月の形を切ったのだ。


 二人が戦っている時、ツリーセはよくリンディが右手を刺した後の隙で横を通って反撃したのだ。


 半月切りはそれを対応している――数分間で二人は少しずつ相手の戦い方に慣れていた。


 だから、自分の攻撃が空ぶったことにリンディは不満を感じて、とうとう「ああ!」と吼え始めた。その怒りの叫びとともに、速度も速くなった。


 リンディはもう一度力を入れて、地面を踏みしめる。バネのように跳ねて、双方の距離がまた一気に詰めた。


 シュッ、シュッ!シュッ、ドン!


 攻撃の威力が上がって、空を切っただけでも音が出ている。


 もし当たったら……と井上星が一瞬こんな考えをしてしまった瞬間、ツリーセは受け流すのをやめて、リンディの攻撃を受け止めた。


 『いたっ!』ツリーセは一回防御の態勢で受け止めたら、井上星は思わず叫んでしまった。


 戦っているのは井上星ではないため、彼はこう考えてしまった。


 ツリーセは痛くないのか?と。


 当然井上星はツリーセに気が散らないように言わなかったが、さっきの「いたっ!」という言葉が聞こえたようで、ツリーセは受け止める姿勢が少なくなった。


 だが、やはりリンディの猛烈な攻勢によって、ツリーセは時々避けるにも受け流すにも間に合わない。


 ドンドンドン!


 ツリーセは何回かの攻撃を受け止めるしかなかった。


 いや、恐らく……そんなことを考える余裕がなかったんだ。


 井上星は共通の身体で腕が痺れていると感じた。ツリーセは井上星と井上凜が助言していたものの、すぐに行動に移せなくて、苦戦している。


 つまり、リンディの速さと威力がそれほどだった。


 受け流す行動も減っている……疲れているんだ。


 戦いに関して素人の自分が何を助言しているんだ!と、井上星が考え始めた。


『ごめん!やっぱりさっきの助言はナシで、僕たちが言ったところで――』きっと役に立たないと言いかけた瞬間、ツリーセはまるで井上星の取り消し発言に断るように、両側から自分の顔に向かってきた爪を力強く振り払った。


 ツリーセはまだ戦っている。


 そして、振り払った後、ツリーセは井上星とリンディしか聞こえない音量でこう言った。


「大丈夫だよ。実行できるさ。」ツリーセはこの話を言っている時、余裕のある笑顔だった。


 井上星の存在が知らないリンディにとって、その笑顔と言葉はまさにバカにされているような感じだった。


「ふざけんなよ!」とリンディは二連攻撃を放って振り払われた後、すぐ力をためているように強引に右フックをするつもりだった。


 ほらね!とリンディの動きを見た瞬間、井上星はまるでこの言葉が聞こえていたかのように錯覚していた。


 また、ツリーセの次の動きにも錯覚している感じだった。


 一瞬スローモーションにもなっていたかのように不思議だった。


 リンディの右フックは強引でも、それなりに速さがある。避けるのも、受け流すのも無理だった。だから初めて右フックを受けた時、ツリーセは腕で受け止めた。


 今回も同じく受け止めたが、あくまで腕で止めた瞬間までだ。


 ツリーセは腕で止めた次の瞬間、手を反転し、逆にリンディの手を掴んだ。


 ここまで井上星は見えていた。


 だが、その次は井上星には全く分からなかった。視界が突然グルグルとおかしくなったのだ。


 ここでの状況は、井上凜と井上桃花二人が目をこするほど信じられなかった。


「ほぅ。」とランディも感心した声を出した。


 ツリーセの動きはまるで蛇だった。


 ツリーセは腕で受け止めた後、体操選手のようにリンディの手で一回転し、全身をひねりした感じでリンディの腕にくっついている。


 ツリーセの体格が大きくではなくても、一つの腕に全身の体重にのしかかると、リンディは普通に転ぶようになるが……ツリーセは転ばせないように前倒れそうなリンディの肩を掴んで、ぐるりと蛇みたいにリンディの後ろに纏わりついた。


 そして、ギリギリ転ばなかったリンディは今度バランスの重心が後ろに倒れそうになった。ツリーセはまたぐるりと反対側の腕にしがみついて、本当の意味でリンディの身体を一回りした。


 腰→首の順番で、ツリーセはもう一度ぐるりとリンディの身体を一回りして、最後はリンディの頭を足溜まり場として二秒くらい逆立ちの姿勢になった。


 リンディは自分の身体にグルグルと回っているツリーセに手も足も出なかった。


 そもそもこのような動きは普通ではなかった。当然リンディは対応できなかった。


 そして、逆立ちしたツリーセはよいしょっとリンディの頭に力を入れて、軽々しく宙返りして着地した。


 パタと、ずっと弄ばれていたリンディはやっと転んでしまった。


 ツリーセが着地した後、星がまたたいたと錯覚していたかのような井上星の目の前に、判定のメッセージが見えた。


 ツリーセ(井上星):(省略)

 スキル:『武技』スキル効果:出目に+2。戦いの動きが少し洗練な動きになる。


 判定の結果:10(+2)=12 クリティカル


 そういうことか……と判定の結果によって、井上星はわかった。


 つまり、ツリーセは華麗な技を放った。クリティカルの結果にふさわしい目まぐるしい技を。


 ……ていうか、ツリーセに変わった後、判定がずっと成功してない?とロールプレイング状態はもしかして何か補正がかかっているじゃないかと考え始めた井上星である。


 ふぅ――とツリーセは一息を入れて、リンディのことに気を付けつつ、すぐリンディと距離を取った。


 これで距離を取った……とツリーセがこう考えた瞬間、リンディは地面を強く叩いたように立ち上がった。


 リンディの顔にはまさに屈辱で怒りに満ちている。


「クソが!」とリンディは叫びながら、また地面を踏みしめて一気に距離を詰めるつもりだったが……


 ツリーセはリンディの最初の攻撃を避けた後、木の円をうまく使って動き回っていた。


 一回、二回、三回……シュッ、シュッ、シュッとリンディはツリーセを曲がるところで見た瞬間、爪を伸ばして攻撃したが、全部空を切ってしまった。


 後ろに追うより、相手の不意に突くつもりでリンディは何回か反対側に行った。


 しかし、ツリーセはリンディが来ない瞬間、咄嗟の判断で同じタイミングで反対側に回った。


 このように二人がしばらく木の周りにグルグルと回っていて、まさに井上星が言った鬼ごっこだ。


 戦っているのに、この状況は少し滑稽にも感じたが……


「言った通りにやったな。」とランディが淡々と言った。


「……まあ。あの子が凄いだけだと思います。」


「そうだな。かなり器用な戦い方だった。柔軟な身体をうまく使って、自分の長所を活かしている。」


「……うん。」


 ランディは少し考えてから、井上凜に言った。


「さっき君は俺に聞いたね?」


「えっと……それは?」


「助言してもいいかって。」


「はい。そうですね。」


「なら……俺も言ったほういいだろう。」


「どういうことですか?」


「もしリンディは助けを求めにきたら、俺は――」とランディは話の途中で止まった。


 リンディが耐えられなかった。


 そして、リンディは戦うのをやめて、こう言った。


「……不公平だ!」


 まるでこれが答えだと言うように、ランディは少し息を吐いて、井上凜に視線を送った。


 井上凜はまさかリンディが戦うのをやめるとは思わなかった。ツリーセと井上星も同じ考え方だった。


「あいつが助言したんだ!」とリンディが井上凜に指して言った。


「助力が入ると、それが強いとは言えない!」


「……強さは一つだけじゃない。何度も言ったはずだが?」


「ぐ……じゃあ、俺も助言がほしい!」


 ランディは井上凜に言った。


「俺が言いたいことがわかった?」


「……構いません。こちらも助言したので。」


「……では。」


 ランディがリンディに言った。


「俺たちの強みはなんだ?何でお前は自ら捨てた?」


 この話から啓発を受けたかのように、リンディはハッとなった。


「無理に相手の得意分野に挑む必要がない……助言はここまで。」


 吸血鬼の強みと言えば、それは――「飛行」。


 そして、リンディはマントを使って、飛び始めた。


 本当の鬼ごっこはこれからだ。

挿絵(By みてみん)

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