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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑦
267/316

267話 宰相の弟

翌日、コーディはいなかった。

なんで?

コーディにダンスのレッスンを付き合ってもらおうと思ったのに。

わたし達って、婚約したんだったよね?

ドラゴン像のこととか、全然わからないし。

わたしだけ、仲間外れにされているようだ。

そもそも役に立たないから、仲間ですらないのかもしれないけど。

やっぱり、戦えないってつらい。

それに、このままだと、コーディに全部任せてしまうことになる。

それはだめだ。

きっと、わたしにも可能性があるはず。

メルヴァイナの願いも叶えないといけない。

わたしもあの宰相みたいに、見掛けは魔王に見えなくても、魔王だと思ってもらえるぐらい……


昼を過ぎた頃、わたし達の元に宰相がやって来た。

一緒にいたのは、メルヴァイナとイネスとミアだ。グレンは不在だそうだ。

「ルカ・メレディスから報告がありました。私の弟の居場所が特定できそうだとのことです」

え? もう?

わたし、本当に何もしてない。

まだまだ、時間が掛かると思っていた。

わたしが王都に来てから、何も進んでなかったから。色々なことはあったけど。

今になって、分かってきたのは、やっぱり、セイフォードの神官長が宰相の弟だとわかったからだろうか?

ただ、セイフォードの神官長はかなり目立っていた。見た目じゃなくて、かなり知られた存在だったはず。

ドラゴニュートの特徴を隠していても、気付かないものなんだろうか。

それに、神官長は魔王国の関係者だということをわたし達には隠していなかった。人間ではないことも。

魔王国や兄である宰相に敵意があるようにも思えなかった。

「あの、アーノルドさんがアリシアさんや聖騎士達にあんな事をしたと思いますか?」

かなり失礼な言い方をしていると自分でも思う。

いつも毅然としている宰相が困ったような表情を浮かべているから猶更かもしれない。

「現状では何とも言えません。どちらにしろ、証拠はございません」

ダレルという聖騎士が傍にいたことは宰相にも既に伝わっているだろう。どこまで伝わっているのかは不明だけど。

ただ、神官長はダレルを拾ったと言っていた。本当かどうかなんて、分かるわけない。

実際には他の元聖騎士達も近くにいたのかもしれない。

「ただ、これは推測に過ぎませんが、弟はこの王国をもう一つの魔王国とする事を目指しているのではないかと思うのです」

「もう一つの魔王国?」

「弟は今の魔王国に不満があるのでしょう。弟は100年前に亡くなった魔王様と親しくしておりました。魔王様が亡くなった後、姿を消したのです。そのような結果となり、私を恨んでいた可能性もあります。私の過ちであることは否定しません」

宰相は誓いでもするかのように、胸に手を当てている。

「魔王様の為の新しい国を、自ら興すつもりではないかと思うのです」

「その新しい国に、魔獣やあの元聖騎士みたいな人達が必要なんですか?」

「迅速に忠実な臣下や兵を作り出せます。勿論、これは推測でございます」

魔王の為……

宰相の言ったことはあり得ると思う。

確かにその通りだと思う。

でも、本気でそんな国を作りたいんだろうか?

そんな不気味な国を?

それに、王国の人達はどうなる?

亡くなった魔王がどんな人だったかはわからない。

でも、なんとなく、わたしに似ている気がする。

神官長が言っていた亡くなった魔王が元の世界に帰ったという話も本当なのか?

ますます、何が本当かわからなくなる。

「直接、本人に聞けばよろしいのです」

宰相の言う通りだ。

もう一度、わたしも神官長に会う。

「わたしも会いに行っていいんですか?」

「私が責任を持って、お連れ致しましょう。既に魔王様を巻き込んでしまいました。魔王様が望まれるのであれば、全力を持って叶えましょう」

宰相は真剣な眼差しをわたしに向けている。

「お願いします」

神官長というか、宰相の弟のアーノルドさんともう一度、話をする。

本当にそんな国を作ろうと思っているなら、止めないといけない。

死人が臣下や兵なんて……しかも、死体はどこから持ってくる?

アリシアや聖騎士のように……

そんなのはだめだ。

今ならまだ間に合う。

もちろん、宰相の言うことが正しければ、の話だけど。

「すぐに行くんですか?」

説得できるかわからないけど、魔王の頼みなら聞いてくれるかもしれない。

「いえ、ルカ・メレディスから連絡が来ることになっております。ただ、それほどお待たせすることはないでしょう。今の内に準備をなさって下さいませ」

宰相からそう言われ、とりあえず、トイレに行って、気持ちを落ち着けた。

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