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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ④
306/316

306話 僕のすべき事 三

夜は考える事が多すぎて、中々寝付けない。

メイにも嫌われていないだろうか?

イネスやミアの言う通りだ。

メイを誘うべきだろう。

でも、どこへ行けばいいのか?

魔王国には詳しくない。

グレンに聞いておけばよかったかもしれない。

シンリー村へ行くのに、メイを誘う訳にはいかない。

何があるか、何が起こるかわからない。

少しでも危険な場所にメイを連れて行く訳にいかない。

知ってはいけない事を知ってしまえば、どうなるのか?

考えればきりがない。

今の体はそれほど眠らなくてもどうということはない。

魔王の眷属となったからだろう。

この魔王の眷属というのもよくわからない。

メイも知らないという。

ただ、確実に力は強くなり、魔力も高くなり、怪我もすぐに治る。

それは実感する。

明らかに思い込みではない。

魔力は魔王から供給されているようだが、それについては実感がない。

魔法を使う時、感覚としては今までと全く変わらない。

魔王の眷属になって使用できるようになった闇魔法。

何かわからないかと、闇魔法で作った球を出現させる。

深夜の微かな明かりの中、黒い球が確かにある。

どこか異質だ。

火や水のような身近なものではない。

存在してはいけないもののような気さえする。

何も考えず、多用していたが、問題はないのか?

魔王を殺す為――

本当にそうだとしたら……

魔王の眷属は何なのか?

魔獣と似たもの……

いや、人の姿をした魔獣なのかもしれない。

考えても答えは出ない。

魔王が死ねば、僕達も死ぬらしい。

それは構わない。

僕達と魔王であるメイは運命共同体だ。


翌朝、これから向かう剣術の鍛錬では、メイに会う。

騎士にはならないが、鍛錬は続けるつもりだ。

昨日の事をメイは怒っているだろうか?

メイに何を言えば……

どこかへ誘うべきだ。

だから、どこへ?

それは調べておこう。

それしかない。

そもそも、僕の予定がいつ空くのか、確認しておかないといけない。

しばらく、空く事がない可能性もある。

今からの時間はメイと二人きりという訳ではない。

実際に会ったメイはいつもと変わらない。

いつものように挨拶を交わす。

婚約者になる前と同じだ。

このままではいけないとは思う。

いきなり抱き締める訳にもいかない。

……

「何をしている!」とフィンレー・テレンス・ドレイトンに打ち込まれる。

彼に勝てないにもかかわらず、集中できていなかった。

ここには、メイに会いに来た訳ではない。

強くなる為に、剣術の鍛錬に来ている。

鍛錬の後、すぐにティムに接触できた。

というより、鍛錬の場にいた。

参加はしておらず、見ていただけだ。

ティムを連れて、その場を離れた。

ティムはダークフェアリーという最上位に位置する種族で、下位種であるフェアリーとは完全に別の種族であるらしい。

ただ、ダークフェアリーは自領に籠り、表には出てこない。政治にもほとんど関わっていないと聞いた。

ダークフェアリーは凶暴だと言う噂があるが、ティムを見ていると、そうは思えない。

ティムについては、魔力は高いが、時折、魔法を失敗する。

主に、張り切り過ぎた時など。

その為、周りを巻き込む事はある。

そうならなければ、失敗する事はない。

そのティムもシンリー村へはついて来る事になった。

出発はすぐだ。

この日も宰相の元に行く事になっている為、いつ時間を取ることができるかわからない。

なので、今しかない。

ティムに転移魔法の使える部屋へと案内してもらい、すぐにシンリー村へと転移した。

転移先はシンリー村のすぐ近くだ。

そこからなら、村も見える。

村が見えるはずの場所にシンリー村はなかった。

何もない。

家も畑も、そして、人も、そこには何もなかった。

確かにこの場所のはずだ。

なのに、何の痕跡もない。

元々、何もなかったかのようだ。

あの村は何かおかしかった。違和感があった。

シンリー村に住んでいたのは、本当に王国の人間だったのか?

それに関して、今まで僕は全く疑っていなかった。

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