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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第2章 ②
52/316

52話 町へ

朝日が村を照らし出す。

清々しい朝のはずであるが、村の門は閉ざされ、さらにバリケードが設置されている物々しい様子だ。

不安に思っていた村人達も昨日は何もなく、畑も心配なこともあり、門を開けるよう話し合いがされている。

とはいえ、門を閉じていても、村の護りは盤石とは言えない。

石造りの壁があるとはいえ、町に出たような魔獣が出れば、一溜りもないだろう。

訓練をしていない村人が勝てるとも思えない。

あの女性のこともある。

わからないことだらけなのだ。

情報も全く入ってこない。昨日、村を訪れる者は誰もいなかった。

僕達だけでどうにかできる問題ではない。

村人達に依る話し合いの結果、バリケードは撤去し、一時的に門は開けることになった。

「暇だから、私とライナスは外で見回りでもしてあげるわ」

そう言って、メルヴァイナとライナスは仕事に行く村人達と共に門を出て行った。

彼らが戻ってきたのは、昼頃だった。

村には何事もなかった。


その日の昼過ぎ、漸く、軍が到着した。

僕達も門の傍まで行き、それを確認していた。

二十人ほどの小隊だ。各村や町に派遣しているのだろうし、それくらいのものだろう。

僕達よりは頼りになるに違いない。

「軍が着いたわ。約束通り、村を出るわね。あなた達は私達と一緒に来てくれるの? 結論は出ているのでしょう?」

メルヴァイナは余裕めいた笑みを浮かべている。

「あなた方と共に参ります」

「そう言ってくれると思っていたわ。じゃあ、すぐに出発しましょう」

「今から、ですか?」

「そうよ」

「ですが、次の村に泊まることはできませんし、とてもではありませんが、日のある内には――」

「大丈夫よ。私達が責任を持って、連れて行くから。さあ、準備して」

彼女は僕の言葉を遮って、有無を言わせぬ口調でグイっと迫ってくる。

「わかりました」

そう言うしかなかった。僕達が何を言っても彼女が考えを変えるとは思えない。

彼女達について行けば、彼女達が何者なのか、わかるだろう。

二人とも、この国で数人しかいないと言われる貴重な治癒術師のはずだ。

この国の中央から遣わされた者達なのかと思いもしたが、わざわざ治癒術師を来させたりはしないだろう。

僕達では彼女達のことを探ることはできなかった。

彼女達は治癒術師であることと、かなりの強者だということ、それに、フィンレー・テレンス・ドレイトンのことを提示してきた。

だが、彼女達の正体には近づけない。

僕達は村長に出立する旨を伝え、感謝を述べた。

村長は今から立つのは危険だと止めてくれた。もう一泊した方がいいとの申し出を受けたが、固辞した。

門まで行くと、すでにメルヴァイナとライナスがいる。

僕達もだが、メルヴァイナとライナスも荷物らしい荷物は持っておらず、身軽だった。

村長に見送られ、僕達は門を出た。

しばらく歩き、すでに村は見えない。

「あの、夜も進むつもりなのですか?」

いくら彼らが強いと言っても、もし、夜目のきく魔獣などに襲われれば、生き残れないかもしれない。

「そんなことはしないわよ。私も嫌だもの」

そんなことは心底嫌そうにメルヴァイナが答える。

「私もそれはご免被る。そろそろいいだろう」

ライナスは道を外れて歩き出す。

「ま、待ってください! どちらに行くつもりなのですか!?」

僕は焦って、声を上げた。

どうして、道を外れる必要があるのか?

方向が違うので、近道のはずもない。

まさか、僕達を殺すつもりなのか?

「心配するな。必ず、町まで連れていく」

「生死を問わない、なんてことないよな?」

グレンが低い声で問う。

「必ず、生きて町まで連れていく。黙ってついてくるがいい」

ライナスは道を外れて、どんどん進んでしまう。

「私達を信じてほしいわぁ」

メルヴァイナもライナスを追って、道を外れていく。

残った僕達四人は顔を見合わせ、仕方なく、彼らを追っていった。

ある程度、道から離れた木の陰でライナスは止まった。

「私の傍に来てくれ」

ライナスがそう呼びかけてくる。

僕達は指示に従うしかない。

野営するにしては、まだ、日は高い。

一体、何をするつもりなのか、皆目見当がつかない。

すると、急に光に包まれた。

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