表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑥
260/316

260話 迫る魔獣 三

先頭に出た王太子が馬上で剣を抜く。

少し前まで、魔獣退治を行っていた僕でも多くの魔獣を前に緊張する。

騎士だけあって、誰も逃げ出さないし、泣き言は言わない。

「ここで私達が敗れれば、王都は蹂躙される。私達以外に誰があれらを止めると言うのか」

王太子が声を張り上げる。

できれば王太子に前に出てほしくはない。彼には次期国王になってもらわなくてはならない。

だが、騎士達を鼓舞する上では必要だと思う。

僕は王太子のすぐ後ろにいた。

僕の隣には、ルカ・メレディスがいる。

ルカ・メレディスがどう考えているのかはわからない。

この後、どのような行動を取るのか、僕には見当がつかない。

闇魔法を使えば、一度に多くの魔獣を撃破できる。

ルカ・メレディスであれば、もしかすると、一撃で魔獣を全滅させられるかもしれない。

ただ、そんな事をすれば、英雄になれる訳ではなく、恐れられるように思う。

ルカ・メレディスからはここに来ても、指示はない。

先日、王太子と共に魔獣退治を行っていた。

あの時の要領で、王太子を勝たせればいいのだろうか?

はっきり言うと、厳しい。

そうするには、魔獣の数が多すぎる。

一人で魔獣を全滅させるより、難易度が高い。

魔獣がより近づく。

今の所、魔獣が魔法を放ってくる兆しはない。

問題なのは、その大きさだ。

あれでは、防壁は僅かな時間稼ぎにしかならないだろう。

人間は蹴散らされる。

「心配することはない。君や騎士や兵士はこの私が誰一人死なせないよ」

唐突にルカ・メレディスが穏やかな口調で僕に声を掛けてくる。

僕はかなり焦っていたようだ。

刻々と近づく魔獣との距離。僕一人でどうにかしなければと言う考え。その為に。

落ち着いて、僕にできることをするしかない。

ルカ・メレディスもいるのだ。

「魔獣は今までより遥かに大きい。これまで通りの戦い方では倒せない。総員、横に広がり、私の合図で一斉に火炎魔法を魔獣に放て」

既に剣を抜いている王太子は騎士達に剣ではなく、魔法による攻撃を命じた。

騎士達がこれには動揺する。

通常、攻撃と言えば、剣での攻撃だ。

魔法はあくまで補助であり、騎士が魔法を使うと、むしろ、卑怯だと言われてしまう。

それに騎士であっても、魔法の威力が弱い者が多い。

まして、火の魔法に限って言うと、更に少なくなる。

通常であれば、魔法攻撃であの魔獣を倒せるとは思えない。

属性には適性がある為、以前の僕も火の魔法の威力は弱かった。

騎士達が動揺するのは当然だ。

第一騎士団、第三騎士団の団長二人が王太子の命令通りに、それぞれの騎士団を動かす。

魔獣は僕達の事が眼中にないかのように、同じ速度で進み続ける。

気になるのは、魔獣同士で統制が取れているように感じる事だ。

魔獣に連携されれば、脅威が更に増す。

「フィニアス殿下、することはわかっているでしょう。王太子殿下の命令はそれを見越したものなのですから。勿論、私一人でも問題ありませんから、見ているだけでも構いません」

ルカ・メレディスに言われなくてもわかる。

僕は無言で頷いた。

騎士達は命令に従い、魔法を放つ準備を整える。

魔獣が迫っている。

魔獣の方はやはり速度は変えず、魔法を放っても来ない。

騎士達が配備を終えたのを見計らい、

「放て」

王太子が号令をかける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ