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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑦
265/316

265話 婚約 二

コーディと会えたのは、外が暗くなってからだった。

今日はメルヴァイナによる体術の訓練とか、ダンスのレッスンでくたくただ。

ダンスはほんの少しはましになったと思う。もちろん、イネスと比べると全然だという自覚はある。

どうして、魔王なのに身体能力が向上しないのかと、つい、文句を言いたくなる。

コーディに疲れ切ったような顔は見せたくない。

コーディの顔を見ると、やっぱり、ニヤニヤしそうになる。

そんな顔ももちろん、見せる気はない。

「被害は出ませんでした。ただ、王太子は魔獣討伐で亡くなったことになりました」

コーディがそう告げる。

コーディに抱き締められるとか、そんなことはなかった。

いや、この場には、メルヴァイナもイネスもミアも、それに、グレンもいる。

そんなことをされても困ってしまう。

それに、王都の危機だったのだ。

魔王国が動かなければ、多くの人達が亡くなっていたかもしれない状況だった。

まあ、魔王国がなければ、そもそも、こんな事態は起きてないという話だけど。

「ロイが次期国王だと聞きました……」

「その通りです。押し付ける形になってしまい、弟には申し訳なく思います」

コーディはそう答えるが、本当にそう思っているかは、微妙だ。

「それは仕方ないと思います。わたしのせいでもありますし」

「その話はいいでしょう? レックス王子なら、立派な国王になりますよ。魔王国も全力で支えるはずです」

メルヴァイナが話に割って入ってくる。

「それよりも、まだ正式な婚約もされていませんでしょう? 実は、この後、宰相さまがこちらに来ます。婚約されるなら、早い方がいいとのことで」

「今日ですか?」

いきなり、今日と言われても、何の準備もしていない。何の準備があるかはわからないけど。

「はい、今日です。宰相さまが魔王国を出られるなんて、メイさまの為以外にはありません。それとも、やはり、相手があの子ではお嫌ですか?」

「そうではありません」

「それなら、いいではありませんか」

「そうなんですけど。そう、それに、コーディは? コーディは今日でもいいんですか?」

「僕はいつでも構いません」

わたしは何だか、変な気分だ。わたしがこ、こんやくとか……

さすがにトイレに行きたいということはない。けど、何とも言えない感じがする。

その時、部屋のドアがノックされる。

部屋に入ってきたのは、宰相ではなく、フォレストレイ侯爵だった。コーディのお父さんだ。

フォレストレイ侯爵には何も言っていなかった。

もしかすると、コーディから聞いていたのかもしれない。

わたしの顔は多少、強張っていると思う。

正直言って、ちょっと怖いし、苦手だ。きついことしか言われなさそうだ。

しかも、わたしはコーディを魔王国に連れて行こうとしているのだ。

それに、わたしは魔王だ。そのこともフォレストレイ侯爵は知っている。

フォレストレイ侯爵から見て、わたしのいい印象が全くない。

「魔王国へ引き渡す為、それまでの期間、私の息子共々、この屋敷で預かることとなった。これまでと変わらないが」

フォレストレイ侯爵は淡々と述べる。

やっぱり、怖い。わたしのことをどう思っているのか、全くわからない。

はっきり言って、何も話したくない。

でも、コーディのお父さんだし。

わたしの中での葛藤がすごい。

「わかりました。それと、僕はメイと婚約します」

コーディがわたしの前に立ち、フォレストレイ侯爵に言う。

「そうか。魔王国へ引き渡すまで、ここで大人しくしているといい」

たったそれだけ言うと、フォレストレイ侯爵は去って行こうとする。

「あの」

わたしは咄嗟に、去ろうとするフォレストレイ侯爵に声を掛ける。

特に言うことを考えていたわけではない。

でも、何か言わないといけない気がして。

フォレストレイ侯爵は立ち止まり、振り返る。

無視されることはなかった。

ちょっと、無視してくれてもよかったと思わなくはない。

「あ、あの……」

何を言えばいいのか、わからない。

なぜ、呼び止めたの、わたし。

でも、結婚するなら、ちゃんと挨拶をしないといけないと思う。

「あの、息子さんを下さい」

すでに言っておいてなんだけど、ちょっと違う気がした。

焦り過ぎて、何を言ってるのか、自分でもわからない。

考えなしと焦り過ぎは最悪だった。

「息子がいいと言うならば、好きにするといい」

フォレストレイ侯爵はそう言うと、今度こそ、去って行った。

怒られなくてよかった……

一応、挨拶?はしたと思う。微妙だけど。

入れ替わるように、部屋に来たのは、ルカと、そして、宰相だった。

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