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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ③
300/316

300話 魔獣の魔力

アーノルドがいなくなったからといって、魔獣が絶滅したわけじゃない。

魔獣がいることはわかる。

でも、なんでわざわざこんなところに現れる?

魔獣自体も転移魔法が使える?

転移先は確か、設定しておかないといけなかった。

あの魔獣が一度、中央広場に来て、転移先を設定したとは思えない。

これまで襲撃してきた魔獣は誰かが送り込んできたのだと思う。

それは、きっとアーノルドがしていたのだと思う。

理由はよくわからないけど。

魔王を信仰しているというのはうそで、本当は殺したかったのかもしれない。

そうだとすれば、本当の研究は魔王を殺す方法だったのかもしれない。

魔王国も滅ぼしたかったとか?

魔獣はというと、大きい上に、足が速く、魔法で攻撃してくるいうこともあって、戦いづらそうではあるけど、5人の方が優勢だ。

わたしはリーナと共にそれを見ているだけしかできない。

これまでの魔獣より強いと思う。

完成に近いと思えるような魔獣だ。

ただ、魔獣は魔王であるわたしを直接狙ってくるわけではない。

わたしのいる方には魔法攻撃もない。

わたしは5人が戦っているのを見ているだけだ。

魔獣に光の杭が真上から突き刺さった。

光魔法のようだけど、5人に光魔法は使えない。

魔獣とわたしの間に本当の女神のような女性が急に現れて、降り立った。

もちろん、ドリーだ。

さっきまでの黒い服じゃなく、シンプルな白いドレスを着ている。

その隣にはメルヴァイナもいた。

魔獣はよろめいて、胴体を地面に着けた。

わたしはドリーとメルヴァイナの傍に行った。

5人が心配だったのもある。

「私の浅慮をお許しくださいませ。まだ、このような魔獣がいるとは思わず」

ドリーは切なくなるくらい申し訳なさそうに頭を下げる。

「いえ、わたしは何ともありません」

わたしはどこも怪我していない。

わたし以外も大した怪我はなさそう。

セルウィンが転んだ程度だ。それは、わたしの掛けた身体強化のせいかもしれない。

わたしはかなり楽観的だった。

切り刻まれても死なないわたし達を基準に考えてはいけないのに。

セイフォードで同じ目に遭っていたのに。

普通の人間はわたし達のようにはいかない。

魔獣の周囲は酷かった。

巻き込まれた人達が大勢いた。

わたしの治癒魔法では助けられなかった。

直視できない。

眩暈がした。

でも、5人は、ミアやセルウィンでさえ、魔獣に立ち向かった。

この惨状を目にしていないはずがない。

戦ってもいないわたしが目を逸らしていいの?

それに、なんとかしないと。また、人の多いところに魔獣が現れるかもしれない。

前もこの近くに現れたのなら、またここに現れる可能性がある。

「どうして、魔獣が?」

わたしはそう尋ねた。

その答えは予想していた。

宰相か、死んでいなかった宰相の弟が差し向けたのだと。

「それは、魔王様がいらっしゃるからです」

よくわからない答えがドリーから返ってきた。

「魔獣はかつての魔王様によって創られました。魔獣の魔力は魔王様から供給されているのです。魔獣は魔力を求め、魔王様に呼び寄せられます」

魔獣は魔王に創られたということはすでに聞いている。

でも、魔力の供給源までは教えられていない。

魔王に寄ってくるなんてことも。

もしかして、魔獣が魔法をあまり使わなかったのは、魔王がいなかったから?

「わたしの魔力が魔獣に? わたしが魔獣を?」

そう言うわたしの声や口調は普段と変わらない。

「メイのせいではありません。魔獣を創ったのはメイではありません」

コーディの言葉に軽く頷いた。

「ええ、その通りです。謝らなければならないのは、私達です。それについては、調べがついたところなのです。すぐにでも魔王国へお戻りいただくべきでした。魔王国でしたら、魔獣は入って来られません」

謝ってばかりのドリーに、わたしの方が申し訳なくなる。

ドリーのせいでもないのに。

それでも、確認しないといけない。

「魔獣自体が転移魔法を使って、わたしのいる場所に来たんですか?」

「ええ。ただ、転移先は決められていたと思われます。そして、転移先の近くに魔王様の存在を感知し、転移して来たのではないかと推察致します」

「転移先を決めたのは、誰かわかるんですか?」

「申し訳ございませんが、そこまではわかりません。私自身も私が定めた転移先を他の者に使わせるということはできないのです」

そうだとは思っていた。

とにかく、ここを離れた方がいい。

騎士団も駆け付けてくるかもしれない。

そうなると色々、大変だろう。

「魔王国に戻ります。ただ、ここに魔獣がまた現れませんか?」

戻らないわけにはいかないけど、ここのことは気になる。

まあ、わたしがいなければ、大丈夫かもしれないけど。

「ご安心くださいませ。対処は可能です。二度と被害は出さないように致します」

「お願いします」

「はい、かしこまりました」

ドリーが優し気に微笑む。

「魔王さま……私も傍にいられず、申し訳ありません。魔王国でも何があるかわかりませんから、できるだけお傍におります」

メルヴァイナはどこか気落ちしているようだ。

色々と想定外のことが起こったからだろう。

「メル姉、気にしないでください」

メルヴァイナに声を掛ける。

わたしは怪我一つしていないのだ。

そのすぐ後に、ドリーの転移魔法により、魔王国へ戻った。

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