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父の名前を聞いていた井上凜はすぐフロンに話しかけた。
「フロンさん!」
「凜様?」まさか突然井上凜の声が聞こえてしまって、フロンが驚いた。
だが驚くのは束の間、フロンはすぐ原因がわかった。
「凜様はもう近くにいましたか?」
「はい。恐らくそうだと思います。」
「なるほど。ちなみに、星様は?」
「いますが、まだロールプレイング状態です。」
「わかりました。」
フロンが確認し終わった後、今回代わりに井上凜が質問した。
「フロンの声が聞こえたから、近くにいると思いましたが、今誰も見つかりません。三人はどこにいますか?」と井上凜が言ったが、彼は早く家族に会いたいから、少し焦ってしまって、フロンが詳細の位置が把握できないことに忘れてしまった。
加えて、フロンが追い詰めたかのように次の言葉を言った。
「私も詳細の位置がわかりません。しかし、声が聞こえるということは全員近くにいるに違いありません。今三人が簡単に抜けることができないと思います。凜様から探してほしい。そして、見つかったらすぐ三人に助けてください!」
助けるという言葉に、井上凜と井上星は嫌な予感がした。
実際、三人はかなり危険な状態に陥ってしまった。
井上智澄はずっと一対二の戦闘を続いて、全身が傷だらけ、ボロボロになったのだ。ちゃんと人数の不利を受け答えた当然の結果だった。むしろボロボロになった姿はずっと二体の吸血鬼を牽制することによく頑張っていた証拠だった。
しかし、井上智澄はまだマシな方だ。
一番危険なのは、井上桃花と井上佳月二人である。
二対一の局面を作ったが、三体目の吸血鬼になかなか気絶させることができなかった。
その原因は、三体目の吸血鬼――井上桃花と井上佳月二人が対峙した吸血鬼は、他の吸血鬼と比べてかなり違ったのだ。
三体目の吸血鬼は動きの速さと器用さが他の吸血鬼より強かった。でも、これだけでは二人が危機に陥ることはない。むしろ二人は一度吸血鬼を追い詰めたところだった。しかし、気絶させることができなかった。
三体目の吸血鬼が一番違った部分は、戦闘中に厄介な行動――「飛行」ができることだ。これは井上桃花と井上智澄が戦っていたのと一番の区別だった。
「シャー!」と三体目の吸血鬼は叫びながら、身体ごとにマントをめぐった。吸血鬼が黒い影となって、シュッと二人の後ろに現れた。まるで最初の時井上佳月を掴もうとした状況だった。
ただし、今回伸ばした手が掴もうとした人間が井上桃花に変わったのだ。
あまりの速さに井上桃花は反応できず、吸血鬼に掴まれた。
「うぐ……!」井上桃花は喉が吸血鬼に押さえつけられて、声が出せなかった。
吸血鬼はまるで勝ったかのように不敵な笑みをして、もう片方の手の爪で井上桃花の首筋を狙っていた。
吸血鬼が爪で円を描くように井上桃花の首筋に刺さるところで、この危機一髪の状況に井上佳月はかなり強引なやり方で二人を分断させた。
井上佳月は突進し、横向きの感じで二人の間に入り込んだ。次の動きは吸血鬼の顔をぶん殴って、両手で吸血鬼の手を引き離した。
「私も……一人の母さんなの!子ども四人の!だから、娘に手を出させない!」井上佳月は成功に吸血鬼を引き離した。
引き離した後、すぐ娘を引っ張って、一緒に吸血鬼と距離を取った。
「コホ、コホ……」井上桃花は解放されて、何回か咳き込んだ。彼女は礼を言いたかったが、話す時間がなく、引き離された吸血鬼はすぐ次の攻撃行動に移った。
吸血鬼は井上佳月に下から掬い上げるような形で片手を動かして、爪で攻撃した。井上佳月は危なげな感じで後ろに下がって避けたが、態勢が崩れて次の攻撃が避けられなかった。吸血鬼の攻撃が一回ではない。
井上佳月は態勢が崩れた途端、吸血鬼がすぐ近づいて、もう片方の爪でさっきと同じような動きで攻撃した。
井上佳月は側腹部から胸へと斜めの形で爪に引き裂かれ、痺れるような激痛が身体中に走った。
「ぐ……!」
井上佳月が痛くてしょうがないが、吸血鬼は攻撃を止めない。たとえどんなに痛くても、動かなければ危険だ。
井上佳月は痛みを耐えて、吸血鬼の動きに注目した。
吸血鬼の目標は自分だ。井上佳月の想定通り、吸血鬼は井上佳月のことを狙っている。
右爪、左爪、突進して跳躍、空中で飛行に変わり、横に潜る。横に来ると攻撃に移す。また爪の連続攻撃を放つ……
井上佳月は集中して避けようとしたが、一連の動きが早くて、最初の二つの攻撃だけ避けた。
井上佳月の身に打撲の傷と切り傷がどんどん増えている。
井上桃花は助けようとしたが、なかなか動けなかった。なぜなら、二人の動きが合わせて戦わないと、状況が悪化する。このことに井上桃花はすでに痛感した。
井上桃花は井上佳月のところに駆けつけた時、早く吸血鬼を解決しようとして、二人で一緒に井上智澄を助けると思った。
もちろん井上桃花は井上佳月に対処法のことを教えたが、実行できなかった。
井上桃花は一つが考えていなかった。
この三体目の吸血鬼は井上佳月の血を食べてしまった。これが彼女の誤算だった。
三体目の吸血鬼が食べた血は井上佳月が無理やり井上智澄を助けた時に傷つけられた血だった。
井上桃花は気付けられなかった。あの時、彼女はすでにフロンの説明と対峙している吸血鬼のことで頭がいっぱいで、当然乱戦の状況に気を配る余裕なんてなかった。
そして、情報提供の大切さも意識しなかった井上桃花は、簡単に手を出してしまった。
その結果は、吸血鬼に返り討ちにされてしまった。
私のせいだ……
責任と罪悪感を感じた井上桃花は当然諦めていない。
今もこの状況の打開策を考えている。
すると――
「うあぁ!離せ!」井上智澄は二体の吸血鬼に掴まれて、拘束されていた。
井上桃花は当然見ていた。母と父のどちらも良くない状況で、彼女はどうすればいいかわからなくなってきた。
「私のことはいい!先に父さんを助けて!」と井上佳月は井上桃花にそう言った。
井上桃花はハッとなって頷き、早速井上智澄の方へ行った。
「智澄さん!大丈夫ですか?」とフロンが言った。
「大丈夫じゃないよ!」と井上桃花は少し焦っていて、代わりに返事した。また、井上智澄に取りついた吸血鬼を払った。
しかし、二体の吸血鬼も少し井上智澄の血を食べてしまった。動きが少し違っていた。
嘘……まさか――と井上桃花に考える隙間も与えなく、二体の吸血鬼も飛行できた。
「……桃は何でここに?」
「そんなのもういい!早く考えないと……」この状況はどうすれば――
「凜様?」
――フロンの声が井上桃花の耳に響いていた。
「凜様はもう近くにいましたか?」
凜様……兄さん!と井上桃花は思わず周りを観察している。だが、人影が見えない。
「なるほど。ちなみに、星様は?」
星様……つまり弟君も……
「わかりました。」
「――凜様から探してほしい。そして、見つかったらすぐ三人に助けてください!」
井上桃花はこの話を聞いて、決めた。
「父さん!」
井上智澄にとって、娘はなにを考えていたか簡単にわかっていた。
「……はは。もう阻止しないさ。父さんはずっとここでこいつらを止める。君は逃げてもいいぞ。」
「逃げない!連れてくる!」こう言った瞬間、井上桃花は早速行動した。
「まったく……」
二体の吸血鬼は井上桃花を狙って、突っかかろうとしたところ、井上智澄はプルプルと震えている身体を挺して、二体の吸血鬼を止めるつもりだった。
一体の吸血鬼は止められたが、もう一体は態勢を変えて、飛んでいた。さすがに飛んでいた吸血鬼に止める術がなかった。
あの一体は井上桃花の後ろについている。
井上桃花は後ろに気を付けながら、走っていた。
「フロンさん!兄さんと弟君をどう探せばいい?私も探す!」
「え……あ!わかりました!」
同時刻、井上凜とツリーセも走っていた。井上凜はツリーセに捜索を任せたが、なかなか見つけられなかったから、偶然にも井上桃花と同じ時間で同じ質問をした。
「フロンさん!どう探せばいいでしょうか?それに、フロンさんの声が聞こえるのに、判定のメッセージが出てこないですが……二つの範囲が違いますか?」
「え、ええと、はい!範囲が違うと思います。普通なら、判定のメッセージが広いですが、戦闘中になると声の方が――」フロンの話が終わってないが、井上桃花がここで言った。
「判定のメッセージ?なるほど!判定してということですね!『判定を申請する』!」井上桃花の前にメッセージが出てきた。
「え?いや、あの話はそういう意味ではありません。できればもっと妥当な方法で探してください!」
「あ?どういう意味ですか?妥当な方法があれば、言ってください!急いでいます!フロンさん!」と井上凜が言った。
「いや、その話は凜様ではなくて――」
「あ、判定のメッセージが……」そして、井上凜の前に判定のメッセージが出てきた。
井上凜:
「『仲間の合流』の判定に難易度がある。仲間の合流の難易度:≧4。
1:ファンブル。
10:クリティカル。」
井上桃花:
「『仲間の合流』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。
『隠匿』スキルを使用しますか?出目の結果に+2の修正値がかかる。
1:ファンブル。
2~5:部分的に成功
6~9:成功。
10:クリティカル。
その他:その他。」
難易度が4、ならば……むやみに探すより!と井上凜はダイスを振った。
同時に、井上桃花もダイスを振った。
井上凜:6 成功
井上桃花:6(+2)=8 成功
「あの、実はさっきの話が桃花さんに話しています!そして、桃花さんの話は凜様に話しています!だから――ああ、もう判定を……」
「え?どういうこと?兄さんも喋っていたの?」
「フロンさん。もし桃ちゃんと話をしているなら、先に言ってください!」
「つまり、私が誤解しちゃったの?」「誤解しますから!」
そして、走りながら話をしているうちに、井上桃花、井上凜、ツリーセ三人が合流した。




