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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第3章 ②
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91話 大事な友人

黒いドラゴンを従えた魔王の配下。

どう見ても、そうとしか思えない。

その時、僕はそれを失念していた。


敵意に満ちた目で彼らに見据えられ、動揺した。

彼らは大事な友人だ。

それなのに……

頭が真っ白になった。

自分が崩れ去ってしまいそうに感じた。

僕は、動くこともできないでいた。

僕は、両側に二体のドラゴンを置いたまま、佇んでいた。

僕の視界にぼんやりと、三人の姿が映る。

目の焦点が合わない。

気が遠のく気がする。

本当にこの城に飲み込まれてしまうように思う。

「お前が殺したの。皆。」

底冷えのするような、低い声でイネスが言う。

その意味を僕はすぐに理解できずにいた。

「コーディを殺したのか。あいつ等も」

グレンが呟くように言う。

僕もあの惨状を見た。

一瞬にして、僕達の体は切り裂かれた。

どう見ても、死体にしか見えなかった。

事実、魔王に何かされていなければ、人間のままなら、確実に死んでいただろう。

僕なんかよりも、ずっと、絶望を味わったのは、彼らだ。

それでも、彼らの絶望を受け止めて、死ぬことはできない。

メイが待っている。僕も彼らも無事で、合流しなければならない。

魔法を解き、両側のドラゴンが霧散する。

「グレン、イネス、ミア」

彼らに呼びかけ、顔の隠れる兜を取り去った。

彼らの僕を見る目は変わらなかった。

「そんな卑劣な真似をするのか。コーディは死んだ。間違いなく」

そう言うグレンの顔は苦悶に歪み、見ていて辛くなる。

グレンの言うことはもっともだ。

僕でも、あの光景を見れば、死んだのだと思った。

自分の姿は見ていないが、体はバラバラにされていたのだろう。

だが、彼らと争うことなく、納得してもらわなくてはならない。

「グレン、僕は生きている。メイも、メルヴァイナも、ライナスも、リーナも、ティムも無事だ」

「そんなわけがない。あれで生きていられるはずがない」

「僕達は、人間ではなくなった。最初に境界を越えた時に。あの一月の間に、何もされていない訳がなかった。僕達はあの程度では死なないらしい。それに、年も取らない」

「それは、俺達も、か?」

「ああ」

「そうか、コーディ」

僕には、今のグレンの気持ちがよくわからなかった。

ただ、グレンは、確かに、僕の名を呼んでくれた。

「本当に、コーディなの? 以前、渡したもの、覚えてる? 今回、ここへ来て、すぐに話していたもの」

「勿論だ、イネス。”おまもり”のことだろう? だが、すまない。あれは、あの時、切り刻まれたらしく、失くしてしまった」

「そう、仕方ないわね。中身は何だった?」

「いや、見ていない。というより、災厄が降りかかる、のではなく、効果がなくなるのだろう?」

「そう、残念ね」

何が残念なのか。僕が好奇心に負けて、中を見るとでも思っていたのか。むしろ、見てほしかったのか。

だが、そう言うイネスはいつもと変わらないようだった。

「コーディさまぁぁぁぁぁぁ」

ミアがはっきりしない鼻声で僕を呼ぶ。

涙を溢れさせたミアが僕を見ていた。

「メイ゛も――」

ミアは涙で言葉を詰まらせている。

「メイも無事だから、心配しなくていい」

ミアは座り込んで、大泣きしてしまった。

「それで、なぜ、そんな恰好しているのかは、想像がつくけれど、あの魔法は何?」

泣いているミアは放って、イネスが僕に尋ねてくる。

聞かれるとは思っていた。

「メイと契約をして、メイの魔力を使えるようにしてもらった。本当はメイと同じ光魔法を使えるはずが、なぜか、僕が使えたのは、闇魔法だった。メルヴァイナが言うには、僕には闇魔法の適正がより高いらしい。光魔法の習得はメルヴァイナに匙を投げられた」

僕は正直に、事実を話した。

「そう、わかったわ。それで、魔王の手下みたいになったのね」

「魔王の手下……」

やはり、客観的に見てもそうらしい。

それに、そんなにすぐに納得していいのか?

僕の方がそう思ってしまう。

「考えても仕方ないこともあるわ。今更、そんなこと。それとも、手下はあんまりだった?」

「そもそも、魔王に僕のような手下は要らないだろう」

「さあ? わからないわ。それより、メイは、今、どこなの?」

「まだ、下の階にいる。魔力の回復をしているから、後で追ってくると」

「そう、じゃあ、このまま、上に行きましょうか」

僕は頷いた。

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