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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
落ち着き
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26

 やっと吸血鬼を気絶させた三人はしばらくはぁはぁと息を整える。


 気絶した吸血鬼を見て、井上凜は起きても攻撃しにこないよう戦闘中に地面に捨てた蔓で吸血鬼を縛った。


「はあ……一体何が起きたんだろう。」と井上凜が吸血鬼を縛りながら言った。


「色々起きてしまったよ……凶暴化になった四体の吸血鬼と出会ってしまったの。」


「なるほど。なんか状況が想像できるような、できないような……とりあえず、父さんと母さんが危ないのもこれが原因だね。」


「はい。」


「……よし。これで大丈夫だろう。」と井上凜は吸血鬼を縛り終わった。


 井上凜が吸血鬼を縛り終わったところに、井上桃花はツリーセ(井上星)のことを一瞥して、戦闘中によぎった疑問を投げた。


「ちなみに、この子は弟君……だよね?兄さんといたから、そう思っちゃったけど、なんか雰囲気が……」


 井上桃花は戦闘中にツリーセ(井上星)が何かを伝える時、ずっと敬語を使っていることに覚えている。仲がいい家族にとって、また事情がわからない井上桃花にとって、ツリーセの言葉遣いが不自然に思える。


 この疑問を聞いた井上凜はまだこちらの事情を説明していなかったことに思い出した。


「ああ、そうだよ。この子は君が大好きな弟君だよ。」少し井上星をいじった井上凜。


「じゃあ……なんで敬語?」そして、否定しなかった井上桃花。


 『兄ちゃん!悪ノリ!』当然、今井上凜には井上星の話が聞こえない。


「まあ……事情を全部話すと時間が長くなるから。簡単な説明をする。少しわけがあって、今は星くんと思わないほうがいい。そして……ツリーセさん!」と井上凜はツリーセの名前を呼んだ。


 この名前を呼ぶ行動が二つの意味を含めている。井上桃花に意識させるという意味とツリーセに簡単な自己紹介をしてくださいという意味だ。


 井上凜は念のため、ツリーセに「自己紹介して」という意味の動きもしていた。


 井上凜の気持ちを汲み取ったツリーセは簡単な自己紹介をした。


「ツリーセと申します。よろしくお願いします。」


「なるほど。これは……ロールプレイング状態、かな?」かなり鋭い井上桃花である。


 井上凜はこの疑問に頷いて、肯定の意味を示した。


「では、話はここまでにしよう。父さんと母さんが危ないだろう?」


「そうだね。では、よろしくお願いしますね。ツリーセちゃん!」


「ちゃん……僕は男です。」


「わかっていますよ。ツリーセちゃん!」


 井上桃花の強引な態度にズキィとツリーセの心が少しギュッとした。


 『おい!姉ちゃんに調子に乗らせるな!それと、ギュッとしないでよ!』自分の姉に恋愛感情を感じたくない井上星である。気持ち悪いから。


「でも……」とツリーセが井上星に言っていたが、この言葉は自分に言っていると井上桃花が勘違いしていた。


 うーん……これはこれでありだなぁと思ったけど、やはり弟君じゃないなぁ。と少しひと味が違うと思っている井上桃花だった。


「では、行こうか。フロンさん。さっきも言いました。事情の説明を頼み――」と井上凜が喋っている途中、フロンに口を挟んだ。


「凜様……いや、その……三人とも。実に申し上げにくいですが……あなたたちに一つお知らせしなければいけません。」フロンの深刻な声色に三人が静かになった。どの人も嫌な予感がした。(ツリーセはフロンの声が聞こえないが、井上星によって伝えられる。)


「何でしょうか?」


「あなたたちが戦っている間、その……二人の声が聞こえなくなりました。今は……もう反応がありません。」


 二人の声は?と聞かなくても誰もわかる。自分の父と母のことだと。


 三人は鳥肌が立っている。嫌な想像をしている人は井上凜だけじゃない。


「つまり……?」と井上凜がなるべく詳細を確認したい。


「詳細がわかりませんが、経験上ではお二人とも……とても深刻な状況になったかもしれません。」その経験はフロンがサブGMとしてやっている経験だった。


 反応がなくなることは大体いいことではなかった。そして、“大体じゃない方“はもっと悪いほうだった。


 つまり、反応がなくなると、「悪いこと」と「とても悪いこと」の二つしか起こらなかったのだ。


「やだ……もしかして私が離れたせいで……」と自分が離れたことに原因だと直結した井上桃花だった。


「違う!桃ちゃん。助けを求めるのは正しいと思う!」


「でも……」自分がもっと頑張れば――井上桃花は自分を追い詰めようとした。


「とりあえず、話は後にしよう!桃ちゃん、早く道の案内を。私たちが父さんと母さんを助ける!」どうにか自分を追い込まないよう、井上凜は目的のことを思い出させた。井上凜は話を逸らしたのだ。


「あ……うん!」兄の言葉を聞いて、井上桃花は自分の目的を思い出した。すぐ行動に移した。


 井上桃花はこっちだと言って、二人に案内している。井上凜とツリーセは残りの蔓をまとめて持って行った。


 三人が走りながら、もう少し交流していた。


 主に井上凜とフロンが喋っている。


「フロンさん。一つ聞いていいでしょうか?」


「はい。何でしょう。」


「さっきの話、もっと大事なことがあるでしょう?あの話を伝えるだけなら、こちらは混乱するしかありません。だから……」


 フロンの話は嫌な想像を膨らませるだけの話だった。つまり、推測上の話だ。話す必要性が疑われる。


 混乱を起こして悪い企みを考えているのか、あるいは伝えなければいけない話はこれじゃないのか、これは井上凜が思い付いたことだ。


 実際、フロンは確かに混乱を起こすつもりがなかった。


「すみません。混乱を起こすつもりはありません。ただし、私には伝えることしかできませんので、この方法しかありません……」


「わかりました。」原因を話すつもりがないのか……と少し不信感を抱いた井上凜だったが、フロンはすぐ原因を喋った。


「そして、なんで話すというと、二つの意味があります。」


 ここで井上凜はフロンが説明下手マンのことを思い出した。


「一つは心の準備をしてくださいの意味です。もう一つは恐らくまだ死んでいないという意味です。」


 ここで三人が重視していることが分かれた。


 心の準備……という言葉に井上桃花と井上星は心が少し沈んでいた。


 死んでいない……という言葉に、井上凜はあることに思い出した。


「そういえば、この世界に死んでも存在が消えないと言いましたね。」


「はい。もちろんその意味もありますが、もっと大事な意味があります。二人は『今はまだ死んでいません』。」


 井上凜は何となくフロンが伝いたいことがわかってきた。


「そう言える根拠は何でしょうか?」


「どんな死に方でも、死んだ人は私のところに伝送されます。そして、二人は今のところ、私のところに伝送されていません。」


 ここまで聞いて、井上凜はやっとホッとした。


「つまり、伝えなければいけないことは『伝送』のことですね。」


「はい。そうです。」


「……どういうこと?」両親のことがいっぱいで、あまり話を聞いていない井上桃花が言った。


「つまり、父さんと母さんがまだ助けられるという意味だ。」


「……本当に?」


「いや……本当はわからないが、私たちが助けなきゃだから。いいほうに考えよう。」


「……それもそうだね。」


 そして、三人が辿り着いた。

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