(3)
プシュッ、プシュッ、プシュッ
四面八方ではないが、親玉であるスミグラシは連続のトゲ攻撃を少年に向かって発射した。今まで散々スミグラシのことを解決してきた神官見習いの少年にとって、予備動作くらい見破れる。
ドドドとトゲが臨時の盾に刺さって、腕が若干衝撃によって痺れを感じた。だが痛みと比べて、腕が痺れるくらいはなんぼの勢いで、少年はダッシュして突き進む。
「!」
スミグラシは少年の気配を察知したようで、突き進む途端、元々発射するようになった前置きの予備動作が一気に止まって、少年が振りかかってくるこん棒を横に避けた。
しかし、「はんぁ!」まるでこの動きを待っていたかのように、少年は動きを予測して、縦振りのこん棒が空ぶった瞬間、すぐ腕を逆の方向に転換し、払い上げる。
こん棒の軌跡がVの字に形成した。スミグラシはこの動きに対応できない。するとパチっと、黒い玉の一部が削られて、落ちていく。
パチ、パチャ、パツァー
そして、戦闘はもはやパターン化として、一回、二回、三回……親玉のスミグラシはどんどん削られていく。
ただし、この戦闘が一見簡単そうに見えるが、実はこれが少年の策略と戦闘技量によってのものだった。
臨機応変のこん棒術、そして、魔物にパターン化の行動を取らせること。
(一、二……ここだ!)ドドド。
トゲが盾に刺さって、少年はダッシュして突き進む。最初と同じように、前回とも同じように、スミグラシは突き進んでくる少年の気配を察知して、避けようと――両者が繰り返している。
これで無難に終わる――と、少年がそういう思いが浮かぶ途端、パターン化とした戦闘は突如に形勢が逆転した。
運命はいたずらをしにくるものだった。
「……っ?!」唸り声すらになっていない声を上げる少年は気付いていなかった。あるいは、経験則によっての判断が過ちを冒したと言うべきである。
親玉のスミグラシは、うようよとして蠢いている集合体。削られて、削られて……普通なら、残骸たちは黒靄と化して消える。
消えるのだが、さっきパターン化した戦闘で、少年に削られていた残骸は、ただ「落ちた」だけだ。
つまり、残骸はまだ「消えていない」……このことに意識した途端、正真正銘の四面八方から、プシュッと、体の所々に刺さった。
「うあ!」痛みに耐えられなくて、思わず声を上げて悶える。辛うじて頭部と心臓と要害になる部位を臨時の盾で防いだが……当たり前のことで、一本や二本のトゲに刺されるよりの感じと全然違う。
このままじゃまずい……
幸いなことに足の負傷はまだひどくない。少年はすぐ周りの状況から確認して、隅のほうにある一つの小さなスミグラシをぶっ飛ばしていた。少年は隅のところに隠れると判断した。
そして、ぶっ飛ばされたスミグラシは消えていた。このことが確認した後、少年はすぐ隅のところに目指しつつ、自分を狙ってきたトゲをどれも間一髪の感じで避けている。
残りのスミグラシは少年の足元を狙って、トゲが少年の後を追うようにきれいに足元のついたところに刺さった。
ちゃんと箱を援護体として応用して、少年は体を丸込めて、腰のところから、小さな包みを一つのスクロールを取り出した。
こんなの聞いてないよ!少年はこう思いつつ、「【治療】!お願い!」と取り出したスクロールを破って唱えた。
トゲが刺さったまま、傷の痛みが緩和された。腫れの膨らみも少し引いていた。
「く……もったいないけど……」少年は独り言をつぶやきながら、更に何を取り出そうとするところ――
プシュッ
スミグラシが発射したトゲは元々少年の方向に向かっているもののはずだが、「カン」という金属音と発したともに、トゲが壁に二回弾き返して――「ひっ!」少年の顔面――の隣に掠めた。
「嘘だろう?!」
ただ独り言を呟いただけなのだが、怒涛の攻撃は更に少年に向かってくる。
ドドドドド――もはや確認する余裕がなくなって、少年はさっさと包みの残ったものを取り出した。
一瓶のポーション。
「……飲みます!」背に腹は代えられない。命がなくなったら元も子もない。
少年はポーションを飲むと――世界が変わった。いや、正確に言うと、何もかもが、「遅くなっていた」




