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魔王の裁定  作者: 有野 仁
第5章 ⑤
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246話 王都観光 七

この国の騎士達は立派な人が多いらしい。

自分の命も顧みず、立ち向かっていこうとする。

騎士学校ではそう教育されているのかもしれない。一種の洗脳のような。結構、怖い所という考えが払拭できない。

そんなカールもようやく、参戦を諦めたらしい。

コーディはさすがに大きな魔獣相手に攻めあぐねている。小腸のようなものを斬り落としても、また、生えてくる。

ジェロームは、素早く動きながら、小さな魔獣達を引き付け、確実に一匹ずつ倒していた。

もっと、大規模な魔法を使ってもいいと思う。

顔も見せてないし、今なら、誤魔化せると思うのだ。多分。

身体強化の魔法は掛けているけど、疲れないわけではないだろう。

わたし自身にこの魔法は掛からないので、わからない。どの程度、強化されているのかも。掛けた本人がわからないなんて言う、かなりの欠陥がある。

それに、毎回、微妙に強化内容が異なっている気がする。

掛けられる側もわたしにそんなことを言われれば、不安になりそうだ。

魔法には失敗すると、自滅するような魔法もある。この身体強化もその類の危険な魔法だそうだし。

コーディとジェロームは大丈夫だろうか?

「私は冷静です。その上で、あの小さな方の魔獣ならば、私にも戦えます。あくまで、手伝うだけならばできます。ここは任せます」

カールは全然、諦めてなかった。

わたしが手を伸ばしても、もう、カールには届かず、カールは走って魔獣に向かって行ってしまった。

「おい! 言うことを聞け!」

エヴァンが怒気をはらんだ声で言う。

エヴァンはカールを追いかけようと踏み出すが、ぴたりと止まった。

「お見苦しい所をお見せし、申し訳ありません。私は貴女方と共におります。何かあれば、私が防ぎます。その間に逃げて下さい」

エヴァンはここに残ることを選んだ。わたし達を置いて行けなかったらしい。

実際には、わたし以外のミアとリーナは戦えるけど。更に言えば、多分、カールやエヴァンより強いと思う。

ただ、そんなことは言えないし、信じてくれないかもしれない。

もう遅いけど、ふと思い出した。

カールに身体強化の魔法を掛けていない。

掛けた方がいいのかもわからない。カールが身体強化にすぐに順応できるかわからないから。

もう、連れ戻せない。

せめて、死ななければ治癒魔法で治せる。

リーナは不安そうな表情で、わたしの腕を掴んでいる。

わたしを行かせないためかもしれない。

ちなみに、リーナの力はめちゃくちゃ強いので、振り払うのは不可能だ。

それに、わたしはあそこに行こうとは思っていない。

小さな魔獣は数を減らしている。

カールはそれを行っているジェロームに加勢する。

なんとかうまくやれそうで安心した。

大きい魔獣もコーディの方が攻勢だ。

この分だと勝てるだろう。

「応援が来た」

エヴァンが呟く。

馬の蹄の音が聞こえていた。

広場に姿を見せたのは、馬に乗り、武装した騎士達だった。

誰かが知らせてくれたんだろう。

ただ、コーディとジェロームの邪魔はしないでほしい。

その騎士達はわたし達の方に向かって来る。

「エヴァーガン団長!」

エヴァンが姿勢を正して直立する。

先頭にいたのは、団長らしい。しかも、エヴァーガンということはフィーナやロイの親族かもしれない。

彼らとは体格があまりに違うけど。

団長はボディービルダーのように、ムキムキだ。体がかなり大きく見える。

「エヴァン・レノルズ、状況を説明してほしい」

見た目はあんなだけど、団長の口調は穏やかだ。

「はい。カール・ブラウンと共に、彼女達をこの中央広場まで送り届ける為に参りました所、聖堂が崩れ、魔獣が現れました。彼女達の知り合いだという二人の内の一人が魔獣退治人らしく……その――」

エヴァンが口ごもる。

「それで、その魔獣退治人の彼らが戦っているという訳か」

「申し訳ございません」

「いや、君が間違っているということもない」

見た目は直情的な感じだけど、団長は落ち着いている。

その間にも、小さな魔獣はもう後3匹になっている。

カールが役に立っているのかはわからない。

大きな魔獣の小腸のようなものの本数が増え、その先端が光り出した。

間違いなく、魔法を放とうとしている。何だか、まずそうだ。

コーディが強引に突っ込んで、小腸のようなものを斬り落としていく。

それでも、全ては斬れず、まだ残っている。

残っているものから青い光線が放たれる。何魔法なのか不明だ。

その内の一つが崩れた聖堂に向かい、更に聖堂を破壊した。その周辺の建物にも被害が出ている。

長い時間、魔法を放てるわけではないらしく、青い光線は見えなくなった。

コーディは魔獣本体を斬り付けるが、効いているのかよくわからない。

何だか、弾力があるように見える。

コーディは魔獣の頭にあたる部分に、斬るのではなく、剣を突き刺す。

魔獣は頭を突き上げ、悲鳴のような鳴き声を上げた。

コーディは自身の体が持ち上がる前に剣から手を離した。

魔獣の体から血なのかよくわからないものが飛び散り、魔獣は崩れ落ちた。

コーディは闇魔法を使っていないように見えた。実際に使っていないかはわからないけど、何とか、普通の人間が倒したようには見える。

カールは無事のようだけど、思いっきり、あの大きな魔獣の体液か何かを浴びていた。

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