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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑦
275/316

275話 あの場所へ

早くに寝たので、ちゃんと朝は起きられた。

ここにも目覚まし時計がほしい。

今日もちょっと緊張している。

すでに調査済みとのことだけど。

あの場所へ行くのだ。

ルカと宰相の弟が亡くなった場所だ。

何となく忌避感がある。

わたしの部屋に迎えに来てくれたメルヴァイナとリーナと共に、集合場所の部屋に着くと、すでに全員が揃っていた。

「魔王様! お待ちしておりました!」

リビーが明るい声と笑顔で迎えてくれる。

無理してるとは思う。でも、わざわざ指摘することでもない。

「では! この10名で参りましょう!」

リビーが言い終わると同時に転移した。

転移先は暗くてよく見えない。

前に来た時はここまで暗くなかった気がする。

前はどこか作り出された空間のような気がした。

「ここはどこなんですか?」

わたしはリビーに聞いてみた。

「ここは山の中腹にある元修道院の廃墟のようです」

「暗すぎないですか」

まだ午前中だし、今日は晴れていた。急に夜になったような感じだ。

「今いる場所は地下なんです」

リビーは息を潜めているかのように小さな声だ。

確かにこんな所では何となく大きな声で話そうとは思わない。

リビーが放った魔法の光が辺りを照らす。

わたし達が誰も話さなければ、しんと静まり返っている。

汚れた石壁が返り血を浴びたかのようで不気味だ。

本当に同じ場所なのか、わたしにははっきりしない。

同じ場所と言われて、別の場所に連れていかれても気付かないだろう。

それほど、前来た時のこの場所の記憶はあいまいだ。

見た光景が衝撃的すぎたからかもしれない。

「こちらです」

リビーがわたし達を先導する。

地下にしては広い空間だ。

秘密結社の集会場みたいな雰囲気がある。

「ここが、そうです」

リビーが言う。

やっぱり、ここがあの時の場所だと言われても、本当かどうかわからない。

そこには当然、何もない。

すでに片付けられている。

見る限り、あの時の痕跡もなさそうだ。

「あの、魔王様。他の場所も見て来てよろしいでしょうか?」

リビーがおずおずと提案してくる。

「はい」

ルカが殺された場面を誰も見ていない。

経緯も何もわからない。想像だけだ。

リビーも納得いかないだろう。

「メイさま、わたし達も他の所も見て回りましょうか?」

何か手掛かりが残っているとは思えないけど、せっかく来たなら、そうした方がいい。

リビーとは別れ、わたし達は地下を見て回った。

幽霊でも出そうな不気味さだったけど、幽霊なんて出なかった。

物や家具すら何もない。

わたし達が出す音以外に何の音もしない。

やっぱり、何もなかった。

不気味なだけの単なる廃墟だ。

地下は広いことは広いけど、そうは言っても、すべて見て回るのにそこまで時間は掛からない。

隠し部屋とかがないとは言えないけど。

「上も見てみますか?」

メルヴァイナが声を掛けてくる。

「あ、はい。念のため」

たぶん、ここに着いてからそんなに時間は経っていない。

どうしても、暗くて夜のような気がしてしまう。

少人数なら、怖くて帰りたくなっているだろう。

リビーと合流してから、わたし達は上に向かった。

階段を上がった先も薄暗い。

窓がないからだろう。

壊れてないし、頑丈そうな建物だから、隠れ住むにはいいのかもしれない。

ただ、何かがあるとは思えない。

むだじゃないかとも思う。

通路を進んでいくと、外からの光が入ってくるのか明るくなってきた。

それまでにいくつか部屋があったが、部屋の中は空だった。しかも、部屋にも窓はない。

更に先へ進むと、大きなホールのような場所に出た。

地下は隠されているわけではないようだ。

そこには日の光が差し込んでくる。

やっと今がまだ昼だとわかる。

「ここは礼拝の為の場所でしょうか?」

今まで黙っていたコーディがリビーに尋ねている。

小さめの声でも結構響いて聞こえる。

ここにも像とかは何もない。

「そうだと思います」

「僕の知る修道院とは異なります」

「あの村と同じなんです。私達もここの事はこれまで知りませんでした。かつての魔王様と関係しているようです。詳しくはわからないのですが」

「魔王信仰ですか。そんな場所をどう見つけたのですか?」

「……わかりません。見つけたのはボスなので」

「僕もそこまではルカ・メレディスに聞いておりませんでした。もっと聞いておくべきでした」

「……仕方ありませんよ」

リビーはホールの中央まで歩いていく。

ここに怪しい場所は特に見つからない。地下が広すぎるのが怪しい気はするけど、何もなかった。

このホールにも何かあるようには思えない。

そもそも、一昨日来た場所が本当にここなのかもわからないぐらいだ。

だから、別の場所に案内されていてもわからない。

それがずっと頭にある。

「一昨日来た場所は本当にここなんですか?」

抑えるのを忘れたわたしの声がホールに響く。

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