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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ②
289/316

289話 国際親善試合 三

かなり傲慢に聞こえるドリエスの挨拶により、更に居心地が悪い。

平民は音を立てただけで殺されるとでも考えていそうだ。

僕は騎士として一戦交えるつもりでも、観客を楽しませるつもりでもなく、確かに一種の外交なのかもしれない。

ただ、そう、今の僕の立場は非常に曖昧だ。

レックスや王国民から浴びるのは敵意だろう。

彼らから見れば、僕達は人間ではない。フィンレー・テレンス・ドレイトン以外は、事実その通りだが。

幸いにも、フォレストレイ侯爵家は誰もいない。

それに、メイや親しい友人達は味方だ。

相手を殺す必要もない。粛々と勝てばいいだけだ。

相手が誰かわからない為、対策も何もない。

魔王国の代表であるように堂々としているだけだ。

他の4人も動じていない。

僕の左隣からイネス、メルヴァイナ、セルウィン、フィンレー・テレンス・ドレイトンが並んでいる。

偶々そのような並びになっていただけだが、戦う順もこのままになりそうだ。

一番手だと言ったフィンレー・テレンス・ドレイトンが前に出る。

「誰が私の相手をするんだ?」

彼は悪役を演じるかのように威圧的な低い声を出す。

彼の言う通り、対戦相手がまだ出てこない。

それに、この場の進行や審判は誰がするのか。

漸く、僕達のいる場所の反対側から5人が歩いて出てくる。

彼らが対戦相手だ。

魔王国を相手にして、怯える素振りはない。

4人は僕達と同様、顔を見せていない。

ただ、僕の父や兄ではない事は確かだ。

短時間でよく5人集めたと思う。

中央付近が淡く光り、一人の男が現れた。会ったことのない男だ。

その男は審判役なのか、一応、この試合の経緯とルールの説明をする。

なんでもありなので、ルールはないようなものだ。

戦闘継続不能となれば負けとなる。

僕達が今立っている場所は全体的に平らで、特に試合の行われる範囲は指定されていない。

戦っている二人以外が巻き込まれる恐れもある。

審判役は1対1だと説明していたが、偶々、他の者に攻撃が当たってしまっても失格にはならないだろう。

騎士同士の手合わせではないのだ。そもそも、失格という概念がないかもしれない。

相手の一番手は顔を見せている。

その対戦相手の顔には見覚えがない。

対戦相手が名乗るが、その名を聞いても覚えがない。

フィンレー・テレンス・ドレイトンは黙ったまま、名乗りはしない。

試合が始まり、決着は直ぐについた。

フィンレー・テレンス・ドレイトンが相手の剣を弾き飛ばし、相手の喉元に自分の剣を突きつける。

相手はほんの少しの間放心した後、降参した。

ただ、審判役は判定しない。試合の継続を合図する。

フィンレー・テレンス・ドレイトンが即座に動き、相手の頭部を剣で打ちつける。

対戦相手が倒れる。

気絶しただけのようだ。

そこで漸く審判役はフィンレー・テレンス・ドレイトンの勝ちを告げた。

降参では戦闘継続不能とみなされないようだ。

倒れた対戦相手は審判役によって消されたように見えた。

おそらく、どこかに転移させたものと思う。

第二戦、セルウィンが前に出る。堂々と、足音を大きく響かせて。

だが、その後、向きを変え、僕に近づく。

「フィニアス、緊張しているのか。私は兄だ。しっかり、手本を見せてやろう。王国の者など、あっさりと倒してやろう。今の私は魔王国の代表だからな」

多少、小さめの声でセルウィンが僕に言う。

僕は王国民に聞こえていないか、気が気じゃない。

セルウィンの声はよく響くのだ。

少なくとも勝つつもりではあるらしい。

セルウィンの対戦相手も知らない男だった。

名乗りはしたが、家名は言わなかった。

エヴァーガン侯爵家の私兵なのかもしれない。

セルウィンは大剣を構えるが、闇魔法も使用した。

セルウィンの周りに6個ほどの小さな黒い何かが作られた。

形はどれも歪で、何かはわからないが、それでも、以前より闇魔法が上達している。

その何かを相手へ6方向からぶつけ、その間に大剣を相手に叩きつけた。

相手には何もさせず、本当にあっさり終わった。

相手は昏倒している。おそらく、昏倒しているだけだと思われる。

昏倒した相手はまた、審判役によって、どこかに転移させられた。

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