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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
落ち着き
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27

 三人が辿り着いたところ、井上智澄と井上佳月二人が地面に伏せた様子で倒れている。二人も身体が傷だらけでボロボロ、見られないほどひどい様子だった。


 三人は今すぐでも二人のところに駆けつけたかったが、二体の生物がいて、立ち留まった。


 爪、牙、ボサボサの髪型……背中の外見がほとんど変わらない。強いていえば、若干髪の質が違うところと蒼白な皮膚が僅か血色に戻ったところくらいだった。


 二体の吸血鬼がそれぞれ二人の近くにしゃがんでいて、食事がし終わったかのようにゆっくりと立ち上がった。


 井上凜にはわかる。吸血鬼はある程度の血の量を食べたら、理性を取り戻す。そして今、吸血鬼の動きは理性を取り戻した雰囲気だった。


 だから、井上桃花が二体の吸血鬼に意識して攻撃しそうなところに、井上凜が手を横に伸ばして、「待って!」と自分の妹を阻止した。


「兄さん!」自分が阻止されて、少し意味がわからない井上桃花だった。


 井上桃花はまだわからない。吸血鬼が理性を取り戻せることを。


「焦らないほうがいい……」


「でも……!」


 井上桃花の焦り方で、井上凜が疑問を感じて次の言葉を言った。


「桃ちゃん。吸血鬼の特性について、どこまで知っている?」吸血鬼を気絶させる方法がわかるということは、フロンの説明を聞いたはずだと井上凜が推測していた。


「それは……自分の血を与えれば危ないくらいで……」


 フロンが井上桃花に説明したことが“「普通なら、道具を使うか、動物の血や自分の血を与えるかのどちらなんですが……四体がいれば、自分の血を与えるのは少し危険かもしれません。」”ということだった。


 状況を合わせて見ると、この説明の意味が広く捉える。


 それは“吸血鬼に吸われたら、良くないことが起こる”という意味だ。


 実際、井上桃花が分かる範囲では、“吸血鬼が強くなってしまって”、よくない状況になってしまったのだ。


 そのため、井上桃花は不安でしかない。


「なるほど……ここは兄さんに任せて。」井上凜は安心させるために、自信な微笑みをかけた。ランディと交流したおかげで、井上凜はこう言えた。


「兄さん……わかった。」と兄の自信な笑顔を見て、井上桃花は言って頷いた。


「でも、兄さん!」


「何?」


「無理しないでね……」


「ははっ……わかってる。」


 井上桃花は見逃さなかった。井上凜のその自信な微笑みに少し不安を感じたのだった。なぜなら、彼の自信な笑顔に眉が若干“ハ”の字になっていた。


 そして、井上桃花の予感が的中した。


 実は、今「先入観を持たない方がいい」とフロンの言葉がずっと井上凜の心に響いて、不安を感じている。


 確かにランディと交流したおかげで、井上凜が任せてと言えた。しかし、それはあくまでランディ個体の例だ。


 この二体の吸血鬼はもう交流できるのか、ランディと関係があるのか、またランディの名前を出していいのか、こういう思考がずっと井上凜の脳内で巡っている。


「あ!ちなみに、フロンさん。吸血鬼の理性の説明は頼みました。桃ちゃんがわかるように説明してください。」


「あ……はい。わかりました。」とフロンが返事した。


「では、桃花さん――」とフロンが軽く説明し始めた。


「ツリーセさん。」と井上凜はツリーセを呼んだ。


「ランディの時と同じように。」


「はい。リンさん。」


 井上凜とツリーセが顔を合わせた後、心が通じているように前に出ていた。井上桃花は説明を聞きながら、二人の後ろについていた。


「あの……吸血鬼さん。」と井上凜が二体の吸血鬼に話しかけた。


 最初二体の吸血鬼は反応がなかったから、もしかしてダメなのかと考え始めたところに、井上凜のほうに向いた。


 二体の吸血鬼は顔付きがかなり似ているが、髪質と皮膚の感じが違う。背中を見ているだけだと、あまり差が出ないと感じてしまうが、正面を見ると雰囲気がかなり違っていた。


 また、二体の吸血鬼は凶暴化になった虚ろな目ではなく、それぞれ青色と水色に輝いている。


 ランディは緑色……井上凜はこれを見て、やはり違う吸血鬼だと確信した。


 二体の吸血鬼は井上凜とツリーセ二人に興味なさげに一目を見た後、「誰だ?」と微妙な顔をして頭を傾いた。


「あの――」井上凜はもう一度話しかけるつもりだったが、二体の吸血鬼は井上桃花のほうに視線を移した。


 井上桃花を見た後、一体の吸血鬼はすぐ「ああ」と思いついたように、片手が拳で、片手がひらの形でドンと両手を軽く叩いた。


「あの逃げた嬢ちゃんじゃないか。助っ人を呼んでここに帰ったのか。」と青色の吸血鬼が言った。


 助っ人……いや、そんなことより……井上桃花は吸血鬼が喋ったことに驚いた。フロンが吸血鬼は理性を取り戻せることに説明したとはいえ、直接聞かないと、やはりどこかに信じられない自分がいた。


 無理もない。井上桃花が経験した感じと井上凜の経験した感じ、かなり差があるから。


「なんだ?やはり吸血鬼狩りじゃねえか。ほら、やっぱり殺すべきだったよ。」と水色の吸血鬼が言った。


 吸血鬼狩り……井上凜がこの言葉を聞いた覚えがある。


 殺す……と井上桃花は口を挟むつもりだったが、ツリーセはここで彼女の肩に手を乗せて、安心させる。


「待ってください。私たちは吸血鬼狩りなんかじゃありません!」


 ここで吸血鬼はやっと井上凜とツリーセを正視し始めた。


「信じるとでも?」と青色の吸血鬼が言った。


「“私たち”って言ったな?つまりお前たちは仲間だろう?」と水色の吸血鬼が指で指しながら言った。


「ええ、仲間です。もっと正しく言えば、家族です。今少しわけがあって、ここにいました。でも、吸血鬼狩りではありません。信じてください。」


「証拠は?」と青色の吸血鬼が言った。


「では、私たちの身を見てください。」


「身?」


 吸血鬼たちは三人の全身を見ていた。水色の吸血鬼はツリーセを持っている蔓に注目している。


「蔓を持っているな。俺らを縛ってアイツに差し出すつもりだろう?」と水色の吸血鬼が言った。


 アイツ……井上凜はこれが気になっているが、聞いても答えてくれない感じが強かったため、弁明を優先した。


「この蔓は道標を作るつもりで持っているだけです。私たちは森に迷いやすいので。」


「信じるか――」と水色の吸血鬼が怒る様子で言ったが、青色の吸血鬼がここで水色の吸血鬼を阻止して、次の言葉を言った。


「確かに森の中で道標のようなものを見た覚えがある……でもあれは君が作ったものじゃないよな?」


「もし蔓で作ったものなら……」


「違う。枝とか石で作ったやつだ。こいつらのために偵察する時、少し見ていたんだ。」と青色の吸血鬼が水色の吸血鬼と倒れている吸血鬼を指して言った。


「それは……」父さんたちが作ったやつだろう……と井上凜はこう推測したが、確信できない。


 その躊躇いを感じた井上桃花がここで口を挟んだ。


「あれは私と父さんと母さんが一緒に作ったの!あなたが見たやつは。」


「ふーん。」


「じゃあ、吸血鬼狩りじゃないなら、どうしてここにいるんだ?まさか遠足でもいうつもりか?」と水色の吸血鬼が言った。


「いや、遠足ではありませんが、あまり言える理由ではありません。」


「はぁ?何でだ?」


「信じてくれないと思うからです。」と井上凜がフロンのことを考えて、こう言った。


「言わないとわかねんだろう?むしろ怪しすぎる!」と水色の吸血鬼が不快な感じで言った。


 水色の吸血鬼に言われても、井上凜はこの部分を伏せるべきだと思っている。


 適当な嘘をついて、いずれ真実がばれたら不信感を抱いてしまう。かといって、今の相手は本当の事実を言っても、信じてくれるだろうか?


 決めつけは良くないと井上凜が思っていたが、この事実がおかしすぎて、井上凜自身も信じられないほどだった。


 もしフロンのことを言ったら、相手が自分のことをからかっていると思われる未来しか思いつかなかった。


「……とにかく、あなたたちに危害を加えるつもりがありません。私と彼はただ父さんと母さんを助けに来ただけです。」と井上凜がツリーセを指しながら言った。


「ふん。わかった。ならば、この二人を返せればいいだろうな?」と青色の吸血鬼が言った。水色の吸血鬼は少し驚いた様子で青色の吸血鬼を見た。


青色の吸血鬼は何の反応も示していなかったが、水色の吸血鬼は突然ハッとなった様子で静かになった。


 井上凜は恐らく何かを企んでいるのかとわかっていたが、どう暴いた方がいいか考えている。


 ここで、ツリーセが言った。


 「二人とも、ランディのことがわかっていますね?」


 二体の吸血鬼は明らかに動揺していた。

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