第2話「であい」
「痛い……」
俺はバンソーコを貼ったおでこをさすりながら言った。
「どうしたんだ?それ」
俺に話しかけて来た男がいる。そして、声のする方を俺は振り向くでも、テンションがダダ下がった。
「あ、お前か…怜」
俺に話しかけて来たやつの名は御堂怜、幼い頃からの知り合いで要するに幼馴染ていうやつだ。
「だから、これなんだよ」
怜は自分のおでこを指さして言った。多分、俺のおでこのバンソーコの事をさしているのだろう。これは、今朝の多分新しい入居者のことだと思われるが…不覚にも裸を見てしまった。それで、石鹸かな?を投げられて気絶した。で、目が覚めると、
ごめんと書かれた紙とバンソーコがはってあった…以上。なのだが…言うのが面倒なので嘘をつくことにした。
「こけた」
「嘘つけ」
一瞬で見破られたのであった。
「なんだよ…」
「なんだよじゃねーよ、俺らどんなに付き合い長いと思ってんだ…俺のAS、読心に嘘を付けないことぐらいわかってんだろう…」
呆れ半分に言った。怜は知らないだろうがこいつはこの都市まがいの施設において別名<青空の閻魔、読心>と呼ばれていることを…。
「知ってるよ、前から…てか颯斗から聞いた…じゃあなくて読んでた」
「本当に?」
怜は頷いた。本当なのならば本当に怖い奴だ。
「うるせーよ、てか、聞きたくもないし聞こえたら痛いしだから音楽もならねぇヘットフォンつけてんだろうがよ…」
怜は付けているヘットフォンを触り強調した。
「それより、お前さ…なに主人公になってんだよ!!そんな、はかなげな女の子相手にラッキースケベとやらを発動させて…!きぃーー!!うらやましいなこいつ!!」
怜は俺と肩を組み右手でこめかみをぐりぐりとしてきた。痛かったけどこういう青春まがいなことは嫌いじゃなかったから、俺も怜も馬鹿笑いした。この楽しい時間に感謝をして。
*****
怜とはクラスが違うため下駄箱にて別れた。そして、今朝家を出るときにクルミ先生が忘れて言った寮の鍵の存在に気づき渡すために職員室に向かった。
「あ、クルミ先生~!!これ鍵!!忘れていましたっ!!!!」
俺が駆け寄ると同時に先生は体制を低く構えアンダーで俺のみぞを狙い殴られた。俺は貫通したのではないかと思うほどに感じられて一瞬だけ白めになってしまった。
「………いたい……何するんですか…クルミっ!!」
倒れ込んだ俺にへそ目掛けてけり込まれた。そして、壁に物凄い音を立ててぶつかった。さすがに、職員室からクルミ先生を止めようとする先生方も出てきたがもう遅い…こうなったクルミ先生はも止められない。それも、つかの間先生は俺のネクタイを引っ張り上げ俺を起こした。さすがにこの時の鬼瓦の様な顔した先生は怖い…。だからと言って竦むわけにもいかない…。俺はこの時、使えないバカの頭をフル回転させ結論を導き出した。
「なっなにを!!」
俺は、先生に思いっきり抱きついた。そして、俺が思う最大のイケメンボイスで先生の耳元でささやいた。
「先生…すみません…俺…どうしても先生の可愛い顔を見たくてつい…クルミ呼びされるの嫌いなのは分かります…ごめんなさい…」
抱きしめている先生の体温が上がるのが分かった。それに顔を覗いてみても顔を赤くしている。
「わっわかればいいです!と言うか颯斗君、ここ学校ですよ…先生が殴ったり蹴ったりしたのは悪かったです…ですから…離してくださいっ!!」
俺はさらに強く抱きしめた。先生の声も荒くなっていく。
「…いやですか?…俺は…先生…俺はまだ子供ですか?……」
まさに!!これがクルミ先生を止めるための戦術!!ここ数年クルミ先生と暮らしていてわかったことが二つある!!一つは極度の男性照れ症…そして!!二つ目は!!自分で言うのも恥ずかしいが先生は俺にぞっこん…怜のASでの保証付き…だから!!この二つを使うことで先生を照れ気絶させれる!!このまま落としきる!!
と、世界はそんなに甘くはなかった。
「やはり、あなたはゴミですね」
冷たい言葉の矢は俺の心を貫いた。そして、俺は声のした方を恐る恐る見てみる。
「お、お前は…」
「なんですかゴミ…いや、あなたは人ですからこちらのほうがいいですか…クズ」
「いや、一緒だから…」
そこには今朝不覚とは言え裸を見てしまった女の子がいた。
「早く、先生を離したらどうですか?クズゴミ」
「なんか合体しれるよ!!」
「だから、さっさと離したらどうですか…ゴミクズ覗きま」
「なんか増えてる!!てか、だれが覗きまだ!!」
「だから…」
「もういい!!」
俺はこれ以上汚名を増やさないためにも先生を離した。
「………颯斗君…するときはもっと優しくしてね…」
先生は女の子座りをして片手で口元を隠し照れを隠していたが声は溶けたような甘い声をしていた。俺は思わず息を飲んでしまった。
「冗談です」
その矢先、先生はまじめな顔に戻った。このドキドキを返せ。
「けだもの…」
「おいこら、聞き捨てならんぞ、もう俺のことをけだものよびか」
「はい」
その「はい」はとてもとても清々しいものだった。
「と、いうか…こいつ誰です?も、桃胡先生…新しい入居者てのは分かっているんですけど…」
クルミ先生と言いかけたことは墓場まで持っていこう。
「あ、あ~この子はね…転校生の…」
「南条望よろしくしたくないけどよろしくけだもの」
けだもので定着したんだ…普通に嫌だな…。
「よろしく、俺はけだものじゃなくて南橋颯斗よろしく!南条さん」
「別に、望でいい…け、けだもの…」
彼女は笑いをこらえながら言った。けだもののどこが面白いかはさっぱりだが…。
「颯斗君…こっちこっち…」
先生は小声で俺を呼んだ。
「なんですか?俺たちの巣が壊されるのどうするかですか」
俺は軽くチョップされた。ちょっと痛かった。だから「いて」と言ってしまった。
「違う!そうじゃなくて…無いこともないけど…そうじゃないてね…彼女、望ちゃんねこないだ、親に捨てられたばっかなのよ…だから優しくしてあげてね…」
「あ、うっす」
なんとなくは察してはいたけれどこう現実に突き付けられると、なんとも言い難い気持ちになる。
「じゃ、颯斗君、望ちゃんをクラスまでの送迎をよろしくね~」
「転校初日に先生なしで行けって…あんた鬼ですか!?」
「あぁん??」
鬼瓦再登場。
「望ちゃんごめんね!!後で追いつくから」
まぁこうなったのは俺がクルミ呼びして先生の時間を割いたのが悪いんだけど…まぁそれはそれとしておこう。
「よろしく…けだもの」
「おう」
話をしていたら嫌な奴だけど…こう見たら可愛いな案外…
「なにか、失礼なこと考えてなかったか?」
「べ、別に……行くぞ!」
でも、こんな奴でも急に親に捨てられて施設に入れられて大変だっただろうな…
「なー望さん混乱とかしてないの?今日にこんなとこ連れてこられて…」
「…さんも無くていいよけだもの…そうだね…そこまで混乱はしてないかな…」
「あ、そう…」
こう受け止めている奴もなんともいいえない…だから、俺は彼女になんとも言ってあげられなかった…だけど…言いたいことだけは言った。
「無理だけはするんじゃねーぞ…」
「けだものて少しいいやつなのかもな」
「誰がけだものじゃ!!」
*****
「初めまして!転校してきました!南条望です!!よろしくお願いします!!」
あいつ、猫被ってんな。でも、このクラスで心配することは無いか…ここの大半は孤児だ…だから、ここにいる奴ら全員何かしらに辛い過去やトラウマを持っている。その分、みんな優しい…たまにねじ曲がった奴もいるが…気にすることもないだろう。
「じゃ、席は颯斗君の隣ね…じゃ、次全校集会だから体育館集合ね…先生荷物とってくるからそれまで待っててね」
そういってクルミ先生は去って行った。
「よろしく、颯斗君」
彼女もけだものと言ったいい騒ぎになるのを察したのだろう。ただでさえ見た目は可愛いので自己紹介の時女子は可愛い連呼して奴もいたし…それに大半の男子は釘付けだったし…だから俺は寛大なる望の振る舞いに感謝をした。
「あ、あよろしく…望」
カクヨムと同時投稿させていただいています。もし、よければカクヨムの方に別の作品もありますの読んでみてください!!