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六人家族が異世界に  作者: ヨガ
二人のシナリオ
12/109

11

 「魔法の扉?」と井上星が疑問を感じて、首をかしげた。


「ああ。これがあるということは、隠し空間があるって。」


 隠し空間という言葉を聞いて、井上星は目がキラっと輝いた。


「隠れ部屋じゃん!」


「星くーん?」井上凜は横目で井上星のほうへ睨んでいた。


「行きたいとは言ってないよ!ちょっとロマンがあると思っただけ。」本心で言っている井上星だが、その隠しきれていない期待の表情が物を語っている。井上星は興味がある。


 井上星の顔を見て、井上凜は吐息をもらした。


「はあ……ここは最後にしよう。」


「……いいの?」


「君一人にさせたくないし、開け方もわからないから。」


 魔法の扉は仕組みがあるという情報がわかった井上凜は、簡単に開けないと思っている。実際、二人はどうすれば魔法の扉を開けるかわからない。


「そうか。じゃあ、フロンおじさんに聞こう。何か見当がつくかも!」と井上星が言った。


 井上凜は一瞬反対したかったが、すぐ「まあ、聞くだけなら」と頷いて、言った。


「フロンおじさん!」と、何秒間静かになった。返事が得られなかった。


 井上星が疑問をもって、井上凜と顔を合わせた。返事を得なかった状況に、井上凜はわずかに眉にしわを寄せながら、試しにフロンを呼んでいた。


「フロンさん!」と井上凜が呼んだが、同じく返事が得られなかった。


「どういうことだ?」


「フロンさんがいないのか?」


 困惑している二人だった。


「でも、フロンおじさんはさっきまで、まだ話しかけてきただろう?」と井上星が兄に確認した。


「ああ。この遺跡に入った時も声が聞こえていた。」二人はフロンに構う余裕がなかったが、フロンの声がちゃんと聞こえていた。


「じゃあ……怒っていて、サポート役をやめた?」


「どうだろう……」このことは井上凜も言い切れない。


「そうだとしたら、謝ろう!兄ちゃん。」


「ああ!」


 ごめんなさいと二人は空気に謝った。当然、返事が得られなかった。


「相当怒っているのか?」


「いや、たぶん今はいないだろう。」


「そうか。どこに行ったのかな……」


「いないなら仕方ない。ここにはまだ上の階があるし、まずそこを調べよう。扉はいったん置いておこう。そして……フロンさんが戻ったら謝ろう。」

「うん。」


 二人はしばらく推測することをやめて、上の階へ行こうとした。


 一方、時は少し遡って、二人に無視され続けたフロンは、実は三人に助けを求めていた。


「お三方……」二人の喧嘩に少々手を焼いているフロンだった。フロンは早速三人に話しかけた。


「え?フロンさん。早いですね。」と井上智澄がフロンの声を聞いて言った。


「サポートに集中してほしいと言ったはずですが……」と井上佳月が言った。


「何かありました?」と井上桃花が言った。


 井上桃花、井上智澄、井上佳月三人はダイスの判定によって、すでに湖のところに合流できた。


 大成功を出した井上桃花は自らの豪運によって、井上智澄が作った道標を見つけた。


 そして、偶然にも井上佳月は後から井上桃花と合流し、二人は無事に道標の方向に進んで、井上智澄と合流した。


「はい!すみません。サポートに集中するつもりですが……実は少々申し上げにくい状況なんです。今二人が喧嘩していまして――」フロンは二人が喧嘩していた事情を三人に詳しく話した。


 真っ先に反応したのは、井上桃花だった。


「いやいやいや!フロンさん!そこはなんとかして!サポートの意味がなくなるじゃん!」


「そうですね。今私たちに言っても、何もできませんし……」と一手が顎にあてて、困った顔になった井上佳月だった。


「その……そういう意味ではなくて、実は喧嘩を落ち着かせるためのアドバイスがほしくて、お三方に話しましたが……」少し気まずいと思っているフロンだった。


 これを聞いて、少し呆れた顔をした井上桃花は――


「フロンさんは友達と喧嘩したことがないの?」と言った。


「喧嘩したことがないというか……私、喧嘩したくありませんので、ずっと心を落ち着いてから話し合おうという感じです。」


「ああ……そういうタイプですか。」


 今井上桃花にとって、フロンは少し頼りないおじさんだと思っている。


「はい。」


「わかりました。とりあえず、二人のことも心配していますし、喧嘩する時、どうすればいいかうちの方針を教えましょう。」


「ありがとうございます!佳月様!」


「教えたら、早く二人の方へ助けなさいね。」


「はい!」と、今三人のアドバイスを受けているフロンだった。


 そして、今、井上凜と井上星二人が遺跡の二階にいる。魔法の扉を後にして、三階の方へ行こうとした。


 二人は細心の注意を払いつつ、三階への階段のところに行った。井上凜は階段の前に止まって、井上星にも止めてと、踏み切りの棒みたいに腕を横に伸ばした。


「どうした?」


「さっき考えなしに階段を登ったが、少し気をつけた方がいい。罠があるかもしれない。」


 罠という言葉に、井上星はふと思い出した。


「あ、そういえば、兄ちゃん。一階のあの判定、兄ちゃんはどう思う?」


「どう思うって……精神攻撃だろう?」


 兄の話に井上星は少し自慢な顔で自分の推測を言った。


「あのね、僕は思うんだ。もしかして、あれは罠だって!」


「罠……」


「そう!『一回のみ』の罠が触発されて、攻撃された。だから僕たちは『防衛』しなければならなかったのだ。」


「なるほど。確かにありえるな。」


「……兄ちゃんの言い方だと、他の可能性もあるのか?」井上凜が少し平淡な反応に少々シュンとした井上星だった。


「なくはないが……君の推測が正しいと思うよ。」


「そう?」


「そう!それに、その前提で考えるなら、こちらに罠があることも充分ありえる。」


「そうだね。」


「じゃあ、気をつけて探しよう。判定は最後でする。判定に頼りすぎるのは良くないと思う。」


「わかった。」


 二人は床から壁の順番で罠を探した。定番の叩く音と床の隙間があるかどうかを二人が観察していた。


「兄ちゃんはどう?」


「何もないと思うが、探す方法が正しいかわからない。」


「そうね。じゃあ、判定する?」


「ああ、判定しよう。」


 二人は判定を申請し、メッセージが出てきた。今回のメッセージは二人にとって見覚えがある。


 井上凜:

「『環境の探索』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

 1:ファンブル。

 2~5:部分的に成功。

 6~9:成功。

 10:クリティカル。

 その他:その他。」


 井上星

「『環境の探索』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

『捜索』スキルを使用することによって、出目の結果が+2の修正値がかかる。使用しますか?

 はい・いいえ。

 1:ファンブル。

 2~5:部分的に成功。

 6~9:成功。

 10:クリティカル。

 その他:その他。」


「兄ちゃん!内容が……」


「ああ。今回は難易度ではないな?」井上凜は井上星に確認している。井上星は頷いた。


「つまり、“何か危険がある”と思った方がいいだろうか。」このメッセージの書き方に不安を感じる井上凜である。


「あの、部分的に成功って……」


「うーん。わからない。どうしても成功したほうがいい状況なのか、さっき私たちの行動の影響なのか……基準がよくわからない。」


「行動の影響だとしたら、相応な行動を取っていたから、少し補正をくれたってことだね?」


「うん。TRPGに慣れていない初心者によくやる処置だね。」


「ねえ……思ったんだが、この判定はフロンおじさんが処理するじゃなかったら、誰が処理しているの?」


「わからないね。」井上凜はただ頭を横に振って、わからないと言った。


「判定の情報……本当に信じていいのかな?」


「さあ。私も全てを信じるつもりがない。ただ半信半疑の気持ちで考えている。」


「そうか。」


「どのみち、判定の恩恵を受けたのは間違いない。過信は良くないが、考えすぎても良くない。使えるものは使えよう。」


「わかった。」と井上星が頷いた。


「では、判定しよう。」


『環境の探索』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

 井上星の結果:4(+2)=6 成功。


 『環境の探索』の判定に、出目の結果と状況によって変わります。

 井上凜の結果:4 部分的に成功。


「スキルを使ってやっとギリギリ成功かよ。」


「まあ……どんなにギリギリでも成功に変わりがない。私は部分的に成功だし。」


「兄ちゃん……」二人はお互いのことを同情な目で見ていた。


「とにかく、どんな情報があるか見てみよう。」


「うん……あれ、情報が……ない。」


 二人は結果のメッセージを消したが、その結果の下にあるはずの情報がなかった。代わりに、二人の目に映った景色が変わった。


次回の更新は二日後です!今週末は遊びに行くから!

挿絵(By みてみん)

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