273話 ミアの家族
4人揃った魔王四天王。
全然、そんな感じじゃないけど。
4人も揃ってどうしたのか、という方が気になる。
どちらかというと、彼らは調査とか面倒がりそうだ。
それに、調べるとか言ったけど、どうすればいいのか、はっきり言ってわからない。
だから、協力者は必要だ。
やっぱり、彼らがいた方が心強い。
わたしは期待も込めて、彼らを見る。
「今日は魔王国の有名なシェフに昼食を用意してもらっているのです。メイさま、それにあなた達も、ご一緒にどうですか」
メルヴァイナが声を弾ませる。
それは魅力的なお誘いだけど、今はそうじゃない気がする。
でも、ご一緒したい。
彼らとの関係が良好な方がいいはずだ。
わたしはちらっと、他の4人の様子を窺う。
「好きにしてくれ。それぐらいの時間はある」
そう言ったのはグレンだ。珍しい。
わたしの考えていることがわかったのか、メルヴァイナのためかはわからないけど。
「じゃあ、一緒に食べます」
「ええ、そうおっしゃると思っておりました」
「あの、リビーさんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。彼女はもう45歳なんですから。子供ではありません。今日から仕事もしていますよ」
リビーはメルヴァイナより年上だった。
わたしのお母さんより年上だ。
全くそうは見えない。
メルヴァイナもいつもの調子だ。
「それで、メイさま、本題はここからなのですが、昨日のあの場所へもう一度、行けることになりました」
「え?」
あそこへ行ける? そんな簡単に?
むしろ、いいの?と思ってしまう。
「今日は無理なのですが、明日の朝からでしたら構わないと許可が下りました。魔王国の調査後になりますので、何もないとは思いますが。どうなさいますか?」
「行きます」
わたしは即答した。
宰相に会った時に頼んでおくべきだったのだ。
いざとなったら、何を言えばいいのかすぐに出てこない。
そう、きっと、急に来る方が悪いのだ。
「わかりました。ああ、条件を言い忘れておりました。私達4人も一緒に行くことです。それと、リビーもです」
それくらいの条件は問題ないし、むしろ、来てもらった方がいい。
わたしは頷いた。
行くのは明日だし、昼食までは時間がまだある。
他にすることは?
王国にいられる時間はあまりない。
でも、することが思いつかない。
「ミアさんのご家族が見つかりました」
そんな時に、そう言って、やって来たのはどことなく見覚えのある男だった。
「アーリン・ベールでございます。魔王様。臨時ではございますが、王国での統括指揮を任されました。ルカ・メレディスには及びませんが、何なりとお申し付けくださいませ」
アーリンがわたしに跪く。
「捜してくれたんですか!?」
わたしが何も言えずにいると、ミアが驚いたように声を発した。
「ええ、宰相様が捜すようにおっしゃられましたので」
「ルカ・メレディスの指示ではなかったの?」
イネスが質問を投げかける。
「勿論、指示はされておりましたが、元々は宰相様のご命令なのです。ただ、最近は手が足りず、遅くなってしまいましたが」
最近、宰相が普通にいい人に思えてくる。
相談にも乗ってくれるし、お願いも聞いてくれる。
わたしが単純すぎるだけなんだろうか。
うん、騙されてはだめだ。
でも、ミアの家族が見つかったなら、よかった。
「本日午後にでもご案内致しましょうか?」
もちろん、案内は頼んだ。
昼食までにすることは思い浮かばない。
時間はあまりないはずだけど、実際にすることはない。何をすればいいかわからない。
ということで、コーディからダンスのレッスンを提案された。
パーティーに出席しないから絶対に必要ではなくなったし、魔王国でダンスはマイナーだそうだから、する気がなければ二度としないかもしれなかった。
コーディは魔王国でもパーティーを開こうと言っていたけど、わたしはそこまでダンスがうまいわけではない。
憧れに近かったのだと思うし、王城の豪華なパーティーに興味があっただけのように思う。
「はっきり言って、それ程上達していません」
「その為のレッスンです。僕が相手になります。僕と踊ってくれませんか」
「も、もちろんです」
そう言えば、コーディと踊るのは初めてだ。
前は結局、メルヴァイナと踊ったし。踊ったというのかわからないけど。振り回されていた。
絶対にコーディの足を踏まないようにしよう。
ドレスじゃなくて普段着だけど、侯爵家の豪華な部屋で、コーディと二人きりで踊る。
コーディがうまいのか、下手なわたしでも気持ちよく踊れる。
最後は、コーディに抱き締められ、回転する。
これ、メルヴァイナと同じ……
と、最後は、コーディに振り回された。
やっぱり、足踏んだの怒ってるんじゃあ……
と思わなくもない。




