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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ③
297/316

297話 王城にて 五

「……ですが、宰相とその弟、アーノルドが魔王様を城の奥に閉じ込めておくと話しているのを聞いてしまったのです。黙していた事は、申し訳ございませんでした。魔王様の事を大切に思っているからこそだと……それが行き過ぎてしまっただけだと……」

ドリーがわたしに弱々しく頭を下げる。

「それは、100年前の話でしょうか?」

ドリーは首を横に振った。

「……違います。最近の事です」

「ですが、二人は会ってないと」

わたしは宰相に弟とは会ってないと聞いていた。

でも、弟のアーノルドはセイフォードの神官長として、魔王国に協力していた。

アーノルドがこれまでの魔王の事を思っていたのは事実だと思う。

それで宰相が弟のことを全く知らないというのは、ないと思う。

「そうですか……以前の二人は仲の良い兄弟でしたから。こんな事になるとは思ってもいませんでした。もう、元に戻る事は永久にありません。魔王国や魔王様を思うあまり、間違えてしまったのでしょう。もう、終わった事なのです」

わたしも過去を振り返りたくない。

辛かったことは忘れてしまいたい。

「魔王様もご存じの通り、アーノルドは既に処刑されました。アーノルドは死期も近く、焦っていたという事もあるでしょう。あの村の方々も魔王国への亡命が遅ければ、実験体にされていたかもしれません」

宰相はどこまで知っていたんだろうか? 弟のアーノルドのことを。

アーノルドがセイフォードの神官長をしていたことはやっぱり、知っていたと思う。

元々、宰相を信用しているわけじゃない。

最近は、相談相手みたいになってたけど……

いや、わたしが利用している――ちょっと、言い訳じみて聞こえる。

「魔王国に戻られましたら、あまり宰相を信用なさらないで下さい。どんなことでもお気づきの点がございましたら、私にお知らせくださいませ。魔王様を必ず、護ってみせます」

ドリーは真剣な表情のまま、わたしを見つめていた。

この場にはリーナもいる。メルヴァイナも宰相を疑っている。

リーナはどう考えるんだろう。

「……ルカ・メレディス様は生きているのですか?」

躊躇いながらも、ミアがドリーに聞いた。

わたしが声がルカに似ている人とすれ違ったと言ったからだろう。

「亡くなっているでしょう。メレディス家の出とは言え、まだ若いヴァンパイアです。アーノルドには遠く及びません。ヴァンパイアではありますが、惜しい方を亡くしました」

丁寧な口調だけど、ドリーははっきりと言った。

わたしが会ったのは、本当にルカの幽霊かもしれないと思えてくる。

魔法があるくらいだから、幽霊がいてもおかしくはない。

気のせいというには、はっきりしすぎていたから、何かがいたのは確かだ。

その何かも宰相に気を付けるように言っていた。

わたし自身も初めから、気を付けてるつもりだ。

「先程の試合にはどのような意味があったのですか?」

コーディがそう尋ねた。

「それは既に申しました通りです。折角ですから、誕生祭を楽しんでいただこうと思っただけです」

ドリーが優し気に微笑む。

確かに国王の誕生日のお祝いに行くと言ったのはわたしだ。

まあ、わたしはそれでいい。招待されたわけでもなんでもないけど。

コーディ達は巻き込んでしまった。

それより、やっぱり、宰相とアーノルドは共犯とみるのが一番有力そうだ。

二人は見解の違いで争いになったとか?

アーノルドがやり過ぎて、殺さざるを得なかったんだろうか?

きっと、そうだ。

で、でも、それって、わたしはどうすれば?

さすがに魔王であるわたしに危害を加えるとは思えないけど。

閉じ込められる可能性はあるってことだと思う。

要は気軽に王国に行きたいとか言わない方がいいってことだと思う。

聖騎士達やアリシアをあんな姿にしたのは、アーノルドなんだろう。

ドリーも宰相も、それに関しては、言っていることは同じだ。

それは、魔王のために……

「魔王様、次はいつ王国に来られるかわかりません。本日午後4時に申しておりました場所でお待ちしております。宰相の事は私にお任せください」

ドリーはわたしに頭を下げると、どこかに転移して行ってしまった。

さっき、ドリーは2時間と言っていたけど、王国での滞在時間を長くしてくれたらしい。

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