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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第3章 ①
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81話 魔王城のゴーレム 二

「あ、あの、それじゃあ――」

加熱と冷却、やってみよう。もう何でもやってみるしかない。

イネスとグレンに頼んでみた。

「わかったわ。グレン、火をお願い」

「そうだ。コーディ、火力が強まるように、風を送ってもらえませんか? あ、でも、強すぎないようにしてほしいです」

「かまいませんよ、メイ」

グレンが渋々、ゴーレムに向かって、火の魔法を放った。

すかさず、コーディも風魔法を使う。

ゴーレムが火に包まれる。

石のようなものなので、燃えはしないが、熱くはなっていると思う。たぶん。

「そろそろ、水で冷やしてください」

火は消え、イネスが、水魔法を使う。ゴーレムに水が掛かると、じゅわっと音がして、水が蒸発する。

なんだか、料理をしているような気になってくる。

もう一度、加熱を、と思っていたところで、ゴーレムに動きがあった。

今まで、微動だにしなかったのに。突然なんなのか。

ゴーレムは、わたし達に一歩近づいたのだ。

ギクッとする。わたしのせいだろうか。

もしかすると、今の攻撃が効いているということ?

「弱いデスネ。もう少し、寝ていてもヨカッタ」

ゴーレムはあろうことか喋り出した。

「アナタがたでは、ワタシを破壊することはできませんヨ」

ゴーレムがもう一歩、近づく。

「ニンゲン風情ではどうすることもできませんヨ。努力はすべてムダデス。弱いアナタがたに可能性はありませんヨ。ただ、弱さを嘆けば良いのデス」

この嫌みったらしいゴーレムは何なんだろう。

この言語に慣れないような言い方なのに、嫌に流暢に話す。

弱い、弱いと本当になんなのか!?

弱いことぐらい、わかっている。

体力はない。力もない。賢くもない。剣術も全然。治癒魔法もそれで戦えるわけじゃないし、偶々使えただけだ。実力でもなんでもない。努力すらしていない。

本当にだめな要素しかない。

もしかすると、わたしを魔王として覚醒させようとしているのか?

それなら、なぜ、彼らが必要なのか?

よくあるパターンが仲間が殺されて、怒りで覚醒する……

彼らを殺すつもりなのか。

わたしを覚醒させるために。

でも、それは違うと思う。

そもそも、わたしみたいなのが、魔王なわけがない。

全ては嘘だったのか。

ここで、死ぬのだろうか。

「気は済みましたカ。もう、よろしいデスカ」

わたしの思考に呼応するように、ゴーレムが言う。

「ドウシマシタカ」

この空間にゴーレムの声だけが響いている。

誰も何も答えない。

わたしは……

わたしは、腰の短剣を握った。

ゴーレムに向かって、駆け出し、短剣を抜いた。

振り被って、ゴーレムを突き刺した――

短剣は突き刺さることはなかった。

短剣を持つ手に衝撃が伝わる。むしろ、わたしの方にダメージがある。

ゴーレムは無傷だ。

無意味だとはわかっていた。

でも、何もしないで終わることだけはいやだ。

「ムダでしょう。よくワカリマシタカ」

「わかりません!」

わたしはゴーレムを睨みつける。

「僕達もわかりませんよ」

コーディもまた、ゴーレムに風の刃を放つ。

「ボクも最後まで戦う!」

ミアが大声で宣言する。

「しょうがないわね」「ふんっ」

イネスとグレンも傍に来る。

「ムダなことは止めるほうが賢明デス」

ゴーレムがそう言った直後、背後から凄まじい音がした。

見ると、壁が崩れて、穴が開いてしまっている。

穴の中に明かりはなく、暗闇がある。

そこから、複数の足音が聞こえてきた。

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