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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ③
302/316

302話 魔王とは…… 二

優雅とは言えなかったティータイムを切り上げて、部屋へと案内してもらう。

ランチも遅かったのでお腹いっぱいだ。

案内してもらわないと、わたしは自分の部屋に辿り着くのに、どれくらい時間が掛かるかわからない。

案内はメルヴァイナとリーナがしてくれている。

でも、このまま部屋に戻っていいの?

よくない気がする。

コーディにわたしと婚約した事、忘れられそう。

コーディに会いに行くとかじゃなくて。

ほら、もっと大事なことが!

今後の方針とか。

それは大事だ。わたし達の命にかかわるから。

「あの! メル姉、リーナ。その、まだ、部屋に戻りたくないです」

「ふふ。気が利かなくて、申し訳ありません、メイさま」

絶対、メルヴァイナは誤解している。

でも、その方がいいんだろうか? メルヴァイナは味方?

黒幕だという宰相の弟アーノルドは死んだけれど、余計に疑問も疑惑も増えた。

魔王国で誰を信じていいかわからない。

前にも考えていた。

もう終わったことだと。何も知らないままで、何も気づかないままでいた方がいい。

でも、それだと、わたしも前の魔王のように閉じ籠ることになるかもしれない。

「魔王は本当に魔力を供給してる?」

誰に言うともなく、そう口にした。

「ええ、勿論です。それはこの魔王国に生れた者なら誰でも知っております」

「供給してるとわかるんですか? そういうことを感じるとか」

「いいえ。私の能力では何も。私の理解を遥かに超えているのでしょう。ですが、現に眷属には供給されておりますし、この魔王国を支えられる程の魔力がございます。メイさまの光魔法は魔王国の誰よりも優れております」

確かにそう言われると、そうだと思ってしまう。

「本当は、魔王は疎まれているんじゃないですか? だって、突然現れた知りもしないのを王になんて」

「それはあり得ません。ライナスとティムはまだ子供なだけです」

「メル姉は……疑っていますか?」

何を、とは言わなかった。

「魔王さまを利用しようとしている者はいるでしょう」

「メル姉も?」

「利用していないと言えば、嘘になります。私の願いは既にお伝えしていますでしょう? ずっとつまらなかったのです。この城に閉じ込められて。急にここに連れて来られました。魔王国の為に学び、魔王国を支えていくのだと。選ばれ、名誉なことだと。ただ、一族の中で、私はできがよくありませんでした。王国の勇者と同じ、体のいい厄介払いだと思います。だから、さぼっても何も言われませんでした」

「私達は問題のある落ちこぼれ。いくら本筋とはいえ、私達を選ぶとは思えません。私達は何の為に連れて来られたのでしょう?」

はっきりした口調に妖しい笑みを浮かべ、リーナが言う。リーナらしくない言い方。

裏リーナだ。久しぶりに会った気がする。

「わたしは落ちこぼれなんて思わない。全部完璧になんて、できるわけない。向き不向きは絶対ある」

「ええ、その通りですね。ですが、私も厄介払いだと思いますよ。邪魔な私達の隔離。そして、都合よく、魔王様に押し付けたのでしょう」

裏リーナの言葉は、宰相への批判に聞こえる。

確かに、最初、わたしも押し付けられたと思ってしまった。

「こんな話をしてもいいんですか?」

「聞かれているなら、どこにいてもそうです。気にされることはございません。メイさまは、この魔王国の王で、神なのですから。望むようにされればいいのです」

メルヴァイナは堂々と言い放つ。

メルヴァイナもリーナも宰相を疑っているということだろう。

「どうするんですか?」

「どうもしません。メイさまもそれがいいと思っていらっしゃるでしょう」

その通りだ。

何か行動を起こす気はない。

それが一番安全だと思ってる。

言われた通りの魔王として、魔王国で暮らしていけばいい。

でも、魔王って?

王国の国王とは違う。

単なる魔力供給源だと割り切る?

「私達の時間はまだまだ長いのです。とりあえず、行きましょうか?」

メルヴァイナはくるりと回って引き返す。

今いる場所は見覚えがある。

メルヴァイナについて行く。わたしの部屋からは遠ざかる。

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