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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
戦い
33/109

32

 二人の戦いが始まった。


 この森では、一つ一つ木の間は間隔が約3~4メートルだった。木の枝と草むらもそこら中に生えている。


 環境の問題で、動きがかなり制限されているはずだった。


 だが、井上凜と井上桃花は二人の戦いを見て、この感想が浮かんでいた。


 まるでアクション映画を見ていると……


 井上星に至ってはもはや目まぐるしいほど疑似体験をしているという感じだった。


 動けるようになったリンディは戦いが始まった瞬間、すぐ態勢を立て直し、何の隙も与えず、ダッシュのような感じで片足を地面に踏みしめて、ツリーセに突っ込むつもりだった。


 直線的な動きが見えやすくて、ツリーセは横に避けるつもりだった。


 しかし、リンディは突っ込む時、手の爪を後ろに伸ばし、次の瞬間は間違いなく刀を振りかざすみたいな動きだった。


 ツリーセはリンディが前置きの動きを見破って、避けるのをやめて、手で受け流すにした。


 ドン、ドン――ツリーセは自分に向かってくる攻撃――リンディの腕のところに止めて、攻撃を横に受け流した。


 リンディは一瞬不満の表情をしていた。ツリーセが自分の速さに追いつけることに不満を感じたのだ。


 そのため、攻撃が受け流された後、リンディはすぐ力をためているように強引に右フックをした。


 明らかに顔面を狙ってくる拳に、ツリーセは左手で壁のように張って受け止めた。


 受け止めた瞬間、ツリーセは普通の人でも反応できないカウンターを放った……はずだが、リンディの動きはまるでツリーセと対称していて、同じ姿勢でツリーセの攻撃を受け止めた。


 自分が戦っているではないため、井上星は余裕で観察できる。井上星は戦い方がわからなくても、何となくリンディがやりたいことがわかっている。


 お前ができることは俺もできる!と言っているような顔付きだった。


 感情が丸見えじゃん……


 この一連の動きがスイッチに入っているように、激しい肉弾戦が始まった。


 右爪に左手、左手に右腕、腕の後に頭突き……距離が縮めても譲らない・攻撃が空ぶっても二人は止まらない。二人が至近距離での攻防戦、その激しさは一息を入れる余裕がない。


 そして、ドン、ドン!双方がお互いの腕を止めて、お互いの攻撃を阻止するところだ。


 これは二人が激しい攻防の途中、たった二秒くらいの膠着状態だ。


 ふぅ――と、井上星はツリーセとリンディ二人が息をしている声が聞こえた。まるでさっきまでの攻防戦はずっと息を止めて戦っていたようだ。


 そして、この息をしているところから、井上星は予感した。あるいはツリーセの戦闘本能がそのように彼に告げた。


 ――戦いの段階が変わる。


 井上星の予感が的中した。


 二人の肉弾戦が次の段階に入ったのだ。二人とも足を使い始めた。


 井上星はツリーセと同じ体で同じ視野で見ているからわかっている。


 井上星はまだ心の準備ができない中、目の前の景色が突然激変し、一瞬地面の土を見ていた。また、身体全身が張っているように伸ばしている。


 井上星はこの感覚を覚えている。まるでストレッチをしている感じだった。


 だが、井上星の柔軟性は精々中の上、普通の人よりいいが、開脚や海老反り、宙返りなど、かなり激しめの態勢はできなかった。


 ツリーセは軽々しく足を頭より上げていて、リンディの方に蹴り上げる。だが命中した感触がなかった。


 リンディは本当の意味で間一髪ツリーセの足に髪のところにこすったのだ。


 しかし、実はリンディの足もツリーセの足と交差して、ツリーセの頬にこすった。


 二人が決まったかのように一斉に相手の顔に足を伸ばし、そのまま蹴ったのだ。そして、同時に相手の身動きを見切って、ギリギリのラインで避けた。


 この点で見れば、二人の戦い方はかなり気が合っている感じだが、リンディはますます不満な表情になった。


「弱いほうが悪い」、もしここで負けたら、本当に自分が悪いのだ。


 なかなかツリーセに勝てないリンディはそんな自分を許さない。


 つまり、その不満な表情はリンディ自身のプライドのゆえにあったのだった。リンディは自分が言った言葉に焦ってしまった。


 その焦りが表しているように、リンディの動きが少し荒くなっていた。


 少し隙が……


 ツリーセは見逃さない。攻防戦で優勢を取った。ツリーセは時々柔軟な身体で、リンディの不意に突いた。


 だが、優勢を取っても、リンディは意地でもやられっぱなしになっていない。リンディは時々不意に突かれても、速さで補えた。


 シュッ、ドン……


 右足に左手に、腕と肘で足首、下段蹴りの後に流れるように回転蹴り、鞭のように薙ぎ払った後上段蹴り……双方が足技と上半身を駆使し、お互いの攻撃に対応している。


 戦いは数分しか経っていないが、二人もかなり消耗した顔色だった。だが、誰も諦めていない。


 二人の戦いがまだしばらく膠着状態だった。


 この膠着状態を見て、井上凜はランディに言った。


「あの、ランディさん……」


「なんだ?」


「助言……してもいいですか?」


「お好きにどうぞ。元々ルールなんて設けてないから。」


「……本当にいいんですか?」と井上凜はランディの二つ返事に少し驚いた。


「『弱いほうが悪い』からな。自分でこの戦闘に何とかしようという考え方と無意味なプライドにこだわること、それが自分に弱くなる。一つの弱さになる。」


 自分で何とかしようという考え方……そう言えば……井上凜は遺跡のことを思い出した。


 井上凜も弟に先に逃げさせて、自分でランディを足止めするつもりだったが、よく考えれば、それはただの「兄の意地」だったかもしれない。


「……でも、プライドは時にはモチベーションになって、強くならないんですか?」


「まあ、そういう時もあるだろう。だが、今それはないな。逆に過度な自負心になって、傲慢になった。」


「……そうですか。」


「要は、使い道だ。」


「なるほど……」


 ランディの話を聞いて、井上桃花は小さな声でこっそりと井上凜に話しかけた。


「やはりランディさん強いかな?」


「さあ……」


 ランディは二人を一瞥し、井上凜に話した。


「それで?助言するか?」


 井上凜は少し迷っていた。


 井上桃花は兄が迷っているうちに、もう一度二人の膠着した戦いを見て、ツリーセに勝ってほしかった。


 だから、「兄さんは何か考えがあるよね?やはりツリーセに伝えた方がいいじゃない?」と言った。


 井上凜は少しの間に目を閉じて、考えていた。そして、間もなく決めた。


「そうだね。助言する。」


 ランディは「どうぞ」というように両手を二人の方へ伸ばした。


 井上凜は深呼吸して、大声で言った。


「ツリーセ!」ツリーセは井上凜の呼びに返事してないが、視線が一瞬飛ばした。


 リンディは隙を見つけたかのように、すぐ攻撃の速度を上げた。しかし、ほとんどツリーセに防がれた。防がれていない攻撃もかすり傷の程度に留まった。


 井上凜はツリーセに気が散らないように大事なことだけ伝えた。


「もっと地形と環境を利用して!君ならできるだろう!」


 はぁ……はぁ……二人も疲れていて、少し息が乱れていた。


 だが、ツリーセは井上凜の話を聞いて、仕切り直したように顔に微笑みが出ていた。


「……笑うんじゃね!」とリンディはまた爪を振った。


 しかし、ツリーセは後ろに下がった。二人が初めてある一方が距離を取った。


 は!勝手に防戦に入ったな!とリンディはこう考えて、さらにツリーセの方へ行った。


 リンディは当然井上凜の話が聞こえる。だが、井上凜の話は曖昧で、ほぼアドバイスに称しないレベルだった。具体的な指示がないという理由で、リンディは聞こえないふりをしていた。


 普通なら、これは役に立たない助言だった。


 だが、リンディは一つ誤算していた。それは井上星の存在だ。


 『地形を利用し、体力を消耗させるんだ!周りの木で小回りで、鬼ごっこだ!』

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