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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑥
261/316

261話 迫る魔獣 四

勿論の事、王太子の命令に対して、誰一人命令違反はしない。

火魔法の不得意な者も含めて、火魔法を一斉に放つ。

僕も同様に、火魔法を放つ。とは言っても、僕の魔法は火魔法に偽装した闇魔法だ。

ルカ・メレディスもまた、魔法を放つ。

実際の所、騎士達の火魔法を合わせても、目の前の魔獣が相手では効果があるとは思えない。

とはいえ、油を掛けていたかのように炎が燃え広がる。

炎が前方にいた魔獣を包み込む。

炎の壁ができたかのようだった。

魔獣は苦痛の声や断末魔の叫びを上げることもない。

唯、体を焼かれながら進もうとして、力尽き倒れる。

暴れて突撃されるよりはいいが、それはそれで異様な光景だった。

統制というより、操られているという方が近いかもしれない。

1回目の攻撃で、全ての魔獣を倒せた訳ではない。

一撃で全滅だとさすがに不自然過ぎる。

それでも、魔獣の三分の一程は倒れたと思われる。

その結果に騎士達は多少なりとも自信を取り戻したようだ。

「もう一度だ」

王太子が声を上げる。

「放て」

王太子の声を合図に再度、火魔法が放たれる。

ただ、今回は先程より弱くなっている。

一射目で魔力を使い過ぎたせいだろう。

僕やルカ・メレディスも魔法を放つが、倒せた魔獣はずっと少ない。

騎士達の魔法の威力にルカ・メレディスも合わせたのだろう。

まだ、半分以上の魔獣が残る。

これ以上、魔法を放っても、威力は弱まるばかりだ。

ルカ・メレディスが強力な魔法を放っても不自然でしかない。

同じく不自然なら、一射目で全滅させるようにする方がよかったのかもしれない。

これから、どうするか?

騎士達も魔法の威力が落ちている事を感じてか、焦りが見える。

魔獣を全て倒す前に、騎士達の魔力は尽きる。

そうなれば、本当に剣だけで魔獣を相手にする事になる。

「第一騎士団の火属性の者と第三騎士団全ては引き続き、火炎魔法を。残りは風魔法だ」

王太子の指示が響く。

放てという掛け声で、魔法を放つ。

多少、威力は戻ったが、魔獣が近づいてくる方が速い。

間近に迫った魔獣。

王太子は一歩も動かず、堂々とした姿勢を崩さない。

その為、騎士達も一歩も動けない。騎士の中には顔を引き攣らせている者もいる。

このまま行けば、残った魔獣に突破されてしまう。

ルカ・メレディスも今以上に動こうとはしない。

涼しい顔で魔獣を眺めている。

どうしろと言うのか?

今のままの魔法ではもう手詰まりだ。

王太子とルカ・メレディスは通じているはずだ。

ルカ・メレディスもそのような事を言っていた。

国軍が来るまでの時間稼ぎもあるのかと思ったが、国軍は全く姿も見えない。

王都から近い駐屯地にいるはずなので、そこからここへ到着していてもおかしくない時間は経っている。

さすがに王都を見捨てるとは思えない。向こうでも何かがあったのかもしれない。

「不安に思うことはない。私に策がある」

王太子は馬に付けられている袋から何かを取り出し、それを掲げた。

それは見覚えのあるものだった。

黒いドラゴンを象った像。

アリシア嬢やシンリー村に関わっていた物だ。

どうして、それがこんな所で、王太子が持っているのか?

だが、あれは、闇魔法を注ぎ込んであるだけの物のはずだ。

その様な物を掲げたまま、王太子は声を張り上げる。

「これは強力な魔法が封じられている古の秘宝だ。ドラゴンが王都を護るだろう」

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