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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ③
294/316

294話 王城にて 二

遠くに見えていた王城まで一瞬で移動だ。

やっぱり転移魔法は便利。わたしも使いたい。

ただ、服はさっきまでと同じで全員黒一色。

ここにいるのは、わたしとコーディ、イネス、ミア、グレン、リーナに、セルウィンだ。

こんな集団が歩いていると不審者でしかない。

幸いにも、この部屋にはわたし達以外に誰もいない。

でも、この部屋を出ると、誰かには遭遇するだろう。

そして、大騒ぎになるに決まってる。

部屋からそのまま出て行こうとするセルウィンを慌ててコーディが止めていた。

「生きていた事にすればいいだろう。駄目なようなら、強行突破できる」

と胸を張るセルウィンに不安しかない。

「認識阻害の魔法を宰相に教わりました。ほとんどの人間には効果があるはずです」

いつの間にコーディはそんな魔法を覚えていたんだろう。

わたしは全く教わっていない。

「この人数を試した事があるのか? いつまでもつ? 見つかれば、本当に強硬手段になる」

グレンの言うことはもっともだ。

「とりあえず、僕とセルウィンお兄様とで様子を見るつもりだ。1時間ほどなら問題ない」

騒ぎになれば、かなり怒られそうだ。それで済めばいいけど。

仕方ないから、王国を滅ぼそうとか言われたら、どうすればいいかわからない。

「あ、あの、それでしたら、私が魔法を掛けます。皆様全員でも大丈夫です」

リーナが提案する。

リーナの魔法なら安心できる。メルヴァイナも妹自慢をしていたぐらいだ。

そういえば、最近、裏リーナには会っていない。

裏リーナがいなくても大丈夫になってきたんだろう。

わたしだけが置いて行かれている気がする。

仲のいい人達を外側から見ているような。

どこか孤独を感じる。

わたしができることって、何もない。

わたしって、ここにいていいんだろうか。

前の魔王もこんな気持ちだったんだろうか。

でも、宰相の弟の話が本当なら、前の魔王は自殺じゃない。元の世界に戻ったんだ。

いや、前の魔王は死んだと聞いた。死体もあったようだ。消えてしまったわけじゃない。

魔王は死なないとも聞いた。

何が本当なのか、わからない……

誰の言葉が信じられるのかも……

「メイ、僕の我儘に付き合わせてしまって申し訳ありません」

コーディが申し訳なさそうにわたしを見ていた。

もしかして、不機嫌なように見えたんだろうか。

「すみません、全然違うんです。ちょっと、色々考えていて」

「そう、ですか。では、この後は、二人で出掛けましょう」

コーディはやっぱり優しい。

宰相とか、宰相の弟とか、とりあえずはいいかと思ってしまう。

「おい、それなら、ここの確認は早くに終わらせる。置いて行くからな」

グレンは本当に不機嫌そうにわたし達にそう言う。

いつもの調子かもしれないけど。

「ロイは無事でしょうか?」

「あの後、すぐに闘技場を出て王城に向かったそうです。ここに到着するまでもうしばらく掛かるでしょうが、何の情報もありませんから、無事でしょう」

「だから、置いて行くからな」

グレンがもう一度、言ってくる。

コーディと二人で苦笑して、グレンの後に続いた。

セルウィンが王城内を案内してくれる。

途中ですれ違う人達は、わたし達に目もくれない。

不思議な気分だ。

まあ、普通の道では他人のことをそこまで見てないだろうから、普通のことかもしれない。

ただ、ここは厳重なはずの王城だ。

しかも、わたし達は不法侵入だ。

悪いことをしている自覚は十分にある。

セルウィンの部屋だったという部屋にも案内された。

セルウィンが言うには、部屋の中は変わっていないらしい。

すごく豪華で広い部屋だ。

広さは魔王城のわたしの部屋の方が広いけど、それより派手な気がする。

こういう部屋にももう慣れた。

他にもいくつかの部屋に行った。

王城の見学ツアーのようだ。

特に何かがあるわけじゃない。

誰もわたし達には気付かない。

いるのにいない。

ただ、実体はあるから、ぶつからないようにしないといけない。

三人が並んで歩いてきたときは一列に並んでやり過ごした。

そんな見学ツアーの途中で、

「あの、レックス様が戻られたようです」

リーナが言う。どうやって知ったのかはわからない。

ヴァンパイアの特殊技能かもしれない。

ロイが戻ってきたようだ。

わたし達は馬車の着く場所の近くに移動した。

馬車は豪華絢爛なものではなく、シンプルだった。

ただ、ちゃんと護衛はいるようだ。王族の護衛には少ない気がするけど。

ロイが無事でよかった。

さっきより、ずっと近いから顔も見える。

またちょっと痩せた気がするけど、元気そうだった。

そのロイがこの国の次期国王だ。

わたしも一応、女王だけど。わたしの用途は魔力供給だけだ。

このまま何もなく、本当に見学ツアーだけで終わりそうだと思ったとき、ロイが消えた。

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