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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑦
277/316

277話 あの場所へ 三

最初に飛び出したメルヴァイナとリビーにより、すでに二人の元聖騎士が倒されていた。

てっきりかなり苦戦すると思っていた。

逆にこっちが押しているように見える。

元聖騎士達は前に戦った時より明らかに弱くなっている。

それはアーノルドさんがいなくなったから、だろうか。

グレンが一人の元聖騎士の首を斬り落とす。

元聖騎士達の動きは精彩を欠いていた。

わたしから見ても、単純な動きだけだ。

もしかすると、わたしでも倒せるかもしれないと思うほど。

思うだけで、実際には無理だと思うけど。

抜いた短剣を持ったわたしの手は手持無沙汰だ。

メルヴァイナとリビーが二人ずつ、後は一人ずつ、元聖騎士を倒していた。

さすがに一撃とはいかなかったが、決着はあっさりついた。

「これで終わり?」

こんなにあっけない最後でいいんだろうか。

宰相の弟のアーノルドは嘘を吐いていた。

元聖騎士達を操っていたのは、彼だろう。

行方の分からなかったその元聖騎士達も見つかった。

これで解決なんだろうか。

「私達の勝利ですね! これで解決です! ボス、やりましたよ!」

リビーが亡くなったルカに報告するように言う。

「彼らの遺体は私達が後ほど、運びます! 魔王様、戻りましょう!」

やっぱり、決着をつけさせられたようにも思える。

元聖騎士達が気掛かりだったのは本当だ。放っておくことはできなかっただろう。

聖騎士達をあんな姿にしたのが宰相の弟なら、アリシアのことも宰相の弟の仕業なんだろう。

アリシアの遺体が運び込まれたのはセイフォードの大聖堂だった。

引っかかりはあった。

でも、神官長が魔王国の関係者だと聞いて、有耶無耶にして、王都で再会しても、わたしは行動しなかった。

宰相の弟の居場所はわからなかったけど、他に何か方法はあったんじゃないかと思ってしまう。

現に、宰相の弟はわたしには接触してきたから。

もやもやが消えたわけじゃない。

わたし達はリビーの転移魔法でフォレストレイ侯爵邸へと戻った。

「私はもう行きます」

リビーはすぐに転移魔法で姿を消した。

「本当にこれで終わり?」

「おわりでいいではありませんか、メイさま」

メルヴァイナはそう言うけど、アーロやアリシアの父親にはとてもじゃないけど言えない。

それに、セイフォードの神官長がいなくなったけど、どうするつもりなんだろう。

「まだ、気になる事がございますか」

「セイフォードの神官長はどうするんですか?」

「病死とするそうだ。置き換えは行わないと聞いた」

これにはライナスが答えた。

他には……

特に思いつかない……

「あなた達は何かある? ティム~、あなたも言いたいことがあるなら、今の内よ」

「何もない! 何の興味もない!」

ティムはメルヴァイナの言葉に不機嫌になり、そっぽを向いた。

今のティムはどこかわたしに似ている気がした。

結局、わたしは何もしていない。

また、ただ、流されていただけだ。

わたしがいる意味なんてないんだろう。

邪魔しかしてないのかもしれない。

魔王なんて、そんなものだと割り切ってしまえばいいのかもしれない。

わたしは賢くないし、仕方ないと思えばいいのかもしれない。

どこか惨めに思えてくる。

魔王国を利用するとか息巻いていたけど、手のひらの上で踊らされているだけのような気がしてくる。

わたしにどうしろと言うんだろう?

わたしに何かすごい能力があるわけないのに。

現実を思い知らされただけかもしれない。

わたしじゃあ、何もできないって。

「誰も特に言いたいことはないのね」

メルヴァイナにしては落ち着いた口調で言う。

「後は魔王国に帰るだけですね」

皆が黙ったままの中、メルヴァイナの呟くような小さな声だけがはっきりと聞こえた。

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