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魔王の裁定  作者: 有野 仁
最終章 ②
285/316

285話 王国の火種

僕は再び、王国に来ていた。

そして、なぜか僕がいるのは、王国の闘技場だ。

しかも、観客としてではない。

ここは娯楽用の闘技場であり、騎士学校の学生や騎士がこの闘技場で戦う事はない為、初めて来る。

周囲を客席が取り囲んでいる。

客席には、似つかわしくない貴族の姿が多い。

貴賓席にはレックスの姿がある。

貴賓席とは言っても、王族が座るにしては簡素だ。

国王と王妃はいない。

今では国王の体調不良は真実かはわからない。単に魔王を恐れているだけの可能性がある。

そして、客席の一角、もう一つ貴賓席が設けられているが、その周囲は異様な雰囲気がある。

そこにいるのは、魔王とその側近達だ。

禍々しさすら感じる魔王はメイではない。

メイはその近くにいた。

メイの傍にはライナス、リーナ、ティム、そして、グレンとミアがいる。

魔王の雰囲気にのまれる様に、闘技場には異様な静けさがあった。


王国は僕達が魔王国へ引き渡された後、正式に第7王子であるレックスを王太子にする算段だった。

それが覆される可能性が出てきた。

レックスが緑の瞳を持っていないことが問題視された。

勿論、それは想定内だった。

直系の跡継ぎはレックスしかいないからだ。

そこに現れたのが、緑の瞳を持つ王の隠し子を名乗る者だった。

当然、僕ではない。

魔王国にとっても想定外の事であるらしかった。

この話を僕にもたらしたのはライナスだった。グレンとイネスも同席していた。

本当に王の隠し子という可能性も捨て切れないが、僕は違うように感じた。

だからと言って、魔王国がそんなことをする意味もないように思う。

ライナスの口ぶりからは宰相が無関係だと思える。

ライナスが知らされていない可能性もある。

魔王国は一枚岩ではないのかもしれない。

現に宰相とその弟とは確執があった。

ルカ・メレディスは宰相の忠実な部下のように思えたが、その本質は結局、わからずじまいだ。

考えの読めない食えない男だと思う。

ただ、その実力は確かだった。

ルカ・メレディスは宰相の弟がセイフォードの神官長である事を知っていたのではないかと何となくではあるが思う。

だからこそ、宰相の弟の居場所が分かったのではないか?

ルカ・メレディスは宰相の弟と共犯だったのか? そして、仲間割れをした?

何はともあれ、その隠し子が現れたのは、僕達が引き渡された直後である。

僕がそれを知ったのも、当日の事だった。

既に魔王国にいる僕にはどうしようもない。


引き渡しの翌朝、僕はグレンの伯父フィンレー・テレンス・ドレイトンの元へ向かった。

剣術で僕は彼に勝てていない。

彼に勝てた所で、僕では絶対に勝てない相手が魔王国には多くいる。

彼もそれは承知の上だ。それでも、鍛錬を続けている。

既に来ていた彼に挨拶をすると、遅れて、メイが姿を見せた。

動きやすそうな服装のメイ。彼女も参加するようだ。

メイと目が合うと、メイが僕に微笑みかけてくれた。

魔王国での暮らしも悪くないと思える。

剣術の鍛錬の後のメイはミアと寄り添い合って、疲れ果てていたけれど。

メイとゆっくり話す時間はなく、ライナスと共に宰相に呼ばれた。

さすがに汗を流し、服を着替えていた。

隠し子の件で王国に介入するつもりなのだろうかと思ったがその話が宰相から出る事はなかった。

呼ばれた理由は、ライナスと共に宰相の元で仕事を覚えていく必要があるからだった。

結局、メイに会えたのは、朝だけだった。

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