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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ③
299/316

299話 誕生祭での思い出

中央広場はイネスの言う通り、賑やかだった。

崩れた建物の周りは立入禁止になっていたけど、それ以外の場所は混み合っている。

安全が確認されるまで全面立入禁止というようにはなっていない。

実質、王都では魔獣による犠牲者は誰も出ていない。

セルウィンやわたし達が犠牲者と言えなくもないけど。

賑やかな音楽が流れ、楽し気に踊る人達がいる。

イネスに習っていたダンスとは違い、誰でも踊れる簡単なダンスだ。子供も踊っている。

だからといって、わたしも踊ろう、とは中々ならない。

楽しい雰囲気を感じて、見ているだけで十分だ。

もちろん、屋台も出ていた。

食事をしたところだけど、甘い物をちょっと食べるだけならいいと思う。

残念ながら、ジェロームの姿はなさそうだ。

コーディと二人だけで、というのはむりだったけど、それは魔王国に帰ってからでもいい。

王国の賑やかな誕生祭を見られてよかった。

いい思い出で締めくくって、魔王国に帰る方がいい。

「私の女神、ぜひ私と踊っていただけませんか?」

セルウィンがわたしに手を差し出す。

わたしをいつまで女神と呼ぶ気なんだろう。

このダンスは別に密着するわけではない。手が触れる程度だ。

それでも、踊れるわけがない。

「お兄様、メイは僕の婚約者なのですが」

「弟、お前が誘わないからだろう? だから、私がこうして誘っている」

「メイ、僕と踊っていただけませんか?」

「はい」

急にコーディに誘われて、声がちょっと裏返っていた。

大勢の人の前で踊るのは緊張する。

ミアがイネスにダンスを申し込んでいた。

セルウィンはリーナを誘って、断られ、仕方なくなのか、グレンを誘って、やっぱり断られていた。

他にも、女性同士や男性同士で踊っている人達もいる。

親子で踊っていたり、誰と踊ってもいいらしい。

一度踊ってみると、案外、楽しい。

わたしも楽しく踊っている人達の一部になれたように思う。

何の前触れもなく、爆発音が響いた。

花火でも上がったのかと思った。

だって、もう一応、解決したはずだから。

そんなはずないと思った。

でも、突然現れた魔獣は幻でもなんでもない。

多くの人達越しに大きな魔獣の姿が見えた。

金色の毛の狼のような魔獣だった。魔獣というより、聖獣と表現した方がいい神々しさがある。

誰もが呆気にとられたように立ち止まってそれを見ていた。

それはわたし達を攻撃しない、そんな風に錯覚してしまう。

でも、攻撃して来ないなんて、そんなことはなかった。

魔獣は口元に火球を作り出すと、すぐさま、それを放った。

今は大勢の人が集まってるのに。

以前よりも遥かに人が多い。

悲鳴が響き渡り、一斉に皆が逃げ出す。

わたし達の方には魔獣の火魔法は飛んでこない。

早くなんとかしないと。

でも、わたしは戦えないし、逃げてくる人達で魔獣まで近づけない。

立ち止まっているわたし達に、逃げてくる人達がぶつかるんじゃないかと思ったが、うまく避けてくれている。

もしかすると、リーナが魔法でなんとかしてくれているのかもしれない。

「リーナ、メイを頼みます」

逃げてくる人が少なくなったタイミングでわたしとリーナ以外の5人コーディ、イネス、ミア、グレン、セルウィンが魔獣に向かって行った。

わたしはすぐに5人に身体強化の魔法を掛ける。

セルウィンは魔獣相手に戦えるんだろうかと思いはしたが、ヴァンパイアの眷属のはずだから、多少の怪我では死なない。

そうだった、怪我。魔獣の近くにいた人達や魔獣の火魔法に当たった人達がいたはずだ。

土煙や屋台か何かが燃える火や煙で、ここからではよく見えない。

「リーナ、治癒魔法を使うつもりだけど、魔獣が強くなったりしない?」

「すみません。私ではわかりません。ですが、魔獣以外に治癒魔法を使うことができるはずです」

悩んでる時間なんてない。

わたしは治癒魔法を発動した。対象から魔獣を除くようにイメージしながら。

魔獣を除けたかはわからないけど、この中央広場付近にいる人達の治癒はできたはずだ。

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